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第二七羽 ペットボトルロケット編

 タンチョウは春からの依頼によって働き続けた事で少しだけ疲れていた。


 教室の窓際の席から望む外の風景は彼が抱いていた感傷的な気持ちを増幅させるが目を逸らす気にもなっていなかった。


 イスの背もたれに身体を預けるとぎしりと音を立てる。それにまた心を擦られる。


 唯一の安息を覚えたのはこの1週間というもの依頼のひとつもなかった事だった。


 イスに座って外の景色をぼうっと眺めている内にタンチョウの休み時間は過ぎていった。


 週の半ば、木曜日の2時限目は情報技術だった。移動教室から帰って来たタンチョウの机の引き出しの中に1枚の封筒が入っていた。


 見慣れた封筒だ。たいてい茶封筒だが時折ちがった色が混じる事もある。それでも見慣れたとはっきり分かるのは松の葉と砂が寂しい封筒の装飾となっているからだった。


 今回は真っ白な封筒だった。無暗に教室内で封を開くのは不用心と言える。タンチョウは慣れた手つきで制服の内ポケットに滑り込ませた。


 窓枠に肘をついて依頼内容を確認した。2年1組竹田真緒と丁寧な字で書かれていた。



[鳥の巣箱の噂を聞いてお手紙を書きました。


 今週末、土曜日に文化系部のコンペが開かれます。毎年恒例となっている行事なのでみんな知っていると思いますが、ペットボトルロケットコンテストが開かれる予定です。


 任意の文化部が参加しますが今年はほとんどの部が参加申請を出しています。


 その中のゲーム部が不正を行うという噂を聞きました。真偽のほどは分かりませんがロケットの素材に細工をしているそうなんです。


 どうかこのロケットを処分してください。


 私は、2年1組 竹田真緒です。詳細など確認が必要な事があれば何なりとお尋ねください]



 読み終えたタンチョウはこれまでと変わらない方法で仲間と連絡を取った。


 応じたのはオオルリとキセキレイ、ヤマセミ、ライチョウとカッコウだった。



≪読んだか?≫


≪読んだよー。ペットボトルロケットコンテストなんてやってたんだね。面白そー≫


≪そうね、私は一度も見た事がないわ。きっと土日にやってるからでしょうね。みんなは見た事ある?≫


≪あたしはあるよ! 見た事ある。学校のグラウンドでやるんだ。なんかねー、まあ、いわゆる科学ってやつ?≫


≪主に物理学の分野だろう。俺もやった事がある。ボーイスカウトでな≫


≪なんかオオルリに似合うね。ボーイスカウトの帽子が想像できる。今度、写真見せてよ≫


≪写真なんて撮ってない。撮ってても残ってない≫


≪ウソだあ、オオルリってそういうイベントの写真は写真立てとかアルバムに入れて一言コメント書いてるタイプでしょ。

白状しな、カッコウには分かるんだよ?≫


≪しない≫


≪ふーん、まあ、いいんだけどね。大丈夫だよ、隅っこにいたり、可笑しな髪型だったりしてもカッコウは優しく見てあげるから≫


≪カッコウ、もう止めな≫


≪キセキレイ、久しぶりだね。最近、ゲームしてる? 今度、FPSしない?≫


≪いいよー、やろうやろう≫


≪ママゴトの約束は後にしろよ。早く本題に入ろうぜ≫


≪ママゴトじゃないよ。FPSってゲームのジャンルだよ? ヤマセミは知らないの?≫


≪見た事もないし触れた事もない。タンチョウ、本題に入れ≫


≪もー、どうしてうちの男子たちは嘘つきが多いんだろ?≫


≪隠すものだからねー。仕方がないよ≫


≪ウソなんて付いてない。黙れ≫


≪調査開始でいいのね?≫


≪ああ、各自で動こう。情報は共有するようにな。ヤマセミ、今度はミュートにするなよ≫


≪うるせえ。どいつもこいつも静かに出来ねえのか≫


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