第二六羽 友人への手紙編
タンチョウとライチョウは薄暗い廊下を2人で歩いていた。雨は止んで空は晴れ渡っていた。昇る月の明かりが差し込んでいて2人の道を照らし出している。
「あんな事が出来るなんて意外だな。特技か?」
「まあね、人の声真似ってけっこう好きなの。バリエーションのひとつよ」
「女優になれるな、ライチョウは」
「褒めてるの?」
「褒めてるさ」
タンチョウは笑って言った。ライチョウも笑っている。
「手紙はどうするの?」
「そうだな、住所は調べてある。この封筒に宛名を小池さんの名前にして彼女の自宅の郵便ポストに投函しておこうと思ってる」
「それなら私がしておくわ。彼女の自宅の住所は私の帰り道の途中にあるから」
「そうなのか?」
「ええ」
「なら、頼んでおこう」
タンチョウはライチョウに手紙を渡した。
「スリリングで楽しかったわ。またやりましょう」
「そう何度もする事じゃないさ。その手紙を投函するまでは依頼は終わらない」
「分かってるわ。じゃあね」
「ああ、またな」
ライチョウと別れたタンチョウはそのまま玄関へ向かった。
≪タンチョウと回収した手紙は小池さんの自宅ポストに投函したわ≫
≪お疲れ様、ありがとう≫
≪いいえ、こちらこそ。タンチョウ、私の特技については他言無用よ≫
≪分かった≫
≪特技ってなに?≫
≪他言無用らしい。回収の道中で披露してくれたんだ≫
≪気になる≫
≪また今度ね、いつか披露できるかもしれないから。楽しみにしておいて、コマドリ≫
≪大変だったね。これで小池さんが仲直りして登校できるようになればいいけれど≫
≪ミソサザイは何をしてたんだ?≫
≪え、僕も協力していたよ。1度目の潜入では職員室内の教員2人を外に連れ出したんだから≫
≪助かったよ。とにかく成功できてよかった≫
≪そうだね≫
≪ええ、あとは小池さん次第だわ≫
≪ああ、待つとしよう≫
≪またな≫
≪ええ、また≫
≪いずれ≫
≪じゃあね≫
後日、学校の廊下をタンチョウが歩いているとキセキレイが真っ向から歩いて来ていた。
すれ違う直前に彼女の方をチラリと見たタンチョウはそれだけでは彼女が怒っているのか判別しかねた。
それでも行き違ってしまえばどうという事もないように思えた。
「ねえ!」
「うん?」
呼び止められてタンチョウは立ち止まった。振り返りはしなかった。
つかつかと歩いてくる音が聞こえる。キセキレイがタンチョウの前に出るとグッと詰め寄った。
「成功してよかったね!」
「ああ、ありがとう」
「どうしてお礼なのさ?」
「分からんが言いたくなった」
「意味わかんない」
「用はなんだ?」
「依頼があったらまだ続けるの?」
「たぶんな」
「どうして?」
「理由は前にも言っただろう。変わらない。俺は引き継いだ仕事に従事する。その時だけタンチョウになる」
「苦しくないの?」
「ない」
「本当に?」
「ああ、みんないるからな」
タンチョウはキセキレイににこりと朗らかに笑って見せた。キセキレイはそれを見るともう何も言えなくなって一歩下がった。
何か言いたそうな表情だった。それでも口に出せない様子で彼女はタンチョウを見た。
「今度も協力してくれ。助けが必要だ」
キセキレイはタンチョウに背を向けた。
「また依頼があればね」
そしてキセキレイは去って行った。
タンチョウが移動教室でクラスメイトと廊下を歩いていると見覚えのある顔を見た。会話をした事はないがその人の悩みを知っていた。
なのにそれほど暗い顔をしていない。心になんの曇りもないような晴れ渡った表情を隠しもしていなかった。
タンチョウは思わず立ち止まってその人の顔を見ていた。
彼女の周りには数人の生徒がいた。仲は良さそうだ。
それだけで安心したタンチョウはその場から離れていった。
「なにニヤニヤしてるんだよ?」
「べつに、さっき満面の笑みで笑ってる女の子とすれ違ったからな。それが伝染ったんだろう」
これで友人への手紙編は終わりです。
また近日中に次の話をあげるのでぜひ、読んでください!




