第二四羽 友人への手紙編
屋上の扉を開けると風がサアっと吹き込んできてタンチョウの短い髪を靡かせる。
少しだけ水滴が付いた服を払うと軒下に座り込んだ。
空を見上げて考えていると扉がガチャリと音を立てて開いた。
キセキレイがタンチョウの隣に立っている。呆れたような、責めるような目を上から浴びせるとタンチョウは苦笑いをして応じた。
「マヌケ」
それだけ言うとキセキレイは扉を閉めて階下へ下りて行ってしまった。
タンチョウは笑うしかなかった。
空はまだ雨雲に覆われていた。風が強くなってきたのでタンチョウも屋上から出た。
風はますます強くなっていくように思えた。午後の授業中は雨風が窓を叩く音が聞こえていた。
放課後となった。
タンチョウは机の周りを片づけると部活へ向かった。
日が暮れて少し経った頃に部活動を終えたタンチョウが職員室へ続く廊下を歩いていた。頭の中では職員室の間取りを反芻していた。
失敗は許されない。天野の机の場所は分かっていた。
曲がり角の前でライチョウが壁にもたれて待っていた。
「来たね。準備は?」
「万全だ」
言葉通りだった。部活動の練習は身体を動かすにはもってこいの運動になった。
疲労感もほどほどでまだ十分に動く事は出来た。そして午前の失敗を引きずっていない。精神状態も問題はなかった。
「ライチョウはどうだ?」
「私も万全」
「そうか。なら、行こう」
職員室の中には3人の教員が残っていた。天野の机のある島には1人もいなかった。
タンチョウとライチョウは職員室の扉を開ける事は選ばなかった。放課後のこの時間帯に生徒が残っている事は珍しい。姿を見られる事があればそれだけで疑うには十分になる。
それだけにタンチョウとしては潜入は1人で行いたかった。あるいは1人で行うべきだったが、ライチョウの実力もいまいち信用できないでいる。
職員室の壁の下にある通気窓を開けて潜入する事にした。音が出ないように慎重にタンチョウが開けた。その間にライチョウが辺りを警戒している。
通るだけに十分なほどの隙間を開けるとタンチョウが警戒を続けるライチョウの足を叩いて合図を送った。
ライチョウがその合図の意図に気が付いて下を見る頃にはタンチョウは腰までを職員室に入れていた。
もう喋る事は出来ない。タンチョウが真ん中の島に潜むとライチョウもそれに続いた。
天野の机の真正面の位置に2人はいた。教員は2人を挟むように壁際にいたが潜入に気付いた様子でもない。
天野の机へ向かいだした。タンチョウは机の位置は分かっている。ライチョウがどうなのか知らなかったのでジェスチャーで尋ねると彼女も知っているようだった。
ライチョウがタンチョウの肩を叩いた。
どうやら彼女が3人の教員の様子を監視するのを買って出るようだった。
タンチョウは頷いて了承した。2人は背中合わせに進んだ。ライチョウが教員の様子を見てタンチョウに進める事を合図する。
そうして辿り着いた天野の机の胸元の引き出しを開いた。
ライチョウが中を確認する間、タンチョウが教員を監視していた。
静かだった。微かな音すら立てられない状況の中で2人は仕事を行っていた。
ライチョウが机の影に身を潜めた。
手には封筒を持っている。淡い薄緑の封筒を顔の前に持って彼女は勝ち誇るように微笑んでいた。




