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第二二羽 友人への手紙編

 職員室に入ったタンチョウは瞬時に状況を理解した。


 オオルリが別の出入り口付近で教員と話をしていた。生徒の姿はオオルリだけでミソサザイがいるようには見えなかった。それでも職員室の中の教員の数は少ない。


 たった2人の教員がそれぞれの仕事をしている状況だった。

 衝立の向こうの扉が開かれていて奥の別室の方から教頭の声が聞こえてくる。なにか会議をしているようで話し込んでいた。


 2人の教員はタンチョウが入室した事に気付いていないのか顔を上げようともしていない。


 職員室の机の並びは6つの島に分けられていた。

 タンチョウは入室してすぐにしゃがむと廊下側の1つ目の島に取りついた。机の影に身を潜めるとゆっくりと開けた扉を閉めていく。


 2人の教員はそれぞれ別々の島にいる。廊下側と窓側の島に1人ずついるがどちらもタンチョウの姿は見えていなかった。


 目的の吉岡の机は窓際の2つ目の島にあった。そこまで行くには机の影を使えば容易だったが引き出しの中身を確認するとなればそう簡単にはいかない。


 オオルリの声が聞こえてくる。タンチョウは音を殺して移動すると2人の目にもつかないまま吉岡の机の傍に張り付いた。


 そのタイミングで改めて周囲を確認した。

 すぐそばの机で天野が作業をしている。はす向かいの机では大沢がタンチョウから背を向けた状態で作業をしていた。視界がタンチョウの方に向いているのは天野だけだった。


 吉岡の机の上は綺麗に整頓されていて手紙らしき物は見当たらない。一番下の足元の引き出しを開けて中を確認したが手紙は見当たらない。使わなくなった小物とファイルが保管されているだけだった。


 タンチョウは次々に引き出しを開けて中身を確認したが手紙は見つからない。残るは一番上の引き出しと胸元の大きな引き出しだけだった。


隠れた状態で胸元にあたる引き出しを開けた。

中身を確認するには顔を引き出しよりも上に出さなければならない。そうすると恐らく天野に見つかってしまうだろう。


 天野は作業を続けていた。タンチョウは大胆になれず、天野の視点が動くのを待ったが埒が明かなかった。


 一番下の引き出しにあった使わなくなった小物を取り出すとタンチョウは残る2つの未確認の引き出しを開けた。


 もう一度だけ天野の様子を確認した。動く気配はない。机の脚を覗き見ると貧乏ゆすりをする一組の足が見えた。


 タンチョウは取り出したインクの切れたペンを投げて床を滑らせるとそれは天野の足に当たった。



「ん?」



 天野が声を出して顔を上げて辺りを見回した。タンチョウは隠れていて視界には映らない。


 足に当たった物を確認しようと屈む天野を見てタンチョウは顔を上げた。


 吉岡の机の引き出しで手紙は見つけられなかった。


 タンチョウは焦った。何かが間違っていたと思うと体を起こす天野を見てすぐに身を隠したが少しだけ遅れてしまった。



「んん?」



 探るように天野が見ている。タンチョウは息を殺した。心臓が鼓動を速めているがパニックには陥っていなかった。



「なんだ、空じゃないか」



 天野はインクの切れたペンをゴミ箱に捨てると机の端に置いていたカップを持ち上げてコーヒーを一息に飲み干すと流し台の方へと向かいだした。


 天野の動きを見てから背を向けたままの大沢を見て探しなおす事を考えた。


 顔を再び出そうとした時に扉が開く音が聞こえて来た。他の教員が戻って来たのだ。


 咄嗟に隠れたタンチョウは話し声で3人の教員が戻って来た事を知り、その中に吉岡もいる事を認めると探しなおす事は諦めた。



 撤退するしかない。



 成果は何もないように思えてタンチョウは机の傍に身を潜めた状態で歯噛みした。

 吉岡は自分の机にどんどんと近づいて来る。タンチョウは開けっ放しになっている引き出しを戻そうとしたが胸元の大きな引き出しは半ば開いた状態になってしまった。


 3人の教員が近づいて来ている。オオルリの方を見るとまだ話していて引き付けているのが分かった。天野も流し台でカップを洗い終えていて机に戻ろうとしていた。


 机の陰に隠れて窓際をササッと移動した。天野が着席する前に角に隠れると話を続けるオオルリと目が合った。


 タンチョウはそのまま端を伝って移動してオオルリの話し相手を見た。大野だった。化学の教員で2人が話している内容も化学の内容だと分かった。


 ジェスチャーで脱出をオオルリに伝えるとオオルリは上手く話を終えて大野と別れた。



「ありがとうございました」



 オオルリが職員室の扉を開けて出て行こうとしている。大野は「また分からない事があったら尋ねなさい」と言って振り返るとタンチョウが隠れている方へと向かいだした。



「大野先生、分からない事ってテストの範囲でもいいんですか?」



 オオルリが冗談めかして笑いながら尋ねた。



「お前、それを尋ねるのがマナーと思ってるんじゃないだろうな。教える訳ないじゃないか。頑張りなさい」

「ありがとうございます。失礼します」



 そしてまた大野が振り返って歩き出すと難なく角を曲がった。

 タンチョウはオオルリが気を引く間に別の場所に身を隠していたのだ。そしてオオルリと共に職員室を出た。


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