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第二一羽 友人への手紙編

 決断するとグッと力が湧いて来るタンチョウはキセキレイとの会話を思い出した。


 冷静さを欠いているようには見えないというキセキレイの言葉を信じられないでいる。どうにも逸っている気がしてならなかった。


 それでもやるしかない。タンチョウは前を見据えた。


 そして問題をまた改めて考える事に専念した。まず浮かんだ問題は自分の冷静さを信じられないでいる要因を考える事だった。


 教室へ戻る道中に自分が冷静さを欠いているかもしれないと顧みたその疑念をまず振り払って教室へ入った。



≪昼休みに職員室には潜入できない。人が多すぎる。次の休み時間に潜入する。それで吉岡の机を探ってみるつもりだ≫


≪了解。出来るだけサポートしよう≫


≪そうだね、私にも出来る事があれば言ってくれ≫


≪ありがとう、オオルリ、ミソサザイ。恐らく職員室内部の人をゼロにする事は不可能だ。

だが、出来るだけ人は減らしたい。気を引いていてくれれば助かる≫


≪分かった≫


≪やってみよう≫


≪頼んだぞ≫


≪私がやってもいいんだけど。くれぐれも気を付けてね≫


≪ああ、ありがとう。次の機会に活躍を頼むよ、ライチョウ≫


≪ええ、静観するわ≫



 そして3時限目を終えた。


 タンチョウはすぐに教室を出て職員室へ向かった。


 その途中、一階へ下りていく階段の踊り場でキセキレイがタンチョウを待っていた。



「行くの?」


「行くよ。やるつもりだ」



 タンチョウは強い意志を示すようにグッとキセキレイの目を見た。彼女も負けじとタンチョウの目を見つめ返している。



「どうしてこんな事をするの? べつにやらなくても良くない? タンチョウがやらなきゃダメなの?」



 キセキレイの問いに答えなかった。踊り場の周りに人はいない。二人だけだった。



「やらなくちゃいけない。俺がやらなくちゃいけないんだ」


「放っておけばいい。喧嘩した奴らが悪いよ。勝手に喧嘩して勝手に仲直りさせてればいいじゃん」



 タンチョウは強い眼差しを変えて悲しそうな目でキセキレイを見た。その変化にハッと気づかされたキセキレイは思わず顔を伏せた。



「ごめんね、べつに責めてるわけじゃないんだ。危険だと思っただけで」



「あの日、俺も友達と喧嘩して悩んでた。鳥の巣の噂を聞いてそれに縋った。

自分では何が悪いのかてんで分からないままでな。

どうしようもないという気持ちと僅かな希望を信じる気持ちでいたんだ。そして願いを叶えてもらった。それで仲直りが出来たんだよ」


「知ってる」


「なら分かるだろう。去年の卒業式の日に先輩に呼ばれた。

鳥の巣の真相を聞かされて後を任された。やってくれるかと問われて、やると答えたんだ。

今は俺はタンチョウだ。職務に従事する事だけを考えてる」



 タンチョウは階段を下りてキセキレイとすれ違った。


 階段を下り切った先で振り返って踊り場にいるキセキレイを見上げると泣きそうな瞳の煌めきが見えて柔らかく微笑んだ。



「キセキレイだってそうだったはずだ。やろう、協力してくれ」


「うん、分かった。ここで見てる」



 そしてタンチョウは職員室へ向かった。

 

 右手を挙げてサインを送る彼の背中をキセキレイは見守る事しか出来なかった。


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