第一八羽 友人への手紙編
依頼を読んだ鳥たちが次々と声を挙げていく。
≪なるほどな。この学校では手紙のやり取りは禁止されている。
だけど、それは授業中だけと思っていたがそうじゃないらしいな≫
≪そうだね、手紙自体がダメなんだろうね≫
≪手紙がダメだなんてラブレターも贈れない。そんな学園生活は嫌だな。
コマドリはラブレターをもらった事はあるのか? ちなみに俺は贈った事がある≫
≪ノーコメント。そのちなみにはいらないから≫
≪まずは情報収集から始めるんでしょう?≫
≪そうだ。各自で持ち寄る。ライチョウはたくさん恋の告白の手紙を受け取ってそうだな≫
≪ぜんぜんないよ。嬉しい告白はね≫
≪意味深な返答だ≫
≪本題に戻ろう。吉岡が没収した手紙の場所は没収者である吉岡の机に保管されているとみていいだろうか?≫
≪そうね、いいと思うな≫
≪でも、吉岡ならそのまま捨てている可能性もある。そうした手紙に込められた機微に疎い印象だからな≫
≪いや、大丈夫だろうと思うよ。没収であるなら保管されるはずだから≫
≪あとは調査して合わせていくしかないな≫
≪うん、そうだね。でも、どうして手紙なんだろうか?
今ならメールや電話でいくらでもやり取りが出来ると思うけれど≫
≪ミソサザイ、色々あるんだろう。
ブロックされたり、着拒されたりしてると届かないだろ。だから手紙なんだよ。届かない言葉を送り続けるのは苦しいだけじゃないか≫
≪そうか、ごめん。その通りだね、苦しいだけだ≫
そして調査が始まった。
タンチョウはまず1年4組へ向かった。
今、依頼主の小池さんがどうやって過ごしているのかが気になったのだ。
スマホで生徒一覧にアクセスすると小池さんの写真が出てきた。
顔は分かった。髪は短くて陸上部らしい小麦色に日焼けしている。写真ではニコッと可愛らしく笑っていた。
その小池さんが教室にはいなかった。探しても見つからない。
見つからないのでタンチョウはすぐに1年4組の教室をあとにした。
タンチョウは鳥の巣箱が置かれている裏庭へ向かっていた。外はまだ雨が降っている。こんな時に裏庭へ行こうとする生徒はタンチョウしかいない。
それは裏庭へ向かう足跡からも分かった。鳥の巣箱が置かれている木の下に入るとその周りには今、やって来たタンチョウの足跡の他に二組の足跡があった。
ひとつはタンチョウの足と同じくらいの大きさだが痕跡が違っている。きっとこの巣箱の中から封筒を取り出した何者かの足跡だろう。
そして残ったもう一組はタンチョウの足跡よりも小さい。スニーカーを思わせる横に波打つ足跡は木の周りをぐるりと回っている。この小さな足跡が小池さんの物に違いない。
タンチョウは次に下駄箱へ向かった。
1年4組の小池さんの棚を見つけたが、外靴は置かれていなかった。彼は泥に汚れている靴があると考えていたのだが、その予想が外れてしまったので再び頭を悩ませた。
下駄箱の前で考える彼の隣を数人の生徒がすれ違っていく。本来なら避けるべき人の目なのにタンチョウは避けようともしていなかった。
鐘が鳴った。1時限目が始まる。そこでようやくタンチョウは教室へ戻るために足を動かした。
教室へ戻る時にタンチョウは小池さんが学校に来ていないと考えた。
仲直りが出来ないというフレーズが何度も頭の中に木霊して彼の思考を散り散りにさせていく。
だが、そのフレーズが鍵となった。仲直り出来ていない気まずさに耐えられない彼女は早朝に学校へ来て鳥の巣へ封筒を投稿し、そして自宅へ帰って行ったのだろう。
彼女がした友人への過剰なほどの気遣いと、それに伴った臆病さを想像してタンチョウは胸が苦しくなった。




