第一七羽 友人への手紙編
その日は早朝から雨が降っていた。
梅雨の季節に相応しいジメジメとした空気が漂っている。夏を迎えようとしている暑気がにわかに感じられ始めていた。
タンチョウが濡れた制服やリュックから露を落として教室へ入ると自分の机の上にひとつの封筒が置かれている事に気が付いた。
教室内の生徒は疎らで誰もその封筒に気を留める者はいない。それでも幾分か不用心としか思えなかった。
リュックを下ろしてそれを手に取ると鳥の巣へ投稿されていたであろう痕跡が見られた。
封筒には松の細い葉が幾筋か付いていて砂も所々に付いている。タンチョウはそれを手で丁寧に払うと封筒のノリを剥がした。
≪集合だ≫
≪了解≫
≪また依頼?≫
≪ああ≫
≪最近、多いね≫
≪それだけ困っている人が多いんだろう≫
≪徹夜明けの私にはキツイなー≫
≪またゲームしてたんでしょ?≫
≪そうだよー。分かってるねえ、コマドリちゃん、キセキレイは嬉しいぞ!≫
≪今回は深刻だ。真面目に協力してくれ≫
≪わおー、タンチョウがマジモードだ≫
≪深刻とは?≫
≪ミソサザイ、珍しいな≫
≪深刻と言われればね≫
≪ありがとう≫
≪お礼を言うのはまだ早いでしょう。それにタンチョウが言わなくてもいい≫
≪ライチョウ、お前まで来るのか?≫
≪あら、迷惑なら帰るけど?≫
≪いや、済まない。一人でも多い方がいい。協力してくれ≫
≪それで、今回はどんな依頼なんだ?≫
そしてタンチョウはいつも通りに集まった5人のグループを作るとそこに手紙の内容を公開した。
[神さま、どうかお願いです。没収された私の手紙を取り返してください。
昨日の数学の時間、吉岡先生が始業から10分遅れてきました。
その間に友人への手紙を書いていたんですがちょうど吉岡先生が入って来た時に私の書いていた手紙が目に留まったみたいで没収されてしまいました。
あの手紙を友人に渡したいんです。でないと仲直りが出来ないから。
神さま、どうかお願いします。吉岡先生から手紙を取り返してください。
1年4組 小池真希]
この依頼を読んでからというものタンチョウは早く終わらせてしまいたい焦燥に駆られていた。どうにも気ばかりが逸っていて考えが上手くまとめられなかった。
努めて冷静になろうとしている表面ばかりの装いがいずれ不調をもたらすに違いない。
そんな予感をタンチョウ自身も感じながらあくまでも冷静になろうと逸る心を落ち着かせているのだった。




