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第一五羽 蔵書編

 ガラリと図書室の扉が開けられた。監査の2人が図書室をぐるりと見まわしている。


 タンチョウは彼らが入って来る直前にデスクの下に身を潜めた。



「誰もいない」


「いや、声は聞こえる」


「本当ですね。奥からです」



 2人はきょろきょろと辺りを窺いながら中へ入って来た。


 中原がタンチョウの潜んでいるデスクの方へとやって来た。ディスプレイの上部を掴むと画面が見えるように向きを変えた。



「どうやらデータの管理をしていたらしいな」


「2人ですね。女生徒同士のようです。親し気に話し込んでいますよ」


「早く帰るように注意しよう」



 中原はディスプレイの向きを戻さないまま奥へと向かいだした。


 タンチョウはひょっこりと顔を出すとディスプレイを見る事は出来ないが監査の2人を見る事は出来た。離れていくのでデスクの下に隠れながら作業を続ける事にする。


 それにはディスプレイを元の向きに戻さなければならない。タンチョウは慎重にディスプレイの側面を両手で持って画面が見える位置まで戻した。


 キシッとディスプレイが軋む音が出た。


中原が振り向いたが変わっている画面の角度には気付かずにアオゲラと友紀の方へと歩いていった。


 幸いな事にキーボードはデスクの下まで持って来る事が出来たので目だけを出してディスプレイを見た。


 15冊目を終えて最後の入力の確定キーを押そうとする前に4人が戻ってきた。



「すぐに作業を終えて帰りなさい」


「はい」


「ちょっと話し込んじゃった。ごめんね、友紀ちゃん」


「ううん、大丈夫だよ」



 一歩、二歩と近づいて来る。

 タンチョウは確定キーを静かに押してキーボードを元の場所に置いた。


 デスクを伝って彼らの目につかない場所まで行くとそこで身を潜めた。すぐに出て行けるのに彼は出て行こうとしなかった。


 確定キーを押す操作の他には時間がなくて出来なかった。ディスプレイには蔵書管理のソフトが開いたままになっている。


 これがどのように処理されるのか見届けるまでは図書室を出る訳にはいかなかった。そしてアオゲラも放っておく事は出来ない。


 それでも少しだけタンチョウは勝ち目のある賭けのように思っていた。大丈夫だろうと確信めいたものさえも持っていたのである。


 友紀がデスクの中に戻ってディスプレイを見た。



「パソコンを動かしたんですか?」


「ああ、電源がついたままになっていたからな。何をして残っているのか確認する必要がある」


「いいからすぐに電源を切って帰りなさい」


「分かりました」



 友紀と監査の2人が話している間、アオゲラはまるでタンチョウの姿を探しているかのようにきょろきょろと辺りを窺っていた。



「君もだぞ」


「ああ、ハイハイ。帰ります」


 結局、アオゲラは友紀が図書室の鍵を閉めるまで傍に残っていた。


 監査の2人は図書室を出て見回りに戻って行く。


 タンチョウはもうすでに図書室には残っていなかった。


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