第一二羽 蔵書編
どこを探しても図書室の鍵はない。タンチョウは焦りを隠せなかった。
長居は出来ない。無いという事は誰かが持っているという事だった。それを返していないのだろう。
図書室にまだ誰か人がいるかもしれない。そんな不安がよぎると計画の中止も考えた。
用のなくなった職員室に長く留まっては怪しまれる。
タンチョウは教員の誰とも話をしようとしていない。庶務が彼の様子を窺おうとするだろう。
タンチョウが振り返るとそこにはヤマセミとオオルリの姿があった。ヤマセミは手に段ボールを抱えている。庶務と話をして職員室を出て行く背中をタンチョウは見た。
オオルリはゴミ袋を2つ持って職員室を出て行くところだった。2人が接触したようには見えないがヤマセミが笑っているようにタンチョウには見えた。
上手く行ったのだろう。タンチョウもデータの書き換えを実行するしかない。
職員室を出てすぐに図書室へ向かった。道すがらスマホでアオゲラに連絡を取ると教室で待機していると言うので図書室へ急行するように言った。
図書室に着くと明かりがついていた。利用している生徒はいないが受付のデスクには昼休みにタンチョウが話をした女生徒がいる。
「あの子か。何をしているんだ」
タンチョウが図書室の壁に寄りかかっているとアオゲラがやって来た。
「やっほー、待った?」
「待ってない」
「鍵は手に入れたの?」
「いや、手に入れていない。中でまだ図書委員の子が作業している。アオゲラの知り合いの子か?」
アオゲラに図書室で作業を続けている彼女を見るように促した。
「うん、そうだね。友紀ちゃんだ。何してるんだろう? 残るなんて言ってなかったのにな」
その友紀ちゃんが席を立つまで待つべきか、それとも作業を終えて帰るのを待つべきか、タンチョウは悩んでいた。
作業を終えるまで待つのはすぐに否定した。帰るのなら図書室の鍵を閉めてそのまま職員室へ返しに行くはずだ。再び職員室に入るのは危険だった。
どうにか友紀ちゃんが席を立つ方法を考えなければならない。それも彼女が作業を終える前までに。
友人ならアオゲラに頼もうかと考えた。それが最善だろうと思っていたがそれをアオゲラに言う事は出来なかった。隣に立っている彼女はどこか上の空でブツブツと何か独り言を呟いているように見える。
「アオゲラ、眼鏡をかけてたんだな」
「いや、違うよ。これは秘密兵器。パソコンに強くなるためのね」
「それで強くなれるのか?」
「まあ、かけないよりはマシだよ。ねえ、ところで何か食べる物を持ってない?」
「お腹すいちゃった」とアオゲラは笑って言った。
「持ってないよ」
タンチョウも笑って答えた。すると「そっかあ」と言って落ち込むようにして下を向いた。ずり落ちる眼鏡状の物のブリッジを指で押して元の位置に戻す彼女を見てアオゲラにかけてみようという気がタンチョウに湧いてきた。
「アオゲラ、じゃあその秘密兵器でパワーアップした君に賭けよう」
「よし、任せてね」
タンチョウはこれからの行動をざっとアオゲラに説明した。




