第一〇二羽 校長室の木箱編
≪うん、僕は教員だよ。すごいね、キセキレイは。どうして分かったの?≫
≪話の内容かな。無理してる感じがあるからねー。教員の誰かも見当はついてるけどわたしからは言わないからさ≫
≪そうか、努力してるつもりだったけれど分かっちゃうものなんだね。なんだか恥ずかしいよ≫
≪衝撃なんだけど。教員の誰なの?≫
≪アオゲラちゃん、そこは聞かないであげて。たぶん時が来たら自分で言うと思うからさー≫
≪むう、分かった≫
≪ありがとう。キセキレイが言うようにタイミングが来たら僕が言うから≫
≪でも、タンチョウと一緒に仕事をするのならバレちゃうよね?≫
≪それは、仕方がないよ。タンチョウ、僕は構わない。いいかな?≫
≪俺も構いません。大丈夫です≫
≪え、タンチョウ、どうしたの?≫
≪教員とは思っていなかった。ため口ではいけないからな≫
≪いや、これまで通りで頼むよ。気にしないで≫
≪分かりました≫
≪いや、これまで通りって言ってるけど?≫
≪キセキレイ、静かに≫
≪馬鹿だねー、タンチョウは≫
≪笑ってるだろう?≫
≪笑ってないよーん≫
≪でも、ミソサザイが教員って事は校長室に入った事はあるんだよねえ?≫
≪あるよ。でも、木箱と言えるような物はなかったように思うんだ≫
≪そっかあ、じゃあ、本当に潜入して探すしかないようね≫
≪ミソサザイ、教員だった事が今回の実行組への参加の希望と関係はあるのか?≫
タンチョウが訊ねた。ミソサザイは長い間、返事をしなかった。
中断されてしまうと誰もそれからは会話を始めようとしなかった。タンチョウは返答次第でどうこうするつもりはない。
それだけでも言っておくべきだったかと今更になって後悔している。それが募ると今からでも言っておこうかとメッセージの入力をするにはしたが送信するまでには至らなかった。
授業が半ばを過ぎた。タンチョウはミソサザイが教員だった事に未だにひどく驚いていてずっとその事について考えていた。
授業中に頻繁に行われていたこの会議をミソサザイは注意しなかった。それはきっとこの鳥の巣のメンバーだからこそであり、他に意味はない。他に鳥の巣の存在を知っている教員はいるのだろうかという疑問がタンチョウの頭の中でぐるぐると回り続けた。
授業が終わろうとする間際にミソサザイが返事を送った。
≪うん、関係あると思ってる。でも、僕が教員になったからじゃない。その前の事だと思うんだ。タンチョウがあの依頼の書かれた古い紙を見て僕は腰が抜けるほど驚いた。
あの字は僕がこの学校に通っていた頃に仲良くなったある女の子の字だと思うんだ。だから、もしかしたら僕自身に関係があるのかもと思って希望したんだよ≫
タンチョウはしっかりと答えて来たミソサザイを疑うような事はしなくなった。
このメッセージを読んだだけで彼は特になんの理由もなく、あるいは自分でも理由が分からないままミソサザイを心の底から信じるようになった。
≪それならその女の子に連絡を取ってみたらいいんじゃないかなあ?≫
≪それが出来ないんだよ。その女の子は当時、学校を卒業してすぐに亡くなったんだ≫




