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第一〇一羽 校長室の木箱編

 調査は難航した。


 依頼主を調べても分からなかったし、木箱の在処も判断は付かなかった。



≪八方塞がりだな≫



 タンチョウは何も成果がない上がらないのを見ると呟いた。



≪そうだねー≫


≪困るね≫


≪木箱の情報も依頼主の情報も何もないのは初めてだな≫


≪もう、今日の放課後に潜入しちゃえば?≫


≪最終手段だな、それは≫


≪だねえ、調査は続けようよ≫



 雨は変わらずに朝からしとしとと降っている。もう少しで梅雨の季節を過ぎるだろう。窓は水滴に覆われていて垂れていく雫の軌跡が異様な形を作っていた。


 タンチョウは休み時間に再び教室を出た。廊下の窓際に立つと裏庭の地面をつぶさに観察した。ぬかるみの中にはどこにも足跡はない。


 どうやって投稿したのか、そしていかにそれを回収したのか、まるっきり分からなかった。それでも封筒に付着していた土や松の葉から鳥の巣の中に投函はされていたはずだった。


 『あの人』を知るには木箱を入手する必要があると彼は認めた。


 そしてタンチョウは校長室の潜入を前向きに検討するために偵察を始める事にした。


 校長室は職員室のはす向かいにあった。人が通れる場所は2か所しかない。窓か両開きの大きな扉からしか外と通じていなかった。壁の上下には換気用の窓が付いていたがタンチョウはこの窓が開いたいるところを見た事がない。


 そして最もタンチョウを悩ませたのは人通りが多い事だった。職員室から出て来る教員や生徒がたくさんいる。


 扉からの潜入を決めた。大きな扉の鍵はタンチョウのピッキングでどうにか出来るだろう。


 中に入ってしまえば人の目もいくらか遮断できるので気にする必要がなくなる。だが、中に入ってからが難しい。


 タンチョウは校長室の中に入った事がない。一度だけあるにはあるが間取りを覚えるほど長い時間ではなかった。それでも想像通りの大きな茶色い机と黒い革張りの椅子が備え付けられていた事だけは辛うじて思い出せた。


 依頼の木箱がどれほどの大きさなのかも分かっていない。


 タンチョウは頭の中で潜入する時の事を想像した。潜入だけなら1分もかからないだろう。必要な物が徐々に浮き彫りに分かって来るとタンチョウは少しだけ満足していた。だが、やはり何かどこかに見落としがあるように思っていた。


 すると大きく鐘が鳴りだすのだった。



≪放課後に潜入する≫


≪放課後に?≫


≪そうだ。人通りが多いからな。どうしても人の数が減る放課後にやるしかない≫


≪そうだね。でも、暗いよ?≫


≪それはわたしがどうにかするよー、ていうかさせる。オシドリにね!≫


≪へー、私もオシドリに会いたいな!≫


≪うーん、どうだろうね。オシドリに聞いてみるよ≫


≪うん、よろしくね!≫


≪でも、いくらアオゲラちゃんでもオシドリは会わないかもねー。人見知りするから≫


≪いいよ、聞くだけでも。美味しいお菓子を持ってくよ!≫


≪まあ、頼んだぞ≫


≪ねえ、僕も潜入班に加えてくれないかな?≫


≪急にどうした?≫


≪そうだよ、どうしたの?≫


≪お願いなんだ。大丈夫かな?≫


≪構わない≫


≪でも、本当に急にどうしたの?≫


≪協力できると思ったから≫


≪ミソサザイは教員なんでしょ? 校長室に入った事があるんだよね?≫



 キセキレイがミソサザイに尋ねた。タンチョウはそれを読むと驚いて危うく持っていたスマホを取り落としそうになった。


 反射的に持ち直したが膝が机の板に当たってがたりと大きな音を立ててしまった。



「こらー、居眠りしてたのか?」



 授業を行っている数学教員がタンチョウをからかう。すみませんと謝ると暗に居眠りを認めたようになって面白くなかったし、クラスメイトの注目も集めてしまったので気恥ずかしさもあった。


 タンチョウは同じクラスのコジュケイを見ると彼女もやはりタンチョウを見て笑っている。今のメッセージは新たなグループ内にいる者にしか見えていない。


 そしてタンチョウはそっとスマホの画面を見るとミソサザイから新たなメッセージが届いていた。


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