分岐その4《さやかが、青箱Aをお勧めしてくれたので》俺はわざと赤箱Bを開けた結果、Yが出た。
箱を開けると、『当たり』だった。カードには、『チョコレート』と書いてあった。
「やった〜〜!、チョコレートだ、絶対にさやかなら逆を教えると思ったんだ〜!ありがたくもらうね!」
「おめでとう、あまね」
と西浦先輩がにこにこと言う。
それなのに、
「うーん、面白くない結果が出た。
あまねは、素直だと思ったのに〜」
と、憮然とするさやか。
西浦先輩がにっこりして言った。
「あまねとさやかは、本当にあまのじゃくの、ナイスカップルだね〜」
さやかと俺は同時に叫んだ。
「どこが!」
「どこがですか?」
「あまねは最初から、さやかのチョコをゲットしようと思って、すごい考えたと思うんだ、勇気を出して深読みに賭けた思いが伝わってくるし。
さやかだって、本当は、あまねがわざと逆を選ぶかもしれないと思って、あえて『外れ』を教えてみたんじゃないかな?
ある意味、お互いに良くわかった上での、あまのじゃくなのかもしれないな?」
「え?」
俺は、ちょっと嬉しくなった。
俺とさやかがお互いにわかりあっている?そういう存在の幼なじみの美少女…?
脳内にばら色の光景が瞬時に広がる…。
いつもよりスーパーMaxの美少女に変身したさやかが、俺に優しく微笑みかけて甘く囁く。
『ごめんなさい、本当はね、私…私、チョコを素直にあげたかったの。
ちょっとだけあまのじゃくなあなたも好きよ。
だから、私にもちょっとあまのじゃくがうつっちゃったのかも。
照れ隠しで色々、余計なお手伝いをさせてごめんね。許してくれる?』
ゆ、許すよ。俺は絵のモデルでも、ベタ塗りでもなんでもやるよ。
胸キュン死しそうな俺を妄想から正気に返す、アルトボイスが響く。
「大野、チョコレートの報酬先渡しなんだから、きっちり働いてもらうからね!」
「…オーケー!任せて」
ん?チョコレートはプレゼントじゃなくて報酬?ホワイトデーのお返しはいらないの?
「あー、チョコもう一個買っておけば良かったなぁ、今から美人ナースの伊東さん達と打ち合わせするのに〜」
と騒ぐさやかに、先輩は優しく、
「僕の買ったヤツを一個あげるから、持って行きなよ」
と言った。
せっかく当てたチョコレートを即座にかばんの中に入れて、さやかに取り上げられないようにした俺とは、さすが西浦先輩は、器が違う。
……『エンディング』へ続く。