分岐その3 《さやかが、青箱Aをお勧めしてくれたので》俺はわざと赤箱Bを開けた結果、Xが出た。
箱を開けると、『外れ』だった。カードには、『校庭200周』と書いてあった。
「う、うわぁ。ひ、引っ掛けじゃなかったのか、くそ〜逆を教えているのかと思っていたのに」
「あははは、ザマーミロ!
天罰じゃあ〜〜。祟りじゃあ〜〜。
素直に正解を教えてあげたのに、これからは、私を素直に信じるが良いぞよ」
西浦先輩がにっこりして言った。
「あまねとさやかは、本当にお互いを思っているんだね〜」
さやかと俺は同時に叫んだ。
「どこが!」
「どこがですか?」
「さやかも今、あまねが深読みするんじゃないかと、一瞬考えて迷ったと思うんだよね。わざと逆を指差した方があまねのアシストになるかなと。
でも、結局は素直に振る舞うのが一番だと考えたんだと僕は思う」
「え?」
俺は、ちょっと嬉しくなった。
俺のために素直に振る舞う、いつもと違う幼なじみの美少女…?
脳内にばら色の光景が瞬時に広がる…。
いつもよりスーパーMaxの美少女に変身したさやかが、俺に優しく微笑みかけて甘く囁く。
『ごめんなさい、本当はね、私…私、チョコを素直にあげたかったの。
あなたはいつも一生懸命に考えるけど、私を信じてくれると思ってた。
いつもの私が素直に振る舞えていないからダメなのね、私を許してくれる?』
ゆ、許すよ。俺こそ、君の気持ちを素直に受け取れなくてごめん。君のためなら校庭を何百周もしてやるさ…。
胸キュン死しそうな俺を妄想から正気に返す、アルトボイスが響く。
「とりあえず、チョコはまた本番の日に渡すね、大野。
このチョコは、あとで美人ナースの伊東さん達と印刷所に行く相談するから持っていくわ。
デパートで買った高級チョコだもん。味の分かる人に食べてもらった方が、チョコも幸せよねー」
あ…そう。そうですよねー。
あれ、でも今、『外れ』を引いた俺にチョコを渡したいって言ったよな?
なーんだ、14日の本番の日にやっぱくれるつもりなんだ。
「大野、手が止まってない?
チョコレートの報酬を約束したからには、きっちり働いてもらうからね!」
何だよ、やっぱさやかって…ツンデレなのかもしれない。
俺は、とにかくさやかの修羅場を助けに来たヒーローなんだもんな。
「…オーケー!任せて」
西浦先輩も、背景とか色々書き足しながら、俺ををねぎらった。
「あまね、頑張ってね、『校庭200周』。
けっこう大変そうだけど、応援してるよ。良い筋肉がつくといいね♪」
……『エンディング』へ続く。