分岐その2《さやかが、青箱Aをお勧めしてくれたので》俺は素直に青箱Aを開けた結果、Yが出た。
箱を開けると、『当たり』だった。カードには、『チョコレート』と書いてあった。
「やった〜〜!、チョコレート、ありがたくもらうね!」
「おめでとう、あまね」
と西浦先輩がほっとしたような顔で言う。
それなのに、
「うーん、一番面白くない結果が出た。
ある意味、この分岐が一番書きにくいと思うけどなー」
と、憮然とするさやか。
西浦先輩がにっこりして言った。
「あまねとさやかは、本当に相性が良さそうだね〜」
さやかと俺は同時に叫んだ。
「どこが!」
「どこがですか?」
「あまねは最初からさやかのチョコをゲットしようと頑張ってるのが、すごい伝わってくるし。
さやかだって、なんだかんだと言いつつも、毎年ちゃんとチョコを上げて、本当はいつもあまねのことを頼りにしているんじゃないかな?
だから、今みたいに、さやかは普通に素直に『当たり』を教えてしまったし、あまねもシンプルにさやかの指差した通りに『当たり』を選んだんだから。
いつも一緒にいて自然なのかもしれないよ?
オタクの好きそうな小説にはなりにくいかもしれないけど、これはこれで最良の結果だと思うけどな」
「え?」
俺は、ちょっと嬉しくなった。
俺のことを本当はいつも、頼りにしている幼なじみの美少女…?
脳内にばら色の光景が瞬時に広がる…。
いつもよりスーパーMaxの美少女に変身したさやかが、俺に優しく微笑みかけて甘く囁く。
『ごめんなさい、本当はね、私…私、チョコを素直にあげたかったの。
あなたはいつも優しくて私と一緒にいてくれる。
だからね、私、本当にチョコを渡したかったんだ。
照れ隠しで色々、余計なお手伝いをさせてごめんね。許してくれる?』
ゆ、許すよ。俺は絵のモデルでも、ベタ塗りでもなんでもやるよ。
胸キュン死しそうな俺を妄想から正気に返す、アルトボイスが響く。
「大野、チョコレートの報酬先渡しなんだから、きっちり働いてもらうからね!」
「…オーケー!任せて」
ん?チョコレートはプレゼントじゃなくて報酬?ホワイトデーのお返しはいらないの?
「あー、チョコもう一個買っておけば良かったなぁ、今から美人ナースの伊東さん達と打ち合わせするのに〜」
と騒ぐさやかに、先輩は優しく、
「僕の買ったヤツを一個あげるから、持って行きなよ」
と言った。
せっかく当てたチョコレートを即座にかばんの中に入れて、さやかに取り上げられないようにした俺とは、さすが西浦先輩は、器が違う。
……『エンディング』へ続く。