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死‐Pad再び

「す、鈴木……」


「はぁい。ただいま、参りまーすぅ」


 いつもながらの語尾を伸ばす調子外れの声。そして、名刺の中から、ニュッと鈴木の顔が出てきた。


「わ、わわっ!」


 俺は名刺に顔を近づけ過ぎていたので、鈴木とキスしそうになった。ファーストキスが死神だなんて、絶対にイヤだ。しかし、この距離ではかわすことは不可能。


 俺が死神とキスしかかったその時、鈴木の身体は俺を突き抜けて行ってしまった。


「並木様、あまり近いと危のうございまーすぅ」


 死神に身体を通過されながら、注意される人間なんて、そうはいないだろう。


「わ、悪い。はじめてだったからさ……」


 つい言い訳をしてしまったが、考えてみれば、説明してなかった鈴木も悪いのではないか?俺ばかり謝るのは、納得がいかない。


「お気になさらずにぃ。皆さま、最初はそうでございまーすぅ。まぁ、私の説明不足でもありますしねぇ」


 そうだった、こいつは人の心が読めるんだった。気をつけないと、こっちの考えがダダ漏れになってしまう。

 とはいえ、何か対策があるかといえば、そうではない。意外と厄介な能力だ。


 鈴木は、俺の身体をゆっくりと通り過ぎたあと、俺の方に向き直って丁寧に頭を下げた。


「並木様、この度はお呼びいただき、ありがとうございまーすぅ。ご用件を伺わせていただきまーすぅ」

「この前のタブレットを見せてくれないか」

「死-Padでございますねぇ。かしこまりましたぁ」


 鈴木は、抱えていた黒いカバンの中から、大切そうにタブレット端末を取り出した。


「こちらでございますねぇ。どうぞぉ」


 鈴木から差し出されたタブレット端末を、俺は両手で受け取った。何だか卒業式の卒業証書を受け取るみたいになったので、ちょっと恥ずかしい。

 タブレット端末を受け取った俺は、例の言葉を発した。


「ヘイ、Sini!」


 2回目にして、すでに慣れはじめている自分がこわい。


 『死-Pad』は、今回も俺の声に反応して起動をはじめる。ディスプレイが明るくなり、前回と同じくメニュー画面が表示された。


 一番上には、前と同じように、『並木修一郎様用メニュー』と表示されていた。ここまでは、全く同じだが、その下には見慣れない項目が表示されていた。


 『この世のすべてを思い通りにする力』


 何だ、この厨二病が大喜びしそうなメニーは?こんな目立つ位置に、何で表示されているんだ?


 俺は心がざわざわと波立つのを感じた。

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