サプライズ
西野とは、LINEでやり取りをしながら、俺はWデートの計画を立てた。もちろん、西野にはWデートだとは言ってない。
まだ西野に彼氏がいるかは、確認できてないのだ。
「チアキ先輩、明日ですからね。今日は、早めに仕事を終わらせましょうね」
「わかってるよ、修。でも、何かドキドキすんな」
「まだ西野には、チアキ先輩の気持ちは伝えてないんですから。ドキドキしなくてもいいですよ」
明日は、俺もチアキ先輩も、バイトは休みにしてある。
土曜日だから、西野も会社は休みだ。みゆきもお店はお母さんに任せたみたいだった。
俺とチアキ先輩は、バイトを早めに終わらせて、少し休憩を取った。少しでも寝ておかないと、体がもたない。
一度、家に帰って、着替えてから待ち合わせ場所へと向かった。途中、みゆきと待ち合わせをしていた。
みゆきは、Gジャンに黄色のTシャツ。下は淡いピンクのふんわりとしたロングスカートを合わせていた。
「あ、修くん。疲れてないですか?」
会うなり、みゆきは俺の体を気遣ってくれた。優しくて、可愛くて、ホントに最高の女性だと思う。
「大丈夫だよ。一晩、寝ないくらい、全然、平気だよ」
「無理しないでくださいね。今日は、私がフォローしますからね」
みゆきが、小さくガッツポーズをして見せてくれた。
「でも、修くんの元カノさんと、仲良くなれますかね?」
強気から一転、急に不安げな顔を見せる。くるくるとよく変わる表情は、見ているだけでも楽しいものがある。
「あぁ、西野なら、大丈夫。きっと、仲良くなれるよ」
「ホントですか?私、同性の友達とか、あまり多くないから、仲良くなれたら嬉しいです」
「友達、多くないの?」
「エヘヘ。お店の手伝いばかりで、飲み会とかに顔を出さないので、どうしても……」
みゆきが少しツラそうな顔をした。
いつも、明るく元気なみゆきを見ていたから、きっと友達も多くて、いつも輪の中心にいて、幸せなんだろうと思い込んでいた。でも、考えてみれば、学校以外は、ほとんどお店にいる。同年代の子と比べると、圧倒的に遊びに行く時間は少ないだろう。
「何か、ごめん……」
「謝らないでください。いつも、修くんがお店に来てくれて、色々、話してくれるから、全然、寂しくないですよ」
みゆきは、健気に笑っている。こんなにいい子が幸せになれないなら、神様は不公平過ぎる。死神がいるんだから、神様だっていてもいいだろう。
普段、神様は信じない主義だけど、みゆきの幸せを心から神様に祈った。
待ち合わせ場所の水族館の前に着くと、もう西野は来ていた。
紺色のカジュアルなロングコートにタートルネックのシャツと黒いパンツといった大人っぽい格好。髪もバッサリと切って、ショートヘアにしている。
「おまたせ。何か、雰囲気が違うな」
「思い切って、ショートにしたの。似合う?」
「あぁ、似合うよ。そうそう、彼女がみゆき。みゆき、こっちが西野だよ」
俺は髪型への回答を曖昧にしたまま、みゆきを紹介した。
「はじめまして。高見沢みゆきです。よろしくお願いします」
「こんにちは。西野才加です。よろしくね」
みゆきは、まるで面接のように、堅苦しく挨拶をした。西野はそれを笑顔で受け止めて、右手を差し出した。
彼女と元カノが、俺の前で握手を交わす光景。それを何とも言えない気持ちで眺めていた。
俺たちが着いてから、5分ほどして、チアキ先輩がやって来た。
革ジャンにジーパン、黒いサングラスで決めていた。
「遅いですよ、チアキ先輩」
俺は笑いながら、遅れて来たチアキ先輩をいじってみた。何か面白い返しがくれば、西野の緊張もほぐれるだろうと思ったからだ。いつものバイトの感じに返してくれると信じていた。
「に、西野さん。俺と付き合ってくれ」
「エェッ?!」
チアキ先輩は、何を血迷ったのか、いきなり西野に告白した。昨日、あれだけ、段取りを説明したのに。
いきなりの展開に、みゆきも両手で口を押さえて固まっている。
チアキ先輩は確か、告白はサプライズって言ってたけど、俺たちを驚かせてどうするのだろう。
西野がどういうリアクションをするのか、俺は固唾を飲んで見守るしかなかった。




