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死神との雑談

 部屋に戻ると、8時を過ぎていた。会社に戻ってから、チアキ先輩と仲間の人たちが、コンビニでお酒を買ってきて、俺の歓迎会をしてくれたのだ。

 チューハイと簡単なおつまみしかなかったけど、とても温かい歓迎会だった。


 久しぶりに飲んだチューハイは、思った以上に俺を酔わせた。心地よい酔いに包まれた俺は、部屋に戻ると鈴木を呼び出した。


「ご無沙汰しておりまーすぅ、並木様ぁ」


 この間延びした感じ。随分、久しぶりな気がする。


「今日は、どのようなご用件でしょうかぁ?おや、並木様ぁ。酔っていらっしゃいますねぇ」

「悪い、別に用事はないんだけどさ。ダメかな?」

「いえいえ、お客様のお話をお聞きするのも、私どもの大切な仕事でございまーすぅ」


 鈴木は、嫌な顔1つせず、頭を下げている。


「最近、何かいいんだよね」

「何かと申しますとぉ?」

「死神だから、どうせわかってんだろ?」

「いえいえ、死神といえど、すべてのお客様のことを監視している訳ではございませーん。わからないことも沢山ございまーすぅ」


 死神といえど、万能ではないらしい。まぁ、その方がありがたい。


「俺の人生がうまくいってる気がするんだよ」

「人生でございますかぁ?」

「あぁ。可愛い女の子と仲良くなれたし、新しいバイト先だって良い人たちだし……」

「それは、良ございましたねぇ」


 鈴木は、例の胸の前で手首だけを動かす、クセが強めの拍手で祝ってくれた。


「このままだと、もう鈴木のシステムは必要ないなぁ」

「それは結構なことでございまーすぅ」


 意外とあっさりした答えに、俺は少しビックリした。


「でも、人生は良い時ばかりではございませーん。また必ず、私どもの力が必要になるはずでーすぅ」

「ないない」

「並木様は、まだ女性に告白はされていないのではありませんかぁ?」


 鋭いところを突かれて、一瞬、絶句した。


「バイト先は素晴らしいようですが、就職先の宛てはいかがでございますかぁ?」


 たたみ掛けるように、鈴木が突っ込んできた。俺の痛いところを確実に突いてくるのが、何ともいやらしい。


「おや、あわよくば彼女から告白してくれないかと思ってらっしゃるんですかぁ?」


 心を読まれた。俺は黙って鈴木を睨みつけていた。

 こいつは死神だ。雑談の相手にはふさわしくなかった。後悔しても、もう手遅れだ。


「気を悪くされたのなら、申し訳ございませーん。まぁ、名刺1枚をお手元に置いておくだけですから、邪魔にはなりませんでしょう。今後とも、よろしくお願いいたしまーすぅ」


 鈴木は邪気のない笑顔で俺を見つめながら言った。

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