銀行業務開始
大学の教官の仕事が始まるまで一週間ある。その間に「商売」を始めようと決意する。
魔物の討伐や、冒険者での収入ではたかが知れており、金持ちになることはできても、「大金持ち」になることは難しいだろう。「大金持ち」なるには商売を始めるしかないのだ。
何の商売を始めるか・・・それは前世の経歴を生かした「銀行」である。
こちらの世界では預金業務はするつもりはない、あくまでも「お金の貸付」のみだ。簡単に言えば貸金業に近いが、銀行ということにしておく。ちなみにこの世界は銀行というものは存在せず、個人間の金の貸し借りのみだ。商売としてやっているとこはない。そこにビジネスチャンスがあると考えている。
まずは融資する原資を調達しに道具屋に行くと、人当たりの良さそうな腹のオッサンが出てくる。俺を見て笑顔になり、声をかけてくる。
「おぉ、兄ちゃんいらっしゃい。この前の兄ちゃんから引き取らせてもらった商品はどれも貴族に高く売れ、儲けさせてもらったよ。また頼むぜ!」
「そうか。こちらとしても、それはよかった。正式に冒険者となり、今後も素材や武具防具を持ち込むから買取頼むよ。」
「冒険者になったのかい!兄ちゃんは強そうだからいい素材ゲットできそうだなぁ・・。もちろん兄ちゃんが持ってきた素材は何処よりも高く買い取るぜ!」
世間話もこれくらいにして、早速本題を話す。
「なぁ、オーナー。俺に300,000G(3億)貸してくれないか?担保は俺の愛刀「妖刀村雨」だ。この刀は3億もないかもしれないが、貸してくれたら今後3カ月以内に大量の素材を持ち込むことを約束しよう。勿論、素材の持ち込みは口約束であるため信じられないかもしれい。その判断はオーナーに任せる。」
オーナーはしばらく考えた後、口を開く。
「その話乗ったぜ!300,000G(3億)は俺の全財産だ、全額貸してやるよ。俺も道具屋で人を見続けているが、兄ちゃんは信用できると俺の長年の勘がいってる。一世一代の大勝負、俺を儲けさせてくれよ!」
交渉は成立し、3億円の資金調達に成功する。そして、この道具屋の一部を間借りし、銀行を明日OPENする流れとなった。道具屋の中にOPENさせたのは、ウチの銀行で金を借りて道具屋で物を買うという層を狙ったものである。そういう客がいるとウチと道具屋が儲かるWINWINの関係になる。
そしてこの日はホテルに帰り、ユリル、レッズ、メグに銀行業務について指導を行う。役割はユリルとレッズが融資審査で、レッズが取立だ。優しい美しい女性で借りさせ、強面のオークで取立てるという理想的な形態である。
金利は基本低めに設定しているが、「新規開業・創業」や「収入がない無職」等は高い金利を設定することにした。「新規開業・創業」の金利が高いのは前世の経験に基づいたものである。
話は逸れるが新しい事業を創業するというのは、倒産する確率が極めて高く、銀行側にとってまったく採算がとれない、そのため前世では「政府系金融機関」や「保証会社」の利用により「新規開業・創業」融資を国主導で行っていた。雇用を生み出し、国の活力を生み出すのは「新規開業」であるが日本は苦手である。逆にアメリカは得意な分野であり、アップル、facebook、twitter等の超大企業が創業で生まれ、国に莫大な経済効果を生み出してる。
そして基礎を教えた後、俺による指導は終わり、今日は解散する。明日は重要な日なので俺もメグとはやらずに明日に備える。
翌朝となり、ついに俺の銀行がOPENした。開店直後から次々の融資の申込客が現れ、俺、ユリル、メグの3人で融資審査を行っている。立地の良い道具屋の中にあるため集客には問題ないようだ。
そして一日が終わり、融資額等の確認を行う。今日貸したのは800G(8,000万)程度である。明日から利息含めて元金が入ってくるため、その元金・利息をまた貸すというサイクルとなる。優秀な融資審査や取立がいるので、このまま上手く回り続けるだろう。
☆
そして1週間経過して、サンマリノ大学の教官就任の日となった。いつもより早く起き大学に向けて出発する。銀行も順調でお金も増え続けており心配はない、もうすでに俺がいなくても銀行の業務は回るようになっており、すべて一任している状態ある。
しばらくして、サンマリノ大学に到着する。
早速、大学の学長室に行き学長と面会する。学長と言っても冒険者組合のスキンヘッドの支店長だ、顔見知りである。
「前も言ったように、1クラス20人の担任になり、学生の強さを鍛えてくれればいいだけだ。まぁ、担当するクラスに少し問題があってだなぁ・・・」っと長々と話始める。
要約すると以下の通りだ。
大学においても強さや冒険者等と同じようにランク付けされている。この世界のどこの大学も同じように「強さ」こそが正義であるという教育方針だ。
A、B、C、D、E、F、ランク外の7クラスが存在し、それぞれのクラスに20人学生がいる。
Aクラス 学内のトップ層(学生の強さは平均ランクD+)
Bクラス 学内の準トップ層(学生の強さは平均ランクD)
C クラス 学内の上位層(学生の強さは平均ランクE+)
Dクラス 学内の中位層(学生の強さは平均ランクE)
Eクラス 学内の下位層(学生の強さは平均ランクE-)
Fクラス 学内の最下位層(学生の強さは平均ランクF)
ランク外クラス 学内の最底辺(学生の強さは平均ランクG)
とランク付けされており、自分よりランクが上位のものには媚びへつらう必要がある。
ホントこの世界はランク付けが多いな、まぁ魔物もランクで進化するから仕方のない面もあるが・・・
そしてFクラスまでは学生として認められているが、「ランク外」の学生は「学生」として認められてない。廊下は端で歩かされ、食堂も使えず、教室も倉庫みたいなとこだ。常に上位ランクに馬鹿にされ「人権」が存在しない。こんなのが前世にあったら大ニュースだっただろうが、サンマリノでは一般的のようで当たり前のように受け入れられている。
またランク外の学生自身も何らかの問題を抱えてるケースが多く、担任は非常に苦労するとのことだ。
それに加え、1ヶ月後には大学伝統であるAクラスとランク外の決闘が行われることになっている。はっきりいってただの公開処刑なのだが、人気の行事でサンマリノの住人約5千人程度が観客に来る予定であると・・・
そして俺が引き受けるクラスは勿論、ランク外のクラスという。
「そういうのは、俺が教官引き受ける前にいってくれよ・・・・」
「ガハハハハ、大丈夫だ。なんとかなる!報酬も他の教官の倍以上あるんだから頑張れ!」と他人事のように言い放ちハゲの学長は去っていった。
まず1カ月後の決闘に向けてトレーニングか・・・と考えながら途方にくれる。




