別離、そして物語は新たに紡がれる。
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物語構成が下手ですがお読みいただければ幸いです。
それでは「別離、そして物語は新たに紡がれる。」お読みください。
私が東京に来てから色々時代が移り変わりました。白黒テレビからカラーテレビ、そしてオリンピック。イギリスから有名なグループも来ていましたね。一郎さんと出会って、そして結婚。
”これは一個人にとっては小さな一歩だが、私にとっては偉大な飛躍である。”なんちゃって。
また、子宝にも恵まれ夢のマイホームも建売ではなくて一郎さんが一から設計してもらい「仕方なくローンを払うより納得の上で払った方が、たとえ苦しくても耐えられるだろ?」と言って建てた家です。建設が終わり引っ越した時には子供たちは大喜びではしゃぎまくり、一郎さんも「どうだ?」と言いながら胸を張る姿に私は柄にもなく抱き付き「惚れなおしました。」と言ったものです。
子供たちも大きくなり、私の子供の時とは違ってテレビと言う情報媒体がありもっぱら学校から帰ってくるとテレビにかじりついて姉弟とチャンネル争いをしている。色々な情報が一気に入ってくるので子供たちもそれぞれ性格に特徴が出てきている。
長女鈴子は活発でミーハーで○デキとジュ○ーが好きでベル○らのくるくる髪にしたいらしく髪を伸ばし始めたおしゃまさん。最近、反抗的な態度を取るのが気になる。
次女蘭子は逆に素直でのほほんとしており時代劇が好きで、よく末っ子の孝志と一緒に大○越前と○戸黄門をよく観ているが、最近は頬を赤らめながら「杉様」と言っています。・・・お気に入りらしい。
長男幸一郎はヤンチャ坊主。刑事ドラマの太陽に○えろとGメ○75やアニメのガッ○ャマンが好き。5歳の時に服にケチャップを掛け「なんじゃこりゃああああ!」と叫び私にお尻ぺんぺんされている。最近は一郎さんに作ってもらったゴム鉄砲を片手に「ボスどうします?」と言ってくる。
末っ子孝志・・・我が家の問題児。蘭子と一緒に時代劇を観て大人しくしているので好きらしい。総一郎さんと大相撲を見ているのでこれも好きらしい。アニメはどうも全般的らしい。がこの子が何を考えているのか分からない。田舎に帰省する時に突然列車の窓を開けて身を乗り出し「メーテルー!」と叫んだり、家でご飯を食べていて、一郎さんが返ってくると「ヤツだ、ヤツが来たんだ・・・」といきなりつぶやく始末。それでも学校の成績はすこぶる良く、90点以下のテストを見たことがない。「なんで7桁掛け算が出来て2×3が出来ないのか不思議」と担任の先生から連絡が心配されている。
夫の一郎さんは40手前になり少し頭髪に白髪が、混じってきていますが子供が生まれて以来気弱気味の性格から一変して「俺に任せろ」みたいな頼もしい性格となりさらに惚れてしまう私がいるのでした。
また、体形は出会ったころから少しも変わらず、筋肉質で一郎さん曰く「客先で、荷物運び手伝っていたりするからじゃないか?」との事。社内では私たち夫婦の事を不本意ではありますが「クマのはく製と博多人形」と呼ばれています。
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今年も田舎へ帰省する時期が来ていつもの寝台列車に乗り客車内で家族と弁当をつまみつつ一郎さんが会話を始めた。
「もう何度目になるのかな。ふと母さん(頼子)と初めて乗った時を思い出したよ。」
「あの時は真冬の時期でしたね。お父さん(一郎)青森駅に着いたときは積もった雪を見てはしゃいでましたわね?ふふ。」
「んっんー。あの時は写真でしか見たことなかったからしょうがないだろ?でも来年だっけ?東北新幹線が開通するのは。来年はそっちに切り替えるか?」
「ええ。それでも大宮から盛岡までですよ?大宮まで在来線乗って乗り換え。それから盛岡でまた乗り換え。荷物とか持ちながらだと大変よ?しかも青森まで・・・なんて言ったら何十年かかる事やら。それだったらあと数年で青森までの東北自動車道が開通ですからそっちの方が無難ですよ?」
「車でか~。それも疲れそうだな。まぁどっちとも開通した時期は俺たちはもう年寄りだから子供たちに任せようか?」
「そうですね。ふふ。」
私達の会話に子供たちはみんな「?」を浮かべているのでした。
翌朝、青森到着いつものお決まりで弘樹くんが迎えに来ていた。
「おはようヒロ(弘樹)今年もよろしくね。」「義兄さんおはようございます」
「おはようヨル(頼子)イチ(一郎)疲れなかったか?スズランとユキタカも大丈夫か?また今年も恒例のどんちゃん騒ぎがあるぞー!」
「もう!弘樹オジサンったら私達の事、略してまとめないでよ!」
「はははは!もう少し大人になって魅力が出たら読んであげるよ。鈴子ちゃん」
弘樹は笑いながら娘をからかうのでした。
家族を車に乗せ実家に移動中、私は弘樹くんに去年から気になっていることを尋ねてみた。
「お婆ちゃんとお爺ちゃん具合はどお?」
弘樹は顔を顰めながら私の質問に、こう返答してきました。
「ばあちゃんはともかく、じいちゃんはまずいな・・・喋りが弱くなって歩行も補助しなきゃ歩けなくなってきた。そろそろ”お迎え”が来てもおかしくないと思う。もう90超えてるしな。」
「そう・・・・」
私達の仕事もプライベートも順調すぎていて、ここ最近何か漠然とした不安が押し寄せてきていたので「もしかして」と思い、去年の暮れに弘樹に連絡をして実家の状態や周辺に何か起きていないか確認を取っていたのです。
実家に到着して、私と一郎さんは長兄達と両親への挨拶もそこそこに祖父母の部屋へと向かいました。
祖父母は朝日が差し朝もやのかかる田畑の景色を見ながら縁側にいました。祖父は私が誕生日にプレゼントした安楽椅子に腰かけ、祖母はその傍らで正座をしながら私に向かいニッコリと笑みを浮かべるのでした。
「お~よく帰ってきたのう~今年もまた酒盛りばやるべしなぁ~」
「一郎さん、よぐ来た。わいはぁ!鈴子も蘭子も前の年よりまだめんこぐなって!ほら!畑からトマトとキュウリとってきたはんで、ばばっちゃど「さらだ」つぐるべし。」
「おじいちゃん、おばあちゃんただいま。元気そうで何よりよ。さあ、朝御飯に行きましょ」
取り敢えず、今のところは元気そうに見えます。私は祖父に手を貸し椅子から立たせると「ありがとさん」と祖父が言うのでにこりと笑みを返しながら居間へと一緒に行くのでした。
その日は実家の敷地を一郎さんや弘樹くんを交えながら見て回った、昨今の食糧事情が変化しつつあると言う事で鶏舎をケージ飼育から平飼いにし、鶏種を段階的に切り替えていくそうです。
また、我が家には平地の敷地に空きはなく廃農になる農家から敷地を借りて肉牛の生産を始めるそうです。なんでもこのあたりでも在来種で赤身が多い肉質でステーキにするとものすごくおいしいそうです。
「へえ~お父さんもヒロもいろいろやってるんだね~」
「そりゃあ前社長とイチが市場を調査分析してくれてアドバイスくれてるからな。うまくいっているからと高を括らずに2歩3歩先を読んでいかないと食っていけないからな。会社だってそうだろ?」
正にその通りですね。生産現場はこういうものなんだなあと心から感心するのでした。
家に戻ると息子2人は3代目「みーちゃん」と遊んでおり、娘2人は弘樹くんの娘と遊んでいるのを見てその日が終了するのでした。
翌日1年ぶりの御近所さんたちが集まり、恒例のお祭り騒ぎがやってきました。私は朝早くより畑山女衆と自治地区女衆の手伝いをし、夕方には男衆が集まり酒盛りが始まって夜も更けていくのでした。
そしてお祭り騒ぎも最後に近づきポラロイドと普通のカメラで今年の集合写真を撮り宴会は終了となりました。その時祖父母が、「うん、安心した」と言いながらホッとした顔をしていたのを見たのでした。
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翌朝、義男とツネは縁側のいつもの指定席に座って朝日が昇っていくのを見つめていた。
もうこの朝日は何百回、いや何千回と拝んできただろうか・・・
そう思いながら2人はじっと朝日を見ていた。
「広くなったなぁ」
と義男は呟いた。
「新村を拓くために開墾でここに来たときは木と沼しかなかったもんなぁ」
とツネが呟き返した。
「頑張ったなぁ」
「んだなぁ」
「もういいでしょう。」
「んだなぁ」
「村が出来て、いっぱい子供が出来たけどあんたが戦争に行ってシベリアから帰ってこなくて、その間私が子供の面倒見て、空襲で子供3人”持っていかれた”けどあんたが帰ってきてくれた。」
「ああ、ほら、あれ持ってきてくれ、ええと、ほら、あの・・・写真帳!」
「はいはい・・・ほれ、ええと・・・この子たちだ。」
2人はアルバムに写る家族を見ながら指さしていく。
そして昨夜撮影した写真も見ながら
「あんた、目つぶっちゃってるよ」
「ははは、準備してなくてびっくりして目つぶっちゃったな」
「・・・・・」
「・・・・・」
「待っててくれてるかなぁ」
「大丈夫でしょう。今まで会えなかった分甘えさせてあげましょう。」
「んだなぁ」
「それじゃあ、いきますか」
「ああ、あとはまかせるべぇ。」
「おやすみなさい」
「ああ、おやすみなさいだ」
そうして目をつぶって動かなくなったツネを抱き寄せてツネの手を握り見つめながら義男もゆっくりと目を閉じていったのでした。
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「おじいちゃん、おばあちゃん朝ごはんできたよ。」
私の前には柔らかな微笑みを浮かべながら目を瞑っている祖父母の姿がありました。
祖父は椅子に腰かけ膝の上にアルバムを広げたまま眠っているようでした。
その左横に祖母は正座したまま昨夜撮影した写真を膝に置き祖父によりかかるように眠っているようでした。
そして2人は手をつないだまま、昇りきっている朝日の方向へ向いているのでした。
「おじいちゃん?おばあちゃん?どうしたの?」
私は一瞬理解できていませんでした。
「おじいちゃん!おばあちゃん!」
2人に握り合うその手を触ると冷たくなっていました。
そうです。
2人とも亡くなっていたのです。
「お父さん!お母さん!兄さん!」
私は狼狽えながら両親と兄を呼んでいました。
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祖父母が亡くなってから一週間、この日祖父母の告別式が行われていた。
あの夜から一変して皆が悲しみに包まれ荼毘に付された。
「ご先祖さんか戦争で死んだ弟たちが「もういい」って呼んだんだろう」
と父は納骨された墓を拝みながらそう言った。
大正から昭和を生き、正に戦前、戦中、戦後を知る人物がこの世を去った。
願わくば、あの世で叔父達と幸せにいてくださいと心から思うのでした。
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3年の月日が流れました。
娘二人は16歳となり高校へ入学お互い違う高校へと通うことになった鈴子は都内の共学校へ、蘭子は女子高へと進んでいきました。
両校ともに進学率が高く6大学合格者を多数輩出していました。
娘2人はもともと学力はあり推薦を余裕で合格し一郎さんと私は安堵したものです。
長男の幸一郎は14歳で中学2年。この間の3者面談で第1志望が陸上自衛隊少年工科学校で第2志望が警察官、第3志望無しという具合でしたが、第1志望が何かわからず、私と一郎さんは顔を見合わせながら「?」となっていました。のちほど近所の奥様に旦那が自衛官の人がいて聞いてみた所簡単に言いますと「15歳で自衛官として働くための学校」であるとの事で倍率は結構高めとの事このまま維持していれば大丈夫らしいです。
次男の孝志は12歳の小学6年生。最近奇行著しくどうもテレビのアニメに影響を受けている様子。私はどうも影響を受けての奇行、しかも末っ子ときて、私の末の弟を連想してしまい、どうにも落ち着かなきなってきているのでした。一郎さんは「一過性のはしか」みたいなものだと思うけど一緒に様子を見ようと言う事になりました。
そうしたある日、鈴子の通う高校から「出席していない」と連絡があり「はあ?」となってしまいました。その日鈴子に理由を尋ねてみると「うるさい」の一言。そのまま部屋に閉じこもり翌日から行方不明に・・・
慌てて警察に駆け込もうかと思ったが「とにかく探してみよう」と私と一郎さんは会社を休ませてもらい鈴子の行方を捜した。
数時間後、都内の繁華街のあるゲームセンターにて鈴子と友達?を発見。仲間と思しき人たちから鈴子を離し自宅へ強制連行。いったいどうしてなのかわからずとにかく話をと鈴子に聞くのでした。
「鈴子?どうしたの?何か学校で面白くない事でもあったの?」
「・・・」
「お母さんに話してくれないかな?」
「・・・」
「話してくれなきゃわからないわよ?」
「・・・るせぇ」
「ん?なに?」
「うるせえっていってるんだよ!このババア!」
「っ!・・・」
「いつもいつもギャーギャーギャーギャー!黙ってろこのくそが!」
私は少しキレてしまいました。親の脛を齧っている状態での今の暴言は許せません。
「ほほう、何様のつもりで、どの口がそういう事を言うのかしらね?」
「ボウヤだからさ。」
いきなり変なことを言って会話に横入りをした孝志の頭をひっぱたきました。
どこでそんな言葉を覚えてくるのかしらこの子は!
そのまま孝志とのやり取りの隙をついて鈴子はまた家を出て行ったのでした。
一郎さんもその日徹夜で鈴子を探しましたが見つからず。心配する一郎さんはもう1日休もうとしたが私が責任をもって見つけ出すといって会社へ行ってもらった。
蘭子、幸一郎、孝志の3人を学校へ行かせ、もう1日会社を休ませてもらう連絡をし、探しに行こうとしたとき鈴子は帰ってきました。
しかし帰ってきた鈴子の姿を見て私は愕然としました。
紫のアフロヘア―?に裾をへそが出るまで切り取ったセーラー服、くるぶしまで長くなったスカート。
まるで宝塚を彷彿とさせる濃い頬紅、真っ赤な口紅、真っ青なアイシャドウ。まるでテレビから出てきた不良少女が私の前にいるのです。
―うちの子が積み木を崩しました。―
そのまま固まる私を鈴子は一睨みして自分の部屋に再び閉じこもるのでした。
夕方、私は茫然自失になりながらも子供達にご飯を食べさせながら途方に暮れていると一郎さんが帰ってきました。
「母さんどうだった鈴子はみつかったのか?」
「お父さん・・・鈴子が・・・鈴子が・・・積み木を・・・・」
「なに?何を言ってるんだ?お母さん落ち着いて話してくれ。」
「りんこがふりょうむすめになっちゃったのー。」
グスグスと鼻をすすりながら今までの経緯を話しそれを聞いた一郎さんは怖い顔をしながら立ち上がり鈴子の部屋に向かった。
「鈴子、お父さんだ開けなさい。」
返事は帰ってこない。
「鈴子、開けないとお父さんドアけ破っちゃうよ。」
いえいえ!一郎さんそんな実力行使は!
「3秒数える。1・2・さ・・」
ドアが「ガチャッ」っと開き鈴子が姿を現した。
「っ!!‥‥鈴子。」
一郎さんが変わり果てた鈴子の姿を見て一瞬固まってしまった。
そこから再び鈴子は隙を突き一郎さんの脇を抜け玄関まで全力疾走し、あっという間に家を出て行ってしまった。
「・・・あの、お父さん?」
一郎さんは肩を小刻みに震わせながらこめかみに血管を浮き上がらせながら回れ右をして書斎に向かった。書斎に入り勢いよく「バンッ」と扉を閉めて閉じこもってしまった。
私と子供たちはリビングに戻り「どうしよう?」などと話していて30分ほど経ったでしょうか。
2階の書斎の扉が開く音がして、階段をおりてくる一郎さんの足音が聞こえてくるのでした。
最後までお読みいただきありがとうございます。
いよいよ次回最終話となります。
字顔も読んでいただければ幸いです。
更新は本日21時を予定しております。
宜しくお願いいたします。