私に春が来て・・・そして何度も何度も季節は巡る③
申し訳ございません。2話連続予定でしたが2話目が間に合わず
1話のみ更新となります。
期待させるようなことを言ってしまい申し訳ございませんでした。
それでは「私に春が来て・・・③」お楽しみください。
季節は冬。12月も終盤に差し掛かろうと言う時、今年の正月も私は実家へ帰らないこととしました。
なぜなら年明けに結納が待っているからです。ひと月に2度も交通費をかけて田舎に帰るなんて不経済なことはしたくなく、どのみち帰るならば大きな行事がある時にまとめるのが一番と思い帰らないことにしました。
一郎さんの家族がいないため私の実家で畑山家一同で祝おうというのが目的。ちなみに仲人は我が社の社長がして下さる事となりました。しかも結納式でわざわざ社長が実家へ来るのは理由がありました。
11月に円満退職し田舎へと引っ越した妹夫婦が受持つ我が家の畜産部門の下見も兼ねているからです。
弘樹くんは、当社で今年度より立上がった「食品卸部門」へちゃっかり「鶏卵」「鶏肉」「豚肉」の精肉を卸す契約を取り交わしていたのです。
両者ともまだ始めたばかりと言う事もありお互いにメリットがあり、既出の食肉会社より協力関係を築きやすい為、「業務提携」を取り交わした。鶏舎、豚舎、地元の精肉加工施設の視察があると言う事もあり、今回の実家での結納式の仲人を引き受けと言う事です。
私は実家へ帰ってからのスケジュールの報告とと仲人になってくれた事への謝意を伝えるべく一郎さんと一社に社長と面会するのでした。
「よるこちゃんは”少女”の時から面倒見てきたし娘みたいなものだからね。」
「社長、ありがとうございます。」
「でもでも!結婚しても会社はやめちゃだめよ?」
「よろしいのですか?普通は結婚=退社が定石なんですが。」
「い~わよぅ!よるこちゃんがいなくなっちゃうと、お仕事がたちまちに
滞っちゃうわよ。そ・れ・に、ワタシのスケジュールをここまで効率よく
組む事が出来る子っていないわよ?」
「いえいえ、私は働く人へ”無理なく””無駄なく””余裕をもって”の社長の掲げる
社是を大事に思っていての行動ですから。今の私があるのは社長が一から教育
してくださった結果なのですから。」
「ん~もう。よるこちゃんが本当にワタシの娘だったらよかったのに~」
と、私と社長の会話を聞いていて突然女性口調になった社長を見ながら「え?え?」と目を白黒させながら見ていると、
「心配しなくていいわよ?社長はちょっと他人とは違う性癖を持っているので
びっくりしました?でもちゃんと公私は弁えていますし、ちゃんと奥さんと
お子さんもいらっしゃるので心配しなくて大丈夫ですよ。」
「ハハハ、驚いたかね?まぁ社長室内でよるこちゃんがいた時にしか”出て”
いないからね。でも、く・れ・ぐ・れ・も、よろしくな。」
そういわれて一郎さんは何度も頭を縦に振っている姿を見て、クスクスと笑ってしまうのでした。
無事社長への挨拶も終わり、結納へと向かう日々を送りながら年も明け去年から始めた男女独身寮合同の新年会と炊き出し(?)で居残り組と新年を祝ったのでした。
そして2月に入りついに交際報告から1年が経過しました。年が明けてからわずか30日程度の日数が1年にも10年にも長く感じ、一郎さんと私がソワソワと落ち着かず、ニヨニヨしている同僚たちと涙目になっている一部の男性陣を尻目に2人で4日間の有給を取得。いざ実家へ向かうのでした。
いつもの寝台列車に乗りで青森駅に到着。今回は弘樹くんが迎えに来てくれているはず。
雪深い地域は初めてなのか一郎さんはあちこちキョロキョロと見たり、高く積まれた雪を嬉しそうに見たあと手に取り雪玉を作ってみたりとまるで子どもの様にはしゃいでいました。
さすがに私は恥ずかしくてちょっと離れてみていました。
駅のロータリーへ行くと少し汚れたツナギを着用し足元は長靴、顔は無精ひげを生やし頭には○協の帽子。いかにも農家と云う姿に私たち2人は目を丸くし「あの洗練された青年はどこに?」という表情をしていると彼は笑いながら「変わったろ?」と言った後に「どうだびっくりしたろ?」と云う表情を浮かべているのでした。
「短い間に農家の服装が似合う様になっちゃって」
「先輩を見てびっくりしました」
「はははは!こっちじゃスーツなんて必要ないからな。もう箪笥の肥やしになって
いるよ。ああ、もう5~6年もすれば出番はあるかな?」
「「6年?」」
「ほら子供の入学式とかになったら使うだろ。」
「ああ、なるほど。でも流行りのデザインは変わっているんじゃないのかしら?」
「いや~大丈夫だろう!」
などと話をしながら実家へ向かいながら今までの養鶏等の話を聞いたり、先月生まれた赤ちゃんの話をしたり話題は尽きず、あっという間に実家についた気がした。
ちなみに社長は明日飛行機で空港に着くそうです。
玄関では母と祖母が待っており、家に入って早々に「おめでとう」と言ってくれた。2人で客間へと向かい荷物を置き、居間に行くと両親と祖父母が上座にそろって座って待っていた。
先程の柔らかい空気から一変してぴぃんと張りつめた空気が漂っていて、空気を読み取ったのか一郎さんは下座へ移動。
正座をして背を伸ばし言葉を紡ぎ出した。
「本日は私、三好一郎のためにこのような席を設けていただきましてありがとう
ございます。去年の1月に御両親に話をして交際の許可を戴きましたこの1年
約束通り頼子さんとともに愛を育んでまいりました。つきましては明日
執り行われます結納の式の御許可を戴きたいと思っております。頼子さんを
私の嫁として迎えさせていただきますようどうかよろしくお願い致します。」
一郎さんは土下座をして頭を下げたまま返答を待っていた。
父と母、そして祖父母はそのまま何も言わずジッと一郎さんを見ていた。両親と祖母はそのまま一郎さんを見ていたが、祖父は腕を組みそのまま目を閉じ何か考えているようでした。
そうして5分は経っただろうか?私はしびれを切らし「あの、おと・・・」と声を掛けようとしたが長兄の義次兄さんが私の左肩に手を置き頭を横に振るので、そのままこの状況を見守っていました。
そこからさらに5分ほど過ぎたころでしょうか?
祖父がゆっくりと目を開けて一言。
「んん!よがんべ。」
この一言を聞いた私はホッと安堵したとともにジワリと涙がにじんできました。
そしてそのあとに続いて祖母が話し出した。
「お~えがったなぁ。頼子、ちゃぁんと礼儀ってものばわぎまえて、ええおどご
だ!まんずまんず、わげぇころのおどみてぇだ。」
こうして私と一郎さんの婚約が確定したのでした。一郎さんは緊張から解放されて気が抜けたのかそのまま土下座状態から動けず、兄たちの手を借りて復活したのでした。
そして結納式を明日に控えたその夜、家族だけでささやかな酒宴を開き長兄達と一郎さんは明後日の養鶏場等の視察打ち合わせや、今後の出荷の話をしており、
私はというと祖母と母に仏壇前へと連れていかれ、祖母と母が横に並び正面に私が座す構図になると
母が仏壇の引き出しから細長い包みにくるまれた何かを私に差しだして祖母がこう言ったのです。
「ほれ、もってけ。」
「なにこれ?」
「懐刀じゃ。中身の刃は戦争で持っていかれたないがの。畑山家は昔は津軽の殿様に
仕えてた侍だ。娘が嫁入りに持っていっていた物が色々あったんじゃが古くなって
ボロボロになってもう残ってるのはそれだけだ。次の子供の嫁入りに使え。」
ずいぶん昔、本家から嫁に出る人間には何か持たせると言う事らしのですがもはやその文化も廃れていってしまい、それを受け継ぐのはこの地域では母と祖母の2人だけらしいそうです。そして次の世代へ受け継がせるべく役目が私に来たのだと理解して、ありがたく懐刀を承るのでした。
そうして母たちと居間へと戻り、妹や次兄の嫁、ようやく結婚した長兄の嫁と東京の話や子供たちの話をしていると父から質問してきました。
「頼子。結婚式はいつにするんだ?」「ん?しないわよ?入籍だけ。」
「しないって・・・んじゃぁ新婚旅行は」「行かないし、新婚休暇はここに来る」
「いや、嫁に行く人間がどうして」「一郎さんも畑山の姓を名乗りたいって」
「・・・なのふとりでしゃべったって」「もう相談済み」
「・・・・・・・・」「・・・(タクアンをポリポリ)」
「結婚したらこっちゃ帰ってくんのが?」
「ん~ん。そのまま東京住むわよ。だから、分家?っていう形」
初めは困惑した表情ではあったが、話していくうちに段々とあきらめた様子になり
「はあ~・・・分かった。それじゃあ新婚休暇ってのか?そん時に戻ってきたら
披露宴みたいな事くらいやってやっから!一郎君に失礼だろ。」
「だって、2人で相談して贅沢は敵だって・・・・・・」
「一郎くん、すまないな。娘の事嫌いにならんでくれ。」
と父が一郎さんに謝っていると。ポリポリ掻きながら、顔を赤くして一郎さんがこう述べたのです。
「いえ、頼子さんが僕の事「はんかくせぇ」って言ってくれたから大丈夫です」
「「「「「はんかくせぇ?」」」」」
家族一同がその言葉を聞いた途端、渋い顔をして私を見ているが、私は「まずい!」と思いつつ明後日の方向を見て知らんぷりをしていると、長兄が一郎さんにこう尋ねました。
「一郎さん「はんかくせぇ」って意味知ってるんかい?」
「はい。「好きです」って意味だと、頼子さんが教えてくれました。」
長兄は右手を額に当て上を向き「あちゃ~」と言うジェスチャーをしていました。その後ろから弘樹君がクスクスと笑いながら一郎さんに答えを教えていました。
「あのな三好「はんかくせぇ」って本当意味は「恥ずかしい」って
意味なんだ。頼ちゃんに騙されたな?あはははははははっ!」
一郎さんは「え?この人たちは何を言ってるの?」という顔をしていたのですが、ようやく自分があの時ごまかされて、自分がそれを鵜呑みにしていたことに気付いたらしく、悔しそう顔をしつつ目に涙をためながら私を見ていました。
私は顔の前で合掌しながら「ごめんなさい」と何度も謝るのでした。
最後までお読みいただきありがとうございます。
次回からどんどん時間が進みます。
あきらめず読んでいただければ幸いです。
次回更新は明日の12時予定ですよろしくお願いします。




