私に春が来て・・・そして何度も何度も季節は巡る①
アクセスしていただきました方々誠に有難うございます。
再び拙い文章ではございますが、どうか楽しんでください。
三好くんの突然の告白に私はどうしていいか解らず、ただ茫然としていました。それからどの位時間が過ぎたのでしょうか。固まって動かなくなった私を見て三好くんは心配そうに「先輩?」言葉を掛けると私はハッと覚醒したが返事は数オクターブ高い「はっはいぃ!」と裏返った声で返事をしてしまいました。
「先輩にとっては未だ社会人になって数年の卵の殻も取れ切っていないヒヨッ子で
すが、あの結婚式の2次会で武田先輩から紹介されて「あー、総務の女帝って
言うんだからものすごく怖い人なんだろうなぁ」って思いながら初めて先輩を見
た時にものすごく心臓がドキドキして喉が乾いて手が震えて
足がガクガク震えてどうしようもなくなったんです。」
「は・・・い・・・。でも、言葉だけ聞くとそれって私を見た途端ものすごく
怖かったっていうように聞こえるんだけど・・・」
「ああ!いや!違うんです!大学の講義の時でも女子と普通に話はできますし女子
の同級生とも一緒に酒を飲んだりできるし、こんなこと初めてでなんていうか、
怖いではなく、「なんてこんなに魅力的な女性がいるんだろう」って以前にも
言ったと思いますけど自分の理想の女性が目の前にいて緊張してなんて声掛けた
らいいんだろう?どうすればこの女性に気に入られるようにすればいいん
だろうってあの時はそのことで頭がいっぱいだったんです。」
「じょてっ、いって・・・そ、そうだったのね。」
「あぁ、話がずれていくな・・・でも!一目惚れだったんです。」
「わ、解ったわ。ちょっと即答はできないわ。時間をちょうだい?ね?」
「はい。いつまでも僕は待ってます。」
そうして私は彼をそのままにして寮へと小走りに戻ったのでした。
寮で食事を食べ、お風呂に入り自室へ戻りベットにうつぶせになりながら先程の彼からの告白を思い返し枕を抱えながらベットの上で右へ左へコロコロしながら
―私の事が好き?こんな化粧も最低限しかしないし、流行の洋食よりアンパンと牛乳が大好きで、着飾って外へ颯爽と出かけるより家の中でドテラ着てごろごろするのが大好きな私を?―
ふとテレビを見ていると化粧品のCMが流れており目鼻立ちがはっきりして体系も何というか瓢箪?の様に出るとこは出て引っ込むところは引っ込んでいて「あぁ、これが女性て感じよね。妹もそうだし」と思いながら風呂場で見た自身の体を思い出すと、何と言えばいいんだろう。まさに冬瓜というのが正解だろう。太ってはいない。ぽっちゃりもしていない。だがしかし出るところは微、引っ込むところも微。私のどこに魅力が?最近の大学生とすれ違ったこともあるが、どう考えても私より魅力があるでしょ?
とは思いつつもこんな私を「好き」だと言ってくれる。はっきり言って恥ずかしくもあるが、うれしい気持ちの方が前者を上回っている。
三好くん本人は体もがっちりしていてゴリラ顔と思っていたが、よく見ると意外と丁寧なつくりではあったし。武田カップルと一緒に・・・だったけど何度かデートしてても嫌じゃなかったしね。
「んぅ~~。下向きなことばっかり考えていないで、とにかくお付き合いから
始めてみよっか。女帝ってのも何か聞か・な・・いと・・・・」
私は、独り言を言い決意した所で軽く睡魔が襲ってきたので、明日に向けて眠りにつくのでした。
そして翌日、会社にて仕事の合間を見て三好くんを探してみるがなかなか見つからず。その日は結局返事を返す事が出来ないまま1日を終え翌日、やはり見つからず。そのまた翌日またまた見つからず。その日はちょうど営業部へ書類の届け物がありついでで探してみるが、ちらりと三好くんの机を見てみると飲みかけのお茶がありつい先ほどまでいた形跡。
「あの・・・三好に何か用でも?」
「ああ!いえ、こちらへ書類の届ついでに最近見掛けないなぁと思ってちょっと・・・ね?」
「三好なら年末が近いもので挨拶回りに出掛けましたよ。来年から食品の卸が我が社で始まるので。」
・・・なるほど道理で見掛けないはずですね。
それから数日が経つのですが時には朝早く出社し三好くんの出社を待ってみたり、寮の入り口で待ってみたりと色々してみたのですが唯の一度も出会えず、社内で「畑山さんが誰かを待ち伏せている。」との噂も立ち、社内での身動きが出来にくくなり、遂には「なんで私こんなことやっているんだろうと」・・・何かもうどうでもいいやと徐々に思ってきていた。
今年も終わりに近づき会社の忘年会。毎年ホテルの宴会場で土曜に行い翌日は日曜日と言う事もあり全部門参加の忘年会である。私は今日こそは居るのではないかと探したが三好君の姿はなかった。私は愛想笑いと酔った同僚の話を聞き相槌をしつつ内心ふてくされながら酒を呑んでいた。時間は進み、遂にお開きとなり恒例の一本締めにて宴会は終了。
私はホテルを出て会社の寮までは歩けば30分強の距離なので酔い覚まし、もしくは途中で良い店でもあればヤケ酒でも呑もうかとタクシーには乗らず、徒歩を決行した。ほろ酔い以上酔っ払い未満で若干ふらつきながらも寮へと向かいあるいていると「センパーイ」と声をあげながらこちらへ向かってくる人物が見えたのです。私は自分の事ではないと「?」と後ろを振り向いたが道端で酔いつぶれ路上睡眠を決行している男性らしき人物しかおらず、「ああ、私の事か」と正面に向き直すと声を掛けてきたのは三好くんだった。
「ああ、先輩お疲れ様です。もう忘年会は終わったんですか?」
「・・・・じゃないわよ」
「来年から業務拡張で社長がいつもより豪勢な料理にするといっていたのに
残念だなあ。」
「冗談じゃないわよ!今までどこほっつき歩いていたの!」
「え?僕は今日も年末の挨拶回りと業務拡張の為の客先廻りと・・・」
「あれからずーっと社内で探してもいつもいなかったもの!それくらい
わかってるわよ!」
「え・・・先輩、なんで怒ってるんですか?」
私は三好くんを直視できずに下を向き怒鳴り散らしていた。でも心の中で何かが完結してしまった。
あぁ、もう解ってしまった・・・告白された直後は「まぁとりあえず」ってだけだったのが、そこから逢えなくなって毎日少しづつイライラが溜まって逢えた途端に勝手に癇癪起こして・・・安心しちゃったんだ。イライラが溜まったんじゃなくて好きになっていったんだ・・・そっか、恋ってこういう事なのかな?と自分なりの勝手な解釈をしてしまった。
そう思った途端先ほどまで頭に血が上っていたのがスーっと落ちていった。
私はうつむいていた顔を上げ、三好くんを改めてみていると今にも泣きそうな顔をしていながら私に
「あの・・・先輩何かごめんなさい。」
「謝んないで。あの翌日に君への返事をしようと思っていたのに今日まで
できなかったからヤキモキしていたのよ。三好くんの方こそいきなり
怒鳴られて驚いたし悲しかったでしょ。私の方こそゴメンナサイ」
「いえいえ・・・え?・・・返事って・・・じゃあ・・・?」
「これからよろしく!まずはお付き合いから行きましょ!」
「え?あ・・あの・・・ホントに?・・本当に良いんですか?」
「ええ、もちろん。」
「じゃあ先輩!僕と結婚を前提に付き合ってくださいますね!?」
「はい。こんな魅力の欠片もないような私ですが宜しくお願いします」
「そんな!私にとっては神様女神様畑山様ですよ!」
「ふふふ、アリガト」
悲しい顔から一転この世の天国とばかりに満面の笑顔に切り替わる三好くんを見ながら、私も笑顔で見つめあったのでした。
―あぁ、なんか怒鳴ったら酔いが一気に回ってきたわ―
「ああ!先輩大丈夫ですか!?何か立ってるだけなのにゆらゆらしてますよ!」
「ん~何とか大丈夫・・・・かも?」
「先輩、タクシー捕まえますね」
「お願い。あと「センパイ」じゃなくて「ヨルコ」と呼ぶ様にして。」
「いや、いきなり名前予備はさすがに・・・」「よるこ!」
「無理です!せめて「畑山さん」から始めさせてください!」
「ん~もう仕方ないわね。早く慣れなさいよ?」
タクシーを捕まえるべく回れ右をしたが2~3歩歩いた後にまたこちらを振り返り
「畑山さん改めて、あなたの事が大好きです!」
「なっ!いきなりね・・・私も好きですよ。」
「クラクションがうるさくて聞こえなかったです何か言いました?」
「私も三好くんの事が好きです!」
「も、もう1回言っていただけますか?」
繰り返し聞こうとせがむ三好くんにそれ以上の「好き」を連発するのが恥ずかしかったが回ってきた酔いに任せて。
「好きです・・・ってか、あ~もう!はんかくせぇー」
「え?ハンカクセ?」
私は、つい口に出してしまった地元の方言に「ああしまった」と思いつつ何とか誤魔化そうとして考えの巡らない酔った頭でこう言ってしまった。
「あなたの事が「大好きです」って意味なのよ!」
「そうだったんですね。じゃあ私もあなたの事が「はんかくせぇ」です!
それじゃあタクシー捕まえてきますねー!」
「ん~よろしくね~~~~・・・・・・・・・・・・ウプ」
そこから完全に酔いが回り記憶はまったくありませんでした。翌日、寮の自室で目を覚ました私は前夜のやり取りを思い出し「好き」と言った恥ずかしさと、誤解釈をさせてしまった方言をどう修正しようかとベットの上で見悶えてしまっていたのでした。
最後までお読みくださりありがとうございます。
誤字、脱字等気付きましたらお知らせ頂ければ幸いです。
私も気づき次第、改定いたしますので宜しくお願いいたします。
次回は翌日12時に更新します。