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妹のターン・・・頼子の春は?

物語は中盤に差し掛かり妹の結婚話へ。すいません横にずれてしまいました。後半より頼子さんの物語へ戻ります。


※すいません駅についてからの会話シーンの後半抜けていました。改定しておきました。

会社もお盆休みとなり正月以来の実家へ武田くん(いや、もう弘樹氏と呼び方変えましょう)、妹両名と一緒に帰ることとなりました。関西方面へは新幹線が通っているというのに東北方面にも新幹線が来てほしいものです。

それでも私が上京した当時は鈍行列車というものに乗って20時間近く揺られながらでしたが、今は寝台列車というものが出来てベットに横になりながら帰省できるようになり楽になったものです。

さて、私のベットの向かい側上下に2人がベットを確保したはずが「何故2人とも下段の狭いベットで一緒に寝る?」と疑問に思いつつ、帰省してからの展開に少し憂鬱気味になりながら”冷凍ミカン”を食べつつ幸せそうにお互いに抱っこしあいながら寝ている2人を見ているのでした。


「んん~~~!着いたわね。やっぱり空気も澄んでるし涼しいわね。」

「帰ってきたって感じがするね」

「へえ~ここが2人の地元なんだ。田舎って言ってたワリには拓けてるじゃないか。」

「いやいやヒロくん。ここは東京に行くための中継点であってこれからバスだと3時間?車だと1時間半移動するからね?」

「そうよ~私達の実家ってホント田んぼと畑ばっかりで東京みたいに「電車で」なんて無理無理車がないと何にも出来ない所なんだから。」

「ホントか・・・」

「とりあえず、事前にお父さんに電話連絡入れておいたから。駅のロータリーで待ってると思うわよ?」

「それじゃヒロ君!ようこそ私のふるさとへ!」

「ああ!こちらこそよろしく!」


翌朝には青森駅に到着し、駅前では事前に連絡しておいた父が待っていましたが、妹の横に立つ見知らぬ男性を見た途端「おおぉ・・」と言いながら一歩引いていました。とりあえず皆で車に乗り実家へ着くまでの間、重くもあり気まずい空気の流れる車内は居心地が悪かったです。


実家に到着すると母と祖母が玄関前で迎えており、祖父はというと相変わらず庭で御近所さんを集めて酒盛りを実施しておりました。なんでも本日の肴は「どじょう」という事でした。

まだお盆寸前ということもあり親族は集まっておらず、私の家族のみで挨拶が始まりました。まぁテレビとかでよく見る「娘さんを僕に・・・」から始まり予想通り父は「うむ」としか言わず。母は「こんな良い男捕まえて~。ウチの娘をよろしくね」と終始笑顔を絶やさずにしておりました。両親ともに”既に同棲状態”には触れず、弘樹氏は翌日には実家に報告の為に帰る事もあり祝いの酒席を用意しようとした矢先に末っ子の弟が


「姉ちゃん、同棲してるんだって?なに?モウヤッチャッタ?」


一気に場の空気が凍り付きました。そんな中ユラリと祖母が立ち上がり鋭い眼光を放ちながら


「キエエエエエエエエ!!天皇陛下の御膝下におりながら日本男児の矜持たる質実剛健を忘れるとわぁぁぁぁ!こぉぉぉぉぉぉの不埒物が!それにめぐみぃぃ!貞淑たれとあぁれぇほぉどぉ教えておきながら結納も未だ交わしていないのに同衾だとぉぉぉ?2人ともその根性叩き直してやるぅぅぅぅぅぅ!」


と、右手にはギラリと鈍い鉄の光を放つ必殺の竹尺・・・ではなく鎌!いえいえ!おばあちゃんそれはまずいでしょう!

髪を振り乱し耳元まで裂けんばかりに大きく開いた口の中からきらりと光る金歯。ナニカを連想させるその光景に家族一同固まっており、弘樹氏、妹の両名は「やっ、やっ、やっ、やまん・・・婆」と腰を抜かしズリズリと後退りをするのであった。


「おばあちゃん落ち着いて!起きたけど何も起きていないから!っじゃなくて、ああもうっ!同衾じゃなくって同棲って言って一緒に住んでいるだけから安心して!ね?ね?」

「どちらでも同じじゃあぁぁぁぁぁ!そもそもそんなヒラヒラした露出の多い服を着よって!帝都の魑魅魍魎共の餌にでもなるつもりかあぁぁぁ!」

「責任は私にあるから、謝るから!おばあちゃん、お願いだから落ち着いて!」

「むうぅぅぅぅぅ・・・ヨリが謝ることはないのにのう・・・」


激怒した祖母を生まれて初めて体験し、漏らしそうであったが”全ての責任は我にあり”と気を奮い立たせて祖母を宥めるべく私は只々平謝りを実施した。謝る頼子に気が削がれたのかオドロオドロしい雰囲気は消え去り、いつもの祖母に戻りながらも鋭い目をしながら


「”間違い”は本当に起こしてないんだね?」


と祖母の確認する言葉に2人は残像の残るような速さで縦に頭を何度も振っていました。ようやく落ち着いた所に庭から祖父が顔を赤くしながらノコノコとやってきて


「な~んだ?でっけえ声が聞こえたから何があったのかと見に来たんだが、なんにもなかったんだな~?気にして損したなぁ~」


とのたまった後に回れ右をしまた酒宴の席に戻る祖父を見ながら皆大きなため息をついたのでした。おじいちゃん・・・さすが配偶者だけあるわね。かなりの騒ぎだったはずなのに動じていないわ。

そんなこともあったが無事に妹の結婚騒動に一端の終息を見せ、その後何事もなくお盆休みが終了したのでした。




~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~




過ごしやすかった田舎から蒸し暑い東京へと戻った。妹は9月のあたまに弘樹氏の実家である山梨の甲府市に父と母が上京し一緒に挨拶に行くそうだ。休みも明け3~4日だけじゃ少なくもう少し多めに休みはないのだろうかと少々ゲンナリしながら会社へと出社。社内で毎年恒例の田舎のお土産を皆に配っていると、予想していなかった質問が飛んできた。


「頼子さん、経理の武田くんと結婚するんですって?」

「え?」

「だってお盆休みに頼子さんの御両親に挨拶行ったんでしょ?」

「あー。どこで噂を聞いたのやら詮索はしませんが、残念ながら私ではなく私の妹と結婚するんですよ。」

「え~!意外だな~武田くんってスマートで爽やかな感じだし、凛とした頼子さんとはお似合いだと思ったんだけどな~。そっか~あの子猫ちゃん好みだったんだね~。」

「子猫って・・・。まぁ妹の恵って私から見ても「かまってあげたい」って雰囲気は感じるわね。」


などと世間話をしながらも「はいはい!お手々がお留守になってるわよ!」と同僚を窘めつつ日々の仕事に戻っていくのでした。


時は少しばかり流れ、畑山家と武田家の挨拶も済み10月の大安吉日をもって結納も交わし翌年1月に結婚式を挙げる事となっていきました。そうした夜も寒くなりもう少ししたら「暖房器具の用意もしなきゃね」と思いつつ会社からの帰途に立っている日の夜、久々に三好くんが会社の入り口で私を待っておりました。


「先輩・・・武田先輩と御結婚なさるんですね。遅ればせながらおめでとうございます。」

「はい?」

「すぐにでも声を掛けるべきだとは思ったんですが、2人とも準備で忙しいのか退社後はすごくバタバタしていたみたいだったので中々声を掛けることができなくって。すいませんでした。」

「いえ・・・三好く・・ん?」

「2人ともすごくお似合いですし幸せになってくださいね。」

「ちょ、ちょっと?何を言ってるのかしら?私は武田くんとは・・」

「それじゃぁ、私はこれで・・・」

「話を聞きなさい!」


私は訳の解らない事を言っている三好くんに片手に持つ文庫本の背表紙を彼の頭頂部に強めに叩きつけて落ち着かせようと試みたのでした。


「いってー!何するんだよ!・・・ですか!」

「あらま、意外に「ポクッ」なんて良い音がしたわね~」

「なんで頭叩くんですか!?僕は先輩の幸せをねが・・」

「まった!誰と誰が結婚するって?冷静になりなさい。

 そもそも彼と私は結婚しません。忘れたの?彼と付き合っていたのは私の妹

 よ?春に彼と妹と付き合ってるって報告されたの聞いていたでしょ?

 その時一緒にいたわよね?忘れたとは言わせないわよ。武田くんの横でお茶

 も飲まずに正座して仏像のように身動きしていなかったの覚えてるわよ。

 ようやく噂が収まったというのに。

 今まで忙しかったのは両親がこちらに来ていた対応と妹の結納準備のなんや

 かんやと手伝わされていたせいです。もう!失礼しちゃうわ!」


と私からまくしたてられてフーフーと息を荒くしている私を見てか冷静になったのか「あ・・・」と一言。

どうやら忘れていたらしい。私は「思い出したね・・・」とジトーっと彼の事を睨みつけてやると、下を向きモジモジとさせながら「すいません」と小さな声で謝罪したのでした。まったくはた迷惑な話です!

大の成人男性がモジモジしたってかわいくありません!まったく!


取り戻しスタスタと寮へと私が向かう少し後ろを申し訳なさそうについてくる彼がポツリと呟き始め


「ホントすいませんでした。噂を聞いて頭の中が真っ白になってしまって。

 それから寮に帰っても考えが纏まらずにグルグルと余計な考えばかり

 してしまって。今に至るということで・・・もちろん仕事はちゃんと

 こなしていましたから!」

「ああ、もういいからさっさと帰りましょ。」

「はい、でも良かったです。先輩が結婚しなくて。」

「なんだと?」


私が結婚しなかった事に「よかった」などと失礼極まりない発言には失礼をもって返すべく、帰途への歩を止め振り返り彼を睨みつけ喧嘩をするような口調で言葉を返し言葉を返すと彼も歩を止めまっすぐにこちらを見てこう言ったのでした。


「先輩、僕は初めてお逢いした時から好きになってました。惚れたんです。どうか

 僕と結婚してください!いや・・いきなりすぎる!

 畑山頼子さん!どうか僕と結婚を前提に付き合ってください!」

「・・・・・・・は?・・・・・・・・・なに?」


季節は秋から冬へと移り変わろうとする時期に突然の告白に頭が理解できず。たぶん間抜けな顔を私はしていたと思います。ただこの時に耳に残ったのは遠くで屋台ラーメンのチャルメラの音だけは記憶していました。


最後までお読みくださりありがとうございます。

読者の皆様が楽しんでいただけるよう精いっぱい努力いたしますので

今後ともよろしくお願いいたします。


次回は20時更新します。

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