ゲスの極み
業務を終え、帰ろうとした新見は、矢田センター長に呼び止められた。
「新見、今日の朝"かめだや"行ったの、お前だったよな?」
内心ドキっとした新見は
「えっ?あぁ、はい」と答えた。
「何か、朝の分、豆乳が1ケース破損してたそうだ。今日には、どうしても要るから今から返品、交換に行ってくれないか?」
(良かった、責任追及されるかと思った)
「あっ!俺、これから用事なんで無理っす」
安心した新見は、余計な面倒は御免だと言わんばかりに返した。
「そうか、仕方ないな。おい、玉野?行けるか」
たまたま近くにいた玉野に声を掛けた。
「はい、行きます」
玉野は張り切って答えた。
二人の会話を背に新見は事務所を後にした。
(玉野も良くやるよなぁ、一銭の金にもならねぇのに。それより俺はパチンコっと)
その時、新見の携帯が鳴った。
「あっ!浩太?私…美香」
電話の相手は高梁美香(26)だった。
美香は、新見の中学の同級生で、3年前に同窓会で再会し、意気投合して、そのままホテルに行った。
美香はそれから付き合っていると思っているが、当の新見は、都合のいい時にデキるセックスフレンドの様にしか思っていなかった。
「おお、何だよ?」
「ねぇ、今から逢えない?」少し可愛く言ってきた。
(パチンコとセックスか?う~ん、最近ヤッてねぇしな…)
「あぁ、いいぜ、いつもんトコ待ち合わせか?」
真意を悟られぬ様、素っ気なく答えた。
「OK、じゃあ7時でいい?」
美香の声が少し明るくなった。
「あぁ、じゃあ7時に」
電話を切った新見は駐輪場のDioに股がり会社を後にした。