コウタの捜査①
農家達による山狩りは早朝より再開された。
どうしても引っ掛かっている事があったコウタは山狩り隊からは外れて、納入された穀物を一旦仮置く為の蔵を訪れた。蔵にはボルが居座っていた。
「ボルさん?収穫物を集める順番はどうなっているんすか?」コウタの問いにボルは丁寧に答えた。
「先ずは不正を防ぐ為にも役員の収穫物をこの蔵に納めて、後は平役員の三人がエリア毎に分担して順番に集めて来ますがのぉ」
「分担するエリアはどうやって決めるんすか?」
「三人の話し合いで特に決まったやり方はありませんなぁ」ボルにはコウタが何を知りたいのか計り知れなかった。
「なるほど!じゃあ任されたエリアを回る順番も決められていなくて、それぞれの役員に託されるんすね?」
「そうだが?お前さん何が知りたいんじゃ?よもや、この世界のルールに難癖をつけて前の転移者と同様にこの世界を掻き回すつもりか?」
ボルは転移者に対して良いイメージを持っていず寧ろ直ぐに間引くべきと考えていた。
「ボルさん、落ち着いて!自分はテンさんが、どうやって自分の一級米とケイさんの特級米を入れ換えたのか知りたいだけなんっす」
「そんな事を知って何になると言うんじゃね?」
「もし、今テンさんが捕まっても米の入れ換え方法が分からなかったらシラを切られるだけっすよ!テンさんが捕まる前に証拠を掴んどかなきゃダメなんすよ」コウタは熱く語る様に言った。
「ふんっまた証拠かぇ?お前さんの様な人間が来る様になって何かあると直ぐに証拠、証拠と…そもそもお前さんの様な人間が来なければこんな事件も起きんかったんじゃ」ボルはこんな事は懲り懲りと言った風に言い放った。
「言葉を返す様だけどそれは違うっすよ!自分はムコウの世界から来たから分かるっすけど、コッチの世界でも不正はある!それは目に見えない形でずっとあったと思うっすよ!目に見えなきゃ間引かれる事もない。だから今まで誰も気付かなかったんだ!」
「そんな証拠もない事を…」
「でしょ?だから証拠がいるんすよ!お願いします。自分の恩人のリュウさんやケイさんの為にもボルさん、協力して下さいっす」コウタは頭を下げた。ボルは暫く考え込んだ後
「それはお前さんの為ではなくあくまでリュウ殿達の為なんじゃな?」と答えた。
「勿論っす」コウタはボルの目を真っ直ぐに見て答えた。
「分かった…ワシの知っている事は何でも話そう。そして、一緒に証拠とやらを掴みましょうぞ」




