過去の男タマミツ④
夜になり、皆で囲炉裏を囲みながらリュウはタマミツに話し始めた。
「タマミツさんや、よう聞いて欲しいんじゃがのぉ」
「何や?」タマミツは素っ気なく返事した。
「今日、やっつけた警察の人間はのぉ、皆、自害したと思う」
「何や、折角殺さんと置いといたのに自分らで死によったんか、しょうもな」
タマミツは気持ちの籠らない返答をした。
「アンタは一体、人の命をどう考えとるんじゃ?」訴え掛ける様にリュウは言った。
「せやから朝も言うたやろ?殺すか殺されるかだけや!そもそも大事な命やったら何で自害すんねん」
タマミツの語気が少し強まった。
「警察はのぉ、その姿を人に見られてはイカンのじゃ!常に隠密で行動する事が義務付けられておる。それを破った者は死、あるのみじゃ!しかしのぉ、アンタは違うじゃろ?普通の人間じゃ、命を粗末にしてはイカン!」
リュウの言葉には悲壮感が漂っていた。
「ワシの命がどうなろうとアンタに関係ないやろ?」
「関係あるよ!私はタマミツさんが死んだらとっても悲しいから…」
ここでケイが口を挟んだ。
「その通りじゃ、勿論ワシも悲しい。ムコウの世界でアンタに何があったか知らんが、どうかワシらを悲しません為にも命を大事にして下され」
リュウが願う様に続けた。
その時だった。タマミツは急に何かを避ける様に身体を捻った。そしてそのまま倒れてしまった。
「タマミツさん!しっかりして!」
泣き叫ぶ様にケイが叫んだ。
「ケイ!解毒薬じゃ!これは特殊部隊の毒吹矢じゃ」
吹矢は通常、まともに刺されば即死に到る。しかしタマミツが殺気を感じて、かすった程度で済んだので、リュウの素早い処置のお陰もあり、何とか一命を取り留めた。
「これでアンタに救われたんは、三度目やな。ほんま有難う」
タマミツは何かを思う様に礼を言った。
「うむ、助かって何よりじゃ。
ケイ!ワシは明日、特級警察官の所に行って来る」
「父ちゃん?特級警察官って、まさか?」
ケイは心配そうに答えた。
「うむ、特殊部隊が出て来たとなれば一刻の猶予も許されん」




