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頭隠して尻隠さず

新見の一日は、午前中に10件前後の配送を終わらせ、一旦、配送センターに戻る。

昼食後、午後の分を積み込み、5件程度の配送を終わらせたら、明日の分を宵積みして業務は終了する。

もし、ここでイレギュラーがあれば、そのための書類を作成するなどの、余分な業務が足されるのだ。新見は、この余分な業務が大嫌いだった。


「今日は…12件か。少し多いんじゃねぇ?」

タバコをくゆらせながら、新見はブツブツと文句を言った。

「この最後の3件なんか玉野に行かせろよ!」

車内は一人なので、誰に言うでもなく大声で叫んだ。


順調に配送を終わらせて、後、2件を残すのみとなった。

やがて得意先の"かめだや"に到着する。


「毎度、おはようござぁす」心のこもらない挨拶を済ませ、荷卸し作業を開始した。


「うわぁ、やべ」荷物を台車に高く積みすぎ、軽い段差で一番上の荷物が落下した。

「うわぁ、豆乳の箱の角、イカれたよ」

この時、新見の頭の中には、センターに戻ってからの余分な業務がよぎった。回りを見ると誰もいなかった。

(よし!分かりにくいように積み換えてっと…)

新見は落とした豆乳を中に隠れる様に積み換えた。

「あざぁっした」伝票に勝手に受け取り印を押してサッサと得意先をあとにした。


「大体、朝から12件とか多すぎんだよ」自分のミスを会社のせいにしながらブツブツと文句を言った。

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