ウェルカム パラレルワールド
「うわぁ!」
新見浩太は、悪夢で目覚めた。
右腕は、ギプスで固められ、身体中、包帯でグルグル巻きだ。
(あれは夢だったのか?いや、この身体を見る限り現実だよな?ってか、ここ何処だよ?)
新見は寝かされていた布団から、上半身だけ起こし、回りを見回した。
すると、今、自分がいる場所は、全く見覚えのない木造の古びた建物だと分かった。
「何だよ!ここ?まるで昔話の家じゃねぇか」
重症の身体でも、口の悪さは相変わらずだった。
全身に痛みが走るのを堪えて、何とか立ち上がった。左足が痛むので、ビッコを引きながら、隣の部屋を覗いた。
真ん中に囲炉裏が見えたが、火はついていなかった。
「マジ、何処だよ?」
不信に思っていると、外から足音が聞こえて来た。
目の前に玄関で、あろう、引き戸が見える。
新見の脳裏に、自分を痛め付けた男達が蘇り
「ヤバい!逃げなきゃ」
と小声で呟き、元いた、奥の部屋に移ろうとした。
しかし、身体の自由が利かず、その場に尻餅をついてしまった。
"ガララッ"と音を立てて引き戸が開いた。
そこには、如何にも農家という格好をしているが、とても美しい女性が立っていた。
「あらら、あんた目が覚めたのかえ?」
女性は身体ごと外に向けると
「父ちゃ~ん、あの人、目を覚ましたよ」
と叫んだ。
しばらくすると、これまた農家の格好をした、少し背が曲がった老人が現れた。
「おぉ!あんた生き返っただか?えがった、えがった」
と言いながら、ニッコリと笑った。
「おい!じいさん、ここ何処だよ?」
不安な精神状態が、新見をより毒付かせた。
「やっぱなぁ、あんた"ムコウ"から来たんだなぁ?」
老人は合点がいった様に言った。
「何だよ!"ムコウ"って?それよりマジここ何処だよ?」新見は益々苛立った。
「まぁ、落ち着けぇ。一言で言えるモンでもねぇ」老人は掌を下に向けて振りながら言った。
「恐らく、あんたはこの世界の住人じゃねぇ」
老人は、囲炉裏の前に座ると、訥々と語り始めた。




