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異能モノノケ録  作者: 長尾景虎
91/148

第91話 泥の街 四日目~


場面の移り変わりが激しくなっています。

読みにくかったら申し訳ない。

 


 檸梨市の外縁。

 街をぐるっと囲う結界が赤黒い泥の壁となって外界との繋がりを遮断している。

 そしてその壁に沿うように一迅の風が吹き抜けた。


「さて、この辺りですかね」


 風は木々の生い茂る森林部で足を止めた。

 そこからはより静かに、気配を消しながら斜面を登っていく。

 木々を抜けた先には開けた空間、街を見渡せる位地にある丘へと出た。こんな薄汚い結界なんかに覆われていなければ、さぞや絶景だった事だろう。


「どれどれ………おお、時間通りですね。本当に反則的な能力だ」


 輝真の持つ情報を元にこの場へとやって来た士緒。

 丘の上から双眼鏡を覗きこんだ先には目的の者たちが見える。木々の隙間から覗く人影が二つ、背の高い男と短髪で細身の女。二人とも、どこにでもいる普通の人間と変わらない服装だ。

 若干、地味さが際立つ身なりということを除けば特徴の無い二人。見る者が見れば、目立たない事を目的としていると分かる。

 士緒はそんな後ろめたい二人組を悪い笑みを浮かべながら、次の行動までの間、面白そうに観察を開始した。



             ★



「それで? 経過はどうなのよ」


 全体的に地味な色あいの服でロングスカート。ショートの髪、目付きが多少キツめの美人という以外はいたって普通の女性。

 大の男に向ける口調からは気の強さがありありと伝わってくるようだ。


「順調に決まってるだろ。と言うか俺らの妨げになりそうな要因なんて思い付かないんだが」


 こちらも、背が多少高いこと以外は特筆すべき点が無い男………いや、その異常なまでに希薄な存在感が特徴と言えば特徴だろうか。

 顕術による一種の意識誘導……『人避け』の結界に似た隠形を纏い自らの存在を認識し難くしているのだ。

 この街における隠密担当である。


「寝ぼけた事ぬかしてんじゃないわよ! 仁科黎明が入りこんでるってのに。『火坑(かきょう)』が開くなら早い方がいいわ」


「仁科黎明だろうと、今さら何も出来やしないって。炉心は見つからない……誰にも見つけられないさ」


「お気楽………いい? 良く聞きなさい。本来なら私たちはここに来る予定じゃなかったの。それを急遽、御前様が私たちをこの街に送り込んだ……どういう意味か分かるでしょ?」


「『天眼』だろ? だが御前様の予知も絶対じゃない。今回は特にな」


「それでも、絶対の事もあるのよ。御前様の命令とか」


「あ~………そう言われちまうとな」


「計画は順調、不備は無い。だからこそ………失敗は許されないの」


「……つってもなぁ。だからってこれ以上できる事があんのか?」


「私たちの仕事は、こうやって定期的に報告し合って、『火坑』に問題が起きないか見張り、あらゆるリスクを排除すること。炉心が壊されるのが極僅かな可能性だろうと、御前様が『天眼』でそれを予知したのなら無視はあり得ないわ。それに――――」


「ああ、わかったわかった、きびきび働かせていただきますよ。なんか顔恐いぞ?」


「……胸騒ぎがする。仁科黎明の事もだけど、それだけじゃなさそうな………」


「何か見落としでもあるって? 無い……と言いたいところだが、あると分かってたら見落としとは言わないもんな」


「なんだろう、この感じ………前に、“IR(イル)”が御前様を殺そうとした時に似てるのよ」


「……シャレにならんな。俺はその場に居なかったが、ヤバかったらしいじゃないか」


「……“IR”が取引のできる相手で良かったわ。“死神(ハロス)”には悪いことしたけど、奴を売らなきゃ御前様もどうなってたか………あんな子供に御前様が害されるなんて、どんな悪夢よ。今回は、あの時と似た空気がある」


「……言われてみれば状況は似てるかもな。前回は俺らにとって大一番ってとこで、まさかの逆王手だろ? まさかこの街でIRと出くわすことは無いと思うが………そうなると外が心配か」


「たとえそうでも、そっちは私たちにはどうしようもない。まさかここでの仕事を放り出して外に出るわけにもいかないんだから」


「だな。もっとも、前回の“IR”も、前回の『火坑』を壊した赤坂村正も、ここには居ないんだ。そんなビビることは無えって」


「……誰もビビってないわよ! このっ!」


「あだっ!? おい、マジで蹴ること――――」


 ヒュンッ


「「!!」」


 女から蹴りを受けた男が数歩よろめいた直後の空間。そこに風を切り裂いて飛来した『氷柱刺突槍』。男は運良くその槍の回避に成功していた。


「なん――――!?」


 男に息つく暇は無かった。

 今度は音も無く、男の前に現れたのは屋台で見掛けるヒーローのお面を付けた制服姿の少年だ。

 その学園生……第二校の“規格外(オーバーフレーム)”と呼ばれるそいつは、低い姿勢から『光剣』を腰溜めにして、今まさに男を真っ二つにしようとしていた。


「このヤロウっ!」


 動きにくいロングスカートを裂いて相方の窮地に即応した女は“白面金毛”の配下では指折りの実力者……“雷蹴脚”の呼び名を受ける“鬼”だ。その名の通り、脚から繰り出される蹴撃や脚技の数々は目にも留まらない。

 そんな彼女が体勢を崩してまで行った攻撃ですら、仮面の少年の動きに辛うじて追い付ける程度。少年は蹴撃を回避して距離を取るも、足に自信のある“雷蹴脚”からすれば舌打ちを禁じえない結果だ。

 それ程までに、鮮やかな奇襲の流れだった。


「“規格外”だと!? なんでここに――――!」


「それは後っ! あいつ逃げるわよ!」


 “雷蹴脚”の言葉通り、“規格外”はあっさりとその場から逃走を図る。

 木々の合間を抜け、または枝から枝へと跳び移りながら立体的な動きで逃げ出した。


「追うわ!」


 男は短く返事をし、二人は“規格外”の追跡を開始した。

 いつから会話を聞かれていたのか、いつから自分たちの存在に気付いていたのか。聞くべき事は山ほどある。

 そもそも接触する予定すら無かった相手だが、最悪ここで殺しておかなければ先程の悪い予感に繋がりかねない。

 “規格外”と言うだけあって、この街での活動にどんな影響を及ぼすかは未知数だった。調べてみても、その素性はおろか能力の全貌すら掴めない相手である。

 結界を打破するトンデモ能力を所持している可能性だってあるのだ。災いの芽は摘んでおくのが良い。

 それこそ実力が不透明な相手だが、多少無理をしてでも、ここで叩いておきたかった。


「手に負えなければ殺しなさい。て言うか、あんたじゃ捕獲する余裕なんて無いからね」


 森の中を身軽に飛び回る“規格外”を二人で囲うように追い詰めていく。

 しかし、その逃げ方が少しおかしい。奇妙な違和感がある。


(追わされてる? ふざけやがって!)


 足は速い。地形を利用すれば逃げ切るくらいは出来ている筈だ。

 にも関わらず、機動力のわりには引き離される様子がない。追撃は意識しているが、逃げる事に重きを置いた機動とは思えなかった。


「おい! あの野郎っ………」


「分かってる! ムカつくけど、これ以上の深追いは――――」


 危険かもしれない……そう言いかけたところで、途端に“規格外”の姿を見失った。

 それまで不自然なくらい目立つアクロバットを繰り広げていたのに、その瞬間、一気に加速して姿を消したのだ。

 反射的に二人は姿を探し、追跡の勢いを止められず森林部を抜けて山間の舗装された道路へと踊り出た。


「「!?」」


 二人が踊り出た先、そこに偶然居合わせたとでも言うような自然体で、しかし警戒する気配を纏っているのは………今の今まで自分たちが追い掛けていた“規格外”だった。

 その両手には直前まで持っていなかった二本の木刀が握られている。


(こいつじゃない!?)


 自分たちを襲った“規格外”ではない。

 気配も、佇まいも、先程とは一変していた。

 目の前の少年には唐突な遭遇に驚いている様子さえ見てとれる。

 “雷蹴脚”という“鬼”は直感でその場から離れるべきだと理解し、即座に反転を試みた。しかし、相方の男はそこまで優れた洞察を行えず、殺気を持って対面してしまう。

 実際、男は目の前の“規格外”に対して取り出した短刀の切っ先を向け、今にも斬りかかりそうな状態だ。


 結果、“規格外”も二人を敵と認めて臨戦態勢を取り、お互い取り付く島も無い内に戦いが始まってしまった。


「くあっ!? 速っ――――!」


 “規格外”の瞬速の踏み込みからの木刀一対による嵐のような怒濤の連撃。爆撃もかくやといったそれらを“雷蹴脚”の所以たる雷を纏った蹴撃で迎撃する。


 僅か数秒の激しい攻防。木刀と脚部が打ち合わさる度に火花が散り、ある種の演武か曲芸まがいの動きで行われたそれらを通して判明した事実もあった。


(私じゃ倒しきれないかっ……強いって点はさっきの奴と変わんないじゃない!)


 “規格外(オーバーフレーム)”の身体能力はまさに規格外の一言。

 経験の差と、脚技主体の戦闘スタイルに対する不慣れが無ければ拮抗するのも難しい……いや、恐らく押しきられていただろう。今も徐々にだが、確実に対応しきれなくなってきていた。


()った!」


 気配を消して“規格外”の死角からその喉元へと短刀を伸ばす男。

 動きを見る限り“規格外”に隙らしい隙は見られなかったが、面で視界を狭め、目の前の“雷蹴脚”に集中している今なら届くと考え、男は刃を突き立てようと接近した。そして予想通り、あと数ミリの距離まで刃は迫った………だが、


「――――ぐぉ!!」


「なに――――!?」


 刃が届くように見えたその瞬間、“規格外”が尋常ならざる動きをして見せた。

 男の刃は“規格外”の背後から首をかき切る角度で回されていた筈なのに、始めからそんな事実など無いとでも言うように“規格外”は不可避の刃を躱していたのだ。

 どの瞬間から、どうやって……そんな次元での躱し方ではない。さながら回り込んだ男の腕をすり抜けるかのような、あり得ない機動。

 “規格外”が男の傍らにいきなり出現するという現象が起きた。

 そして背面の向きのまま繰り出したのは木刀の柄頭。それを男の腹部に、膝を突いて動けなくなる程の威力で打ち込んだ。


「ええい、くそ! “規格外(オーバーフレーム)”!!」


 “雷蹴脚”が呼び掛けると同時に力強く踏み込み、『踏鳴(ふみなり)』による地揺れの波と並行した正しく波状攻撃を仕掛ける。

 普通なら跳躍して躱すか、揺れや地形の変化によってバランスを崩される事を覚悟で迎え撃つのが常道なのだが、“規格外(オーバーフレーム)”は流石の規格外っぷりを見せた。

 迫る波を躱すでも迎え撃つでも、あるいは無理矢理に地面の動きを打ち消すわけでもない。“雷蹴脚”が繰り出した波を呑み込む(・・・・)威力で逆向きの『踏鳴』を放ったのだ。


「ちぃ!」


 舗装された地面とは思えない波状の隆起が迫り、“雷蹴脚”は堪らず空中へと逃げ出す。

 さらに“規格外”の『踏鳴』はそれだけでは終わらない。地揺れが真下に差し掛かった瞬間、地面を突き破り、巨大な『石柱刺突槍』が空中の“雷蹴脚”へと襲い掛かった。


「ナメんなあ!!」


 雷を纏った蹴脚でそれを難なく薙ぎ払う。

 しかし、それは別の意味で致命的な隙となってしまった。


「あ――――がっ」


 ダメージで動けなくなっていた“鬼”の男の背中に、“規格外”は一切の容赦も躊躇も無く木刀を突き立てたのだ。男はそのまま砂粒となって消えた。


「ちくしょうがっ………」


 確実に討てる敵を討ち、戦力を減らすという堅実で的確な判断。

 仲間の男があっさり討たれる様を見て、“規格外”と言う存在を侮っていた事を認める。

 目の前の少年を明らかな脅威と認識した今、それを排除できずに逃走する事しか出来ない自分が、酷く怨めしい。


 “雷蹴脚”は空から“規格外”を憎々しげに一睨みしてから、『虚空踏破』でその場を急速に離脱した。逃げると決断してからは早い。それこそ脇目も振らずに全力の逃走を図ったのだ。

 “規格外”も追い掛けようとしたが、その逃走はあまりにも素早く絶妙なタイミングで、追撃の機を逃す事となる。“規格外”が空に上がって“雷蹴脚”の逃げた先を見るも、既にその姿は見えなくなっていた。


 自慢の脚を、こんな不様な敗走に使わなければならない事態の原因となった二人の(・・・)仮面の男。そしてそんな奴等と予期せず遭遇する事になった最低の日に対し、多くの呪いの言葉を吐き捨てながら、薄暗い空に覆われた泥の街をひたすら疾走するのだった。



             ★



(な、なんだったんだろう、今の人達………“鬼”? “凶堕ち”じゃない……よな? ふぅ………死ぬかと思った)


 結界の解除、または破壊の糸口が無いかと辺りを探っていた所にいきなりの遭遇戦。犬塚戌孝がこれまでに対峙した戦いの中では文句なしに一番の危機だった。


 少し前、退治屋の仕事でふらっと街に現れた神崎紫瞬に珍獣扱いされて捕獲されそうになったが、その時は命の危険を感じなかった。

 災害級とも個で渡り合う神崎紫瞬は戌孝が固有秘術に目覚めてから出会った者としてはほぼ唯一の格上だ。アレから逃げおおせたのは運が良かったとしか思えない程に。

 が、今回相手にした女はそれとは別だった。

 紛れもない命の奪い合い。能力面では圧倒できていたが、ちょっとでも隙を見せれば間違い無く殺されていただろう。

 さらに言えば、もう一人の男に後ろを取られた時なども肝を冷やした。反則的な固有秘術の力が無ければ、やはり死んでいたに違いない。

 これ程まで死を間近に感じたのは初めての事。第一校で死にかけた時ですら、ここまでではなかった。


 現実的な命の危険を、戌孝は今日初めて体験させられたのだ。


(やっぱり一人じゃ限界あるかな。当てもなく調査の真似事してるだけじゃ………)


 せめて自分より退魔師としての経験がある誰かの協力が欲しい。

 しかし“社”の退魔師に自分の正体を晒すのは些か勇気がいる。敵対した事は無いが、無所属でいろいろ勝手な戦闘をしてきた負い目があるからだ。

 他に信用が出来て、退魔師としての知識があり、欲を言えば自分の戦闘にも付いてこられる誰か。


(うーん、どうしたものかな………)



         世界を穿つ災禍まで


           あと10日


             ★



 翌日。当然と言うべきか犬塚戌孝は結界を突破する糸口を掴めないでいた。

 退魔師としてアドバイスをくれそうな協力者の当てもない。

 あるいは自分と肩を並べて戦ってくれる者か、せめて補助をしてくれる存在が居てくれたならどんなに良いか。

 独楽石栄太は協力者としての信用に関しては申し分無いが、退魔師としての知識は自分と大差無く、戦闘となると固有秘術を使用している時の自分には付いて来られないだろう。

 明らかに多くを望み過ぎだと自覚してはいるが、どれか一つでも妥協すると互いのためにならない。最低でも信用さえあれば知識と戦闘力のどちらかは高望みしなくても良いのだが、それではそもそもの目的である協力者を得る事の意味が薄くなる。

 かつての自分からは想像も出来ない悩みだ。上から目線で誰を仲間にするか吟味するなど、自分も偉くなったものだと自嘲することになろうとは。


(実際、手詰まりなんだよな………どうしよう)


 ただでさえ、街ごと孤立しているこんな状況だ。欲する物がそう都合よく手に入るわけもない。

 こんな時、頼りになりそうな人なんて………


(……馬鹿だな。橘さんも黒沼先輩もここには居ないのに、咄嗟に頼りたくなるなんて)


 かつて、自分の人生を変えたとも言える二人。

 鬼から自分の命を救ってくれた、橘という名前しか知らない退魔師。退魔師である事を諦めかけていた自分に道を示してくれた黒沼公浩。

 どちらもこの街に居る筈のない二人だ。

 偶然、今回の件に巻き込まれている可能性はあるかも知れないが、限りなく低い可能性でしかない。そんな妄想とも言える確率に縋るなど論外もいいところである。


 こんな時、改めて相談できる相手が欲しいというのに。次に何をして、誰を頼れば良いのか……それを相談できる相手が居ないジレンマ。

 いよいよ頭がこんがらがってきた。


 ………だが、かと思えばそんな思考を吹き飛ばすような騒ぎが九良名学園第二校を駆け抜けていた。


「犬塚、物見から緊急の報告だ! 学園の敷地を囲むように大量の“凶堕ち”が現れた。手を貸せ!」


 風紀委員の先輩から校舎内を見回っていた戌孝に火急の報せが届く。

 “凶堕ち”の群れが、まるで統率を得たかのような動きで学園を包囲していると。


 正直、いつかはこんな事態もあり得るのではと思っていた。

 “凶堕ち”は凶暴化こそしているが、知能を持ち、結界の影響で変質している以上はその使い手の意図が少なからず反映されている存在の筈だからだ。

 事件の首謀者が“凶堕ち”を操れたとしても何ら不思議ではない。どころか当然ですらある。


(固有秘術が使える時間まで、まだ結構ある。せめて夜まで時間を稼がないと)


 戌孝は急いで他の風紀委員と合流し、要所の防衛に加わった。



             ★



「今のところ“規格外(オーバーフレーム)”の気配は無い、か。お仲間を殺されないと出て来ないってわけね」


 遠くから学園の包囲を観察している“雷蹴脚”が独り言を溢す。

 九良名学園の制服を着ている以上、“規格外”が学園の関係者である可能性は高い。

 その正体や能力を探るため、あるいは万が一にも隙を突いて殺せれば御の字程度の今回の襲撃。“雷蹴脚”にとっては軽い威力偵察だが、弱いとはいえ“凶堕ち”数百体から成る群れが、非戦闘員が多数を占める学園を取り囲むという光景は、中の者たちからしたら絶望でしかない。発狂に至っていないのが不思議なくらいだ。

 “雷蹴脚”はこのまま“規格外”が現れないようなら、物のついでとばかりに学園内の人間を皆殺しにするつもりでいた。

 そこには家に帰れない学園生だけでなく、近くから避難してきた一般人も多く集まっている。

 数は多いが、殺しきるだけなら時間も掛からない。その犠牲者の中に“規格外”の関係者がいたり、そこに“規格外”が駆け付けてくれても一向に構わないのだ。


 街に人間が居る限り替えが利く“凶堕ち”がいくら倒されようとも、“雷蹴脚”には痛く痒くもないのだから。


 その過程で敵の情報が得られれば万々歳だった。


「悪く思わないでね、“規格外”。これも御前様の目指す平和で平等な世界のため。あんたに邪魔されるわけにはいかないのよ」


 “雷蹴脚”は“凶堕ち”した元市民たちを統率させている灯台・乙型の鬼に指示を飛ばした。


 皆殺し


 人の形をした元人間たち。どこにでも居そうな普通の格好をした化物たちは狂った形相で、たった一つの目的を遂行せんと猛スピードで学園の敷地内へと突撃する。


 常駐している退魔師、生徒会、風紀委員会がそれらの迎撃を開始した。

 学園側にとってそれは、最も間近に『死』が顔を覗かせた戦いとなった。



          世界を穿つ災禍まで


            あと9日








第三回キャラクター仕分け 

被虐型快楽物質発生(ナカセタイ)ヒロイン編”真



・CASE8 “のじゃ姫”


主人K「さーて、ギーネさん、問題です。答えられたらこの家宰(てんちょう)特製、イチゴのケーキをホールで差しあげましょう」


『なに!? まことか! はよっ、はよぉ寄越すがよい!』


主人K『慌てないで。これから出題する問題に答えたら、ですよ?』


『問題などよい! さっさと我に献上せよ! 気の利かん家臣じゃのお!』


主人K『……………』


『ぬぉあ!? わ、わかった、わかったからヒョイッてするのはヤメテくれぇ』


主人K『では第一問。東京の首都はどこでしょう』


『と、トーキョーの首都じゃと? ぬ、ぅ………いきなり難問じゃ。トーキョー、トーキョー……………』


――――20分後


『って!! トーキョーって首都じゃろ!? 答えられるはずなかろうが!!』


主人K『ジャジャン! 第二問』


『清々しいほどに無視されたのじゃ………』


主人K『地球上にある登り坂と下り坂、どっちが多いでしょうか』


『なぬ? ぬぅ……これは雑学系知識問題じゃな。直感に従うなら下りの方が多そうじゃが………最悪は二択で賭けるしか――――』


――――20分後


『って!! 登りも下りも同じじゃろぉおお!!』


主人K『正解! では続けて行ってみましょうか。ギーネさんはネコ派かイヌ派か、どっちでしょうか』


『ぬ? え~と……ネコ派? かのぉ』


主人K『へえ、そうなんですね』


………………


………………………


………………………………


『問題じゃないのか!!?? 世間話かやっ!?』


主人K『最終問題。この後ホールのケーキをギーネさんが見事獲得しました。さて、これをどうしますか?』


『無論! 朝昼夕夜に分けて食べるぞ! 昼食と夜食の時はイチゴを後に取っておいてじゃな――――』


主人K『はい不正解』


『ぬあっ!! だからヒョイッだけはっ……ヒョイッだけはヤメテーー!』


主人K『正解は………皆で一緒に食べる、です』


『あ、ぅ……………ふんっ! わかっておるわ。仕方ないから貴様も呼んでやるのじゃ!』


主人K『はい、ご相伴に与ります』


その後、主人Kは然り気無く自分のイチゴをギーネの皿に献上したのだった。






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