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異能モノノケ録  作者: 長尾景虎
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第28話 龍首の虎


 “百鬼大蛇(ナキリオロチ)


 “鬼”の勢力の中では武闘派を謳う組織として知られる。

 頭目は“龍首(たつくび)”と呼ばれる特一級の鬼。武闘派組織の頭目だけあって戦闘能力、統率力は高い。兵力としての規模は中の上だが、人里に面した場所で犇めくには強大すぎる一団だ。脅威以外の何物でもない。


 そんな組織的勢力の情報は先日、敵対する人物より齎されたもの。

 情報の裏を取ってみると、確かに街からそう遠くない山間の一角に大規模な拠点が発見できた。隠蔽の精度が高く、あると言われて見なければ、恐らく気付くことはなかったろう。

 そして当然ながら、橘花院がこの情報を寄越したのは思惑があるから。退魔師協会としては、腹の立つ事にこの思惑に乗らざるを得ない。良いように利用されるにしても、無視して侵略者を肥えさせるよりはマシなのだ。


 しかし、敵対勢力の根城が判明したとはいえ、迂闊に手を出せる相手ではない。退魔師協会としても本腰で臨まねば手痛い反撃をされると予想される。

 本来であれば万全の準備に数ヶ月の時間が欲しいところだが、拠点の仕上がり具合を見るにそんな時間は無さそうだと結論が出ていた。


 そして今夜、強引なうえに拙速ではあるが、集められるだけ戦力を集めての包囲殲滅という力業が敢行されたわけだ。

 協会も切羽詰まっているという証左が、月夜に映える白い学生服……特例として召集された九良名学園生徒会、風紀委員会の生徒たちである。学生を大規模作戦に投入するなど、正規の退魔師にしてみればあり得ない事態なのだから。

 黒沼公浩も、風紀委員の一人として参陣していた。


(上手く踊ってくれましたか。綺麗事を建前として掲げている組織は操りやすいですね)


 今回、橘花院士緒が一人で“百鬼大蛇”を殲滅することは十分に可能だった。だがここで士緒が直接手を下せば、“真ノ悪”としても面白くない事態になりかねない。

 勢力を仮に五つほど束ねた連合であるなら難なく弾き返して見せよう。

 とは言え、“百鬼大蛇”のような大組織を理不尽に蹂躙したとなると、危機感を覚えた他の勢力が百からなる大連合を作りかねない。

 そうなってしまっては流石の“真ノ悪”と言えど、多少の(・・・)ダメージは免れないだろう。

 そういった事態を予防するためにも、“真ノ悪”は今回は動かない。五郎左は好きにやれと言っているが、これは慎重でバカ丁寧な仕事をしてきた士緒の考え方によるものだった。

 先日、士緒が退魔師協会に乗り込むにあたって切った札は二枚。一枚は“百鬼大蛇”に関する情報。もう一枚は平と村正が口裏を合わせて行った四宮洋一郎の生存を仄めかすこと。

 それらを皮切りにして、“真ノ悪”が得ていた仁科家の悪行を示す証拠の数々を、死んだ筈の四宮洋一郎を経由して暴露できる。かねてより四宮洋一郎が証拠を集めていたのだと偽装して。


 死人に口無しとはよく言ったもの。実際には殆どの証拠が“相談役”の言っていた通り捏造だが、一度生まれてしまった流れは変えられない。

 ある程度の悪事については証拠を握っていたので、それをダシに“相談役”という役職の解体を、稲生平こと山本五郎左衛門が進めたのだ。

 全ては計画通りに進んでいる。それはいっそ、恐い程に。


 そして順風満帆に事が進んでいるからこそ、九良名の近くで“急所斬り”のように危険な殺人鬼に彷徨かれるのは迷惑だった。

 思わぬ邪魔者となる前に始末しておきたい……諸共に始末されようとしている“百鬼大蛇”には同情するが。


「喜べ諸君。我ら風紀委員会の仕事が増える前に件の“鬼”は片が付けられそうだぞ」


 包囲網の後方……見通しが良く比較的安全な丘にて、配置についた風紀委員長の斑鳩(いかるが)(えにし)から不遜な言葉が掛けられる。それを受けた松平二郎と黒沼公浩は、静かな笑顔で小さな拍手を送った。

 離れた場所には生徒会の三王山梓、天ノ川鳳子、工藤正臣、そして四宮鶫の姿。

 全員が緊張感を持った顔つきだが、そこは下手な退魔師よりも現場経験の豊富なエリート学生たちだ。ガチガチに凝り固まった様子はない。むしろ大規模な作戦とあって、普段よりも良いコンディションで臨んでいた。


「さて、これだけの包囲網だ。当然、向こうもこちらの動きには気付いているだろう……松平兄、貴様ならこの包囲網をどう脱け出す」


「僕なら、戦力を集中しての一点突破ですかね。実際、こちらとしてはそれが一番嫌な展開でしょうし」


「模範解答だな。黒沼三席はどうだ?」


「……質問の答えではありませんが、僕は前よりも後ろが気になりますね。今回の攻勢、規模が大きい割に急拵えです。味方の連携不足は死活問題かと」


「そうだな、そこは私も同意見だ。二人とも流れ弾には気を付けておくように。安心しろ、背中は守ってやる」


 快楽主義で冷たい印象を覚える縁だが、学園の生徒に対する責任感は強い。これまでの実績もあり、キラリと歯が光りそうな男前な笑みと力強い言葉は、凄まじい安心感を与えてくれた。


「………お? もう始まったか」


 縁の口から出たのは、別段興味の無い映画にでも連れて来られたかのような淡白な言葉。

 公浩と二郎も、夜空に響き渡る獣の遠吠えに似た鬼の咆哮を聞き、視線を向けてみる。そちらは生徒会が配置されている辺りだ。

 公浩たちの居る丘とは逆に、地形の凹凸や密集した木々のせいで隠れ場所が多い。初手で敵陣を包囲したは良いものの、やはり地の利を握られていては奇襲も起こりうる。

 幸いにして、生徒会は危なげなく対処している様子だった。


『……風紀委員会へ、敵に動きあり。生徒会は大量に現れた下級の鬼と交戦中。そちらは?』


 梓の『口伝千里』による通信だ。

 声の調子でも分かるが、遠くの方から伝わってくる戦闘の余波や、赤い閃きが軌跡を描く光景には余裕すら窺える。


「ちょうど反対側でも騒ぎが起きているな。どうやらこちらの鬼には質も量も注ぎ込んでいるらしい。突破力がまるで違う」


 生徒会が殲滅戦を繰り広げる場所とは打って変わって、派手な爆発や閃光が飛び交っている。

 他に炎の柱や氷結の霧など、どれがどちらの攻撃によるものかは分からないが、少なくとも徐々に退魔師側の戦線が押し込まれているように見えた。


「では仕事をしましょう。僕は戦線を支えてきます」


 言うが早いか公浩は駆け出し、木々の合間を縫うように丘を下って行った。

 その傾斜は退魔師の技能を持ってしてもキツく足場も最悪なのだが、そんな事は微塵も感じさせない軽やかな動きだ。二郎はそれを見て感嘆の息を漏らす。


「義経の逆落としってやつですかー、流石のイケメン補正ですね。それでは僕も続きます。僕の背中は貧弱なので、特に注意して守ってくださいよ?」


 二郎も公浩ほどではないが安定した体捌きで坂を下って行く。

 縁は愉快そうに笑いながら見送った。



           ★



 戦況は退魔師側にとって芳しくない様相を呈している。だがそこは現職にして最前線で働く退魔師たち。“鬼”が振るう暴威を受けても、未だに死傷者が出ていないのは経験の成せる業だろう。

 とは言え、味方が早々に戦闘不能になっていく様はどうにも良くない。


 梓によると、小規模な戦闘が各地点でも起きているとのこと。恐らく陽動、撹乱の意図がある。未完成の拠点にこれだけの作戦が取れる余剰戦力があるとは、退魔師側も想定外だった。

 加えて最も激戦となっている箇所では、突破力に優れた“鬼”によって溶けるように人員が削られている。

 その一番の元凶たる女の荒々しい声が一帯にこだましていた。



「おらおらぁああ!! 数だけ揃えても所詮はこんなもんかあ!!」



 身の丈を越える分厚い大剣を振り回すのは獣のごとき気迫を放つ女。上半身はビキニを彷彿とさせる薄着、短パンにパレオらしき布を巻き、健康的な肉体美を披露している。

 かと思えば、その姿からは想像も出来ない大剣の一振りは小型の竜巻を起こし、辺りの木々と退魔師たちを根こそぎ薙ぎ払っていた。


 退魔師たちが組む隊形はシンプルだ。前衛で攻撃を受け止める者と、後衛から範囲の広い顕術による飽和攻撃を仕掛ける者とに別れている。

 ところが、そもそも前衛の維持が出来ていない。

 大剣の間合いに入った端から蹴散らされ、間合いの外にいても余波に吹き飛ばされるのだ。

 現状、その理不尽を押し止める事の可能な人間は皆無だった。


「ペースが遅いぞ鉄火(てっか)。さっさと包囲を突破しないと本命の戦力が来てしまう」


 大剣を振り回す女の後ろには四人の男女が追従している。

 前を行く大剣の女に、三人いる男のうち一人が文句を飛ばした。


「だったら手伝ってくれてもいいんだぜ? ま、こう見通しが悪くちゃ奇襲を警戒しちまうよな。相変わらず大将には過保護だよな扇は」


 大剣の女……鉄火(てっか)は隠れられる場所を潰すためにあえて広範囲を巻き込みつつ進んでいた。

 三人の男は一人の護衛に専念しており、戦闘には必要になるまで加わらない。守られている巫女装束の女は猫口を突きだして、やや困り顔だ。


「鉄火ー、無理はするにゃよー。扇が心配性なのは今に始まった事じゃないにゃ。こっちは気にせず、思い切りやるのにゃ」


 にゃ……その語尾に相応しく、鉄火に声をかけた巫女装束の女には作り物ではない猫耳と、細くてユラユラ波打つ尻尾が付いている。言動から一切の危機感を感じさせないこの女こそ、“百鬼大蛇”の頭目……“龍首”こと、咒水(しゅすい) 虎子。

 見た目は辛うじて成人に見えるかどうか。声と口調を合わせると子供がふざけてるようにしか見えないが、これでも歴とした特一級の“鬼”だ。それも、人間からすれば途方もない年月を生きた古株であった。


「そうするぜ大将………と、ちょいと遅かったみたいだぜ? 厄介そうなのが出てきやがった」


 奇襲を警戒しながら進む一行の正面に、斜面から人影が飛び出して立ち塞がる。白を基調にした制服らしきものを着用している童顔寄りの少年だ。

 爽やかで人当たりの良さそうな笑みは、注視してみると胡散臭さが滲み出ていた。


「通行止めです。通行料は龍の首となっています」


 不敵な物言いは余裕の表れなのだろう。一見すると無防備な立ち姿だが、見れば見るほど隙らしい隙が無い。少年の只者ではない空気がひしひしと伝わってくるようだ。


「――――っとと。黒沼君、よくこんなに速く降りられたね」


 するとそこに、もう一人の学生服の少年が軽やかに降り立つ。

 並べてみると何処となくキャラが被る二人なだけに、不穏な気配も倍増だ。


「ちなみになんだけど、僕は君ほど勇敢には戦えないよ? 戦場で僕がどれほど役に立てるか不安なんだけど」


「背中の心配はいらないから、そうだなぁ………松平君は目の前のワイルドなお姉さんを抑えてくれれば、後は僕がなんとかして見せよう」


「えー………僕パワー系の相手は苦手なんだけどなぁ」


 文句を垂れつつ、二郎は眼鏡をケースにしまう。掴み所のない二人組は、既に臨戦態勢に入っているようだ。

 後から来た少年が飄々とした態度を見せつけているのは、一種の心理戦、はったりの類いだろう。

 だが最初に現れた少年……こちらは評価が下し難い。自信過剰で傲慢なナルシストでもなければ、相当に腕が立つと思われた。


 鉄火や、その後ろの四人も迂闊に斬り込もうとはしない。持久戦は避けたい筈の“百鬼大蛇”に、まだ焦りが見えないのを確認した公浩は鉄火の後ろへと声をかける。


「あなたが“龍首”さんですか? 猫耳に巫女とは、属性盛ってますねぇ………その筋の人たちに売り飛ばしたら、涎を垂らして可愛がってくれそうです」


 ブルリッ


 属性盛り合わせの敵の首魁は、背中に氷を這わせたような悪寒で身体を震わせた。

 その瞳には微かな怯えの色が浮かんでいる。


「こ、こっちを見る目がドSにゃ……トラをどうしようと言うのにゃ」


 鉄火が扇と呼んだ男の背中に隠れる咒水虎子。小刻みに震えて身を隠す姿は逆に嗜虐心を煽っていると気付かずに。

 二郎も隣でグッと親指を立てている。


「ふむ……では手始めに、裸に剥いて吊るしましょうか。どう思う、松平君」


「手足を拘束して広場に設置してみるのも良いんじゃないかな」


「なるほど、そして一晩中ヒドイ目に………」


 狂気を孕んだ二対の視線。

 爽やかな笑顔に隠しているところが、余計に不気味だ。それを向けられている虎子はというと、冗談抜きに恐ろしかった。


 配下の三人が虎子を庇い、横並びに前へ出る。三人の内二人は虎子に合わせた宮司の衣装を身に纏っているが、無表情で機械的な護衛をこなす男は街中でありふれた服装だ。


 公浩が最後の男を見て眼を細める。

 狙いを定めたと悟らせないよう、なに食わぬ顔で会話を続けた。


「おとなしく投降するなら、僕の愛玩動物として手元に置いてあげてもいいですよ?」


「その時は僕にも貸してくれるかい? 猫属性って、イジメると愉しそうだしさ」


 扇の背後から敵意を剥き出しにした猫耳がピョコンと顔を出した。それに続いて不快感に顰められた眉、ジト目が少年たちを睨み据える。


「や、ヤバイやつらにゃ………喜助、双角! 懲らしめてやるにゃ!」


 助さんに角さん………

 宮司の男は喜助、カジュアルな服の男は双角と言うらしい。

 そして双角……公浩が一瞬だけ鋭い視線を送った男が、一本の巻物を広げた。

 学園の訓練室と同じ原理で作られている術式で、退魔師が収納などで多用する物だ。それ自体は珍しくはないが、問題なのは出てきた代物……細長い棒状のそれは、風紀委員会でも問題として取り上げられた術装だった。


 目にした者の認識を歪めて形状を把握させない術である『我汝不認(われなんじをみとめず)』が施された武器、『心臓刺穿道進(しんぞううがつみちをすすみて)』だ。


「……一度聞いて見たかったのですが、“鬼”の中には趣向として食人を行う者がいますよね? なのに貴方は人を食らわず、ただ殺すだけ。それは何か理由があるのですか? “急所斬り(クリティカルブレード)”さん」


 “急所斬り”は人間を殺すが、必要に駆られて喰うわけでも趣向のために喰うわけでもない。協会の方で把握してないものはその限りではないが、少なくとも『心臓刺穿道進』で殺害された損傷の少ない死体が相当数確認されている。

 そんな客観的に不可解な理由を訊ねたのだが………


「この剣が定期的に血を吸わせろと言っている………ような気がする」


「…………それだけですか?」


「それだけだ」


 双角は淡々と答えた。

 控えめに言っても、不愉快を通り越して目眩を起こしそうな言い分だ。公浩はそれに対して一言、「そうですか」と返す。

 そして、もういいやとばかりに興味を失った。


「あなたが先日に殺したOLの女性、覚えていますか?」


「忘れた」


「彼女はそれ(・・)で貫かれ、多大な痛みを受けながらも死の“呪い”では死にませんでした」


「は? だから?」


 双角は面倒くさそうに、ただ吐き捨てるように言うだけだ。自分が吐き出している言葉が誰の(・・)不興を買っているのか、まだ気づいていなかった。


「彼女、婚約してらしたそうです。ただ一心に『生きたい』と、その想いだけで“呪い”を免れたのだと思います。彼女は痛みに負けず、最後の瞬間まで生きる事を諦めなかったんですよ」


「無駄な抵抗だったようだがな」


 最後に公浩は静かに、そして強く言葉を投げ、一歩だけ歩み寄る。

 そこに含まれた殺気を、感じ取らせる間も与えずに。


「あなたに彼女ほどの強さがあるか、見てあげましょう」


 ザシュッ


 戦闘で騒がしい一帯の中にあって、何か(・・)が肉を貫く音がやけにハッキリと耳に届けられる。

 双角は最後に殺した女と同じ箇所に、同じ得物によって傷を受け、呆気なく命を手放した。調伏の証に、風に虚しく巻かれる塵と成り果てて。


 その一瞬を、誰もが驚愕に目を見開いて見詰めていた。双角の背後に立った公浩が、後ろ手に名状しがたい武器を持っている姿を。

 ただし、その瞬間の公浩を目で追えた者がいた。止める事も出来たのに、素知らぬ顔で部下が消されるのを容認した“龍首”、咒水虎子だ。


「なぜ、止めなかったのですか?」


「実を言うとトラ、そいつ嫌いだったのにゃ。始末してくれるなら、好都合かにゃーって」


「気が合いそうですね。愛玩動物……なってみます?」


「お断り、にゃ!」


 直後、公浩が立っていた場所に大質量の衝撃が落ちた。

 土は舞い上がり、辺りの視界がかなり悪い。衝撃を周囲に伝える顕術……『剛波』によって土煙を払うと、直前まで立っていた場所にスプーンでくりぬいたような大穴が出現していた。

 頭上に視線を送って見つけたのは、虚空に穿たれている数メートル程の黒い(あな)だ。そこから何かをしたのだと推測できる。


「喜助、扇。さっきのは縮地と幻術を組み合わせた手妻(てづま)みたいなものにゃ。無刀取りの手際は見事にゃけど、種が割れればそれほど恐いもんでもないにゃよ」


「ご助言、有り難く」


「…………」


 扇は忠誠心の強さが窺える堅い口調で、主のために命を捨てることも厭わない雰囲気である。いよいよの場面で底力を発揮するタイプだ。

 喜助という宮司は無口なのか、虎子の言うことに黙って頷いた。大きな感情の動きは無いが、逆に何を考えているのか読み難い。

 先程の“急所斬り”との相違点である服装……その統一感を見るに、こちらの二人は本命の部下なのだろうか?


「鉄火ー! もう一人を引き離して他所で殺りあうにゃ。ここでやるとお互い巻き添えにゃ」


「あいよ大将! さーて、そっちの坊やはあたいと来てもらおうか」


「構いませんが………お手柔らかに頼みます」


 そうして鉄火と二郎は、まだ更地になっていない木々の中へと消えていく。

 そんな如何にもなシチュエーション作りを行う“龍首”に、公浩は本当に気が合うのではと感じていた。


「そういえば名前を聞いてなかったにゃ。名乗るがよいにゃ」


「黒沼公浩と言います。猫を飼いたい衝動に駆られる学生です」


「トラは咒水虎子にゃ。人間のペットも悪くないかと思い始めたとこにゃよ」


 これから殺し合うとは思えない軽口。

 遠くで聞こえる爆発音や鬼と人間の悲鳴。それらを全く気に留めず、不敵な笑みを浮かべ合う二人。

 この状況での出会いを大いに楽しみながら、その戦いは始まった。





『改稿しましたにゃ』

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