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神玉戦記  作者: ななや
1.始まりの契約編
8/21

第8話:契約の祭壇

今、描写力が試されてます(´・ω・`)


 暗く広い通路の先、白い明かりが眩しく感じられるその先に、フェンは足を踏み込んだ。

 そこは、自然にできた地下の広間のようだった。

 広さは、砦で一番広い地下講堂くらいあるだろうか。剥き出しの土の地面に壁、天井はとても高く、白い石柱(つらら)が大小無数に広がっている。白い光の光源は、まるで天井全体が光っているかのようで、白い石柱がその光で、シャンデリアのようにキラキラと輝いていた。

 フェンが立つ、広場の大きな出入り口の両側から、それまでフェンが歩いてきた通路と同じ円柱が、まるで 回廊のように、壁に沿ってそれぞれ弧を描く。それは、奥の壁の手前で終わっていた。


 立ち尽くすフェンの前には、階段があった。

 通路と同じ金属質の光沢をもった黒灰色の石の階段だ。二階位の高さがあるだろうか。

 真っ直ぐに伸びる階段を、フェンは、おそるおそる昇った。

 昇りきると、そこは、まるでなにかの祭壇のような場所だった。高台になっているそこは、教室ほどの広さだろうか。

 祭壇らしき長方形に横たわる台には、元は鮮やかな深紅と金の縁飾りだったのだろう、色褪せた布が掛けられている以外、何もない。

 左右の両端には、高さ3mはあるだろう、大きな棺のような形の板ーーー柱のようなものがあった。左に4つ、右に3つ。床や祭壇とは対照的に、真っ白だ。

 フェンは、祭壇の前まで歩き寄った。

 両側の白いそれらに、フェンの姿が映る。

 よく見ると、それらは真っ白ではなく、上質の鏡のように磨き上げられているようだった。


 祭壇の奥には、この広場の剥き出しの壁が、絶壁のように迫っていた。

 フェンが立つ位置からやや見上げる形で、その壁一面が削られ整えられ、レリーフが彫られていた。 それは、フェンから見て、ちょうど中央にあたる位置に、フェンの頭くらいありそうな、大きな白く丸い石が嵌め込まれ、その周りに二重の円が彫られていた。

 それを中心に、線が、太陽の輝きのように放射状に描かれ、その中の一番太い7つの線が、外円から飛び出すように長く描かれている。

 その7つの線の先に、それぞれ石が嵌め込まれていた。中央の白い石と違い、小さな玉のようだ。

 それぞれの玉の周りには、装飾文字と動物らしい彫刻にびっしりと埋め尽くされていた。文字は、不思議な形で、フェンには読めなかった。古代の文字なのかもしれない。

 動物も掠れているのか、どんな動物か判別できない。何となくわかったのは、熊と蛇と鳥らしきものに蜘蛛だった。


 「………鳥はともかく、蜘蛛や蛇って動物だったけ?違うよね?」


 他の見慣れない生き物を合わせると、全部で8種類いた。

 フェンは、首を傾げる。

 よく見ると、それぞれの玉には、色があるようだ。

 赤・橙・黄・緑・青・藍・紫……。その色の配色に、フェンは、見覚えがあった。

 

 「……七色…、虹の配色だ」


 時計の0時の位置に赤。ぐるりと、時計回りに橙、黄、緑と配色されているようだ。

 そのうちの、橙と藍の部分の石が無くなっていることに、フェンは気づいた。

 外されたように窪みがある。

 正面から見て、やや見上げる形にあるのだから、実際はかなり高い位置にあるのだろうレリーフの玉を、わざわざ取った人物がいたことに、フェンは驚く。


 「〈発掘屋〉かなぁ?」


 ここは“古代遺跡”だから、遺跡で一攫千金を狙う〈発掘屋〉なら、遣りかねない。

“宝”の為なら如何なる努力も労力も、彼らは惜しまないのだ。


 「……それか、これが重要なものだとか?」


 フェンは、この遺跡が、砦の、軍の管轄下にあるのだと思い出し、考え込む。

 軍管轄の遺跡に、〈発掘屋〉が入ることはない。 許可が出れば別だが、発掘したところで全部没収されるので旨味が無いのだ。

 黙って忍び込んだ場合は、命が危うい。

 プロの〈発掘屋〉なら、そこら辺はよく分かっているはずだ。

 フェンは、少し考えたが、結局、分からなかったので諦めた。

 まぁ、ここの玉が無いからといって、フェンに影響するわけではないのだ。考えても仕方がない。


 フェンは、レリーフを見上げた。

 そして、他の玉もそれぞれ反応が違うことに気づいた。

 失われた橙の下、黄色の玉は、ひびが入り、白く色を失っていた。いや、うっすらと色が残っているが、今にも消えそうに淡く弱い。

 それとは対照的に、赤・青・緑の宝玉は、内側から光るように淡く輝き、鮮やかな色を放っている。

 同じく失われた藍の玉の上、赤の下、最後の1つである紫は、石が嵌っているものの壁に同化するように色が黒ずんでいた。

 そこまでみて、フェンは、紫の玉の傍にのみ、生き物が2体、描かれていることに気づく。


 「あ、だから、全部で8つ、いるんだ」


 フェンは、納得した。

 他は1体ずつなのに、紫の玉だけ2体いるのは疑問だったが、フェンに分かるわけがない。

 そもそもこの場所自体、謎なのだ。

 ここは、先ほどまでいた廃墟の街の中なのだろうか?どうやってここから出ればいいのかと、フェンは、溜め息を吐く。

 正直、こんな場所に一人で居るのは、心細い。


 「多分、遺跡の中ではあると思うんだ」


 独り言のように、いちいち声に出してしまうのは、1人が心細いのと不安があるせいだ。

 フェンは、優秀な“魔術師“だ。

 だが、同時にただの“子供”でしかない。

 自分の力量は分かっている。いくら中級までの全ての魔術師が扱えても、専門の知識があっても、〈候補生〉として、軍の訓練で鍛えられ、多少の戦闘を対決していても、現状を打破できる術がない。

 

 「“魔術”は、“魔法“の足元にも及ばない」


 魔法とは、奇跡の技だ。

 ありとあらゆる法則を越え、体現される“奇跡”。

 “魔術”には、法則がある。

 魔法の劣化版と揶揄されるほどに差は大きい。現に、古代に汎用されていた“型”に嵌まった魔法を元に、言葉や文字に魔力を込めることで発動する“魔術”が生まれたと言われている。

 開発された“言葉”、呪文の構成、術の展開図。

 広く普及するために整えられたシステムのもとに、“魔術”は存在する。

 

 「そうか、……ここは、“魔法”の場なんだ」


 荘厳な空気が、まるで神殿のようだと、フェンは感じた。

 体に馴染むような濃密な空気。

 静寂にピンと張った清浄で緊張感のある空間。

 先ほどまでの積み重なった疲労や身体の重さが、いつの間にか無くなっている。連続して使った魔術で失っていた魔力も回復していた。

 神殿らしいこの場所の効果だと思っていたが、違う。空間全体に満ち溢れる濃密で純度の高い魔力。

 普通の〈上級魔術師〉でも、魔力酔いを起こしてしまいそうな、その濃度の高さだが、フェンは平気だった。


 フェンは、魔力が桁外れに大きいが、その質も非常に良いのだ。純度や質が良ければ、少ない魔力で術が発動できる。

 普通の魔術師が、戦場で、魔術を連続発動させ戦えば、数時間で魔力切れを起こすが、フェンの魔力の大きさや質なら、数日は平気で戦える。

 軍が、フェンの才能をもっと広く見ていれば、その有効性の高さに気づいただろう。

 当時の軍は、“特殊“な魔術をもつ魔術師に固執していた。数は少ないが、“魔法“のように魔術の法則に当てはまらない固有(オリジナル)能力(まじゅつ)を持つ者がいるのだ。

 軍は、フェンの魔力の質と大きさに、それを求めたばかりに、フェンの才能を見逃した。

 軍にとっては、惜しい限りだろう。

 

 「はぁ、どうにかして、ここから出られないかなぁ?」


 フェンは、溜め息を吐いた。

 コカトリスがどうなったか分からないが、とりあえず、ここを出て、イルセと合流したい。

 ゼヤンやシーダが、どうなったかも気になる。

 祭壇の台を背に座り込んだフェンは、膝に顔をうずめた。

 身体の疲労は回復しても、精神的な疲労は別だ。


 「なんか、濃い1日だったな……」


 普段の〈候補生〉としての日常も、十分濃いが、この1日の比ではない。

 今期の〈候補生〉ーーといっても、上級生は、選抜試験などで入れ替わりが激しいのだがーーは、何故か、皆仲がよく、ノリが異常に良いのだ。

 優秀なエリートのはずなのに、お馬鹿なノリで周囲を巻き込み、最終的には叱られる。だが、そんなふざけたノリでも、きちんと結果は出す辺り、例年以上に優秀だから手に負えない。

 まぁ、真面目にやる(押さえるべき)部分はきちんとやるので、“問題児”扱いはされないのだが。


 「帰りたいな」


 フェンにとって、“普通”でいられる日常。

 もちろん、分かっている。今の“日常”は、変わっていく。ずっと同じままでは、いられない。

 フェンだって、近い未来には〈下級魔術師〉になるし、今のクラスメイトたちも、それぞれの道に進んでいくだろう。現に、シーダは、もう〈候補生〉ではない。


 (分かってる。……分かっているんだ)


 “彼ら”の言葉の意味。

 “彼女”の言葉の意味。

 

 もう、あの頃のように幼くはない。周りも“子供”ではない。

 フェンが、本来の才能を発揮したとしても、あの頃のような拒絶ばかりではないことは、フェンも理解している。

 それでも怖いのだ。

 ほんのわずかでも、“拒絶”され、“異端視”される可能性があるかもしれない恐怖に、フェンは怯えている。

 周りと“同じ”であること、この数年の“普通”でぬるま湯のような“日常”の中に微睡んでいることが、見なければならない“現実”から目を背けていることと変わらないのだと、本当は、フェンも理解しているのだ。


 「……リルネ。僕は、臆病なんだ…」


 “日常”を護りたいと思う。

 知っている人が、もう居なくなってほしくないと思う。

 イオやセルダが、戦場に行き、大怪我を追って帰ってきたとき、大切な人を失うかもしれないと、怖かったのを覚えている。

 それ以上に、普段は気丈なイオの母親が、こっそり泣いているのを見て、ショックだった。あんな彼女をもう見たくはなかった。


 「戦争がなくなれば、皆、笑って過ごせるのかな………?」


 プラウティスは、戦争で生まれた町だ。

 戦争によって生まれる需要が、プラウティスを発展的させる。人が集まるのもそうだ。

 イオが戦いで功績を上げるのも、戦争があるからだ。イオの母親は、町で一番の娼館を切り盛りしてるが、戦場で闘う男たちが一時の憩いの場としてやってくるから、繁盛している。

 フェンの母親のメーラの調合師の仕事も、戦場に出る兵士や砦からの依頼で生計が成り立っていると言ってもいい。

 戦争があるのが当たり前だったから、フェンには、戦争のない生活が分からない。

 戦いにでれば、誰がが死ぬ。それは、辛いことだし、嫌なことだ。

 だが、戦いがない“平和“な生活なんて、フェンには想像がつかないのだ。


 (多分、“彼女”は、……リルネは知ってたんだろうな)


 “戦争”を終わらせたいと、彼女(リルネ)は言った。

 フェンは、“日常”を護りたい、皆を護りたいとは思うが、この“戦争”が良いのか悪いのか、判断がつかない。

 だけど、彼女のように、強い意志で何かをやり遂げようとする姿は、正直、憧れるし、羨ましかった。


 『君は、まだ、“世界”を知らないのだな』

 「?!」


 突然、背後から降ってきた声に、フェンは驚愕した。

 反射的に振り返りながら、立ち上がる。

 数歩、後退して、祭壇を見ると、その台の上に男が1人、立っていた。

 男は、緩くウェーブがかった、長めの白っぽい金髪を前髪だけバンドで上げていた。

 あの〈魔法師〉の長身男(アルトリウス)ほどではないが、スラリと背が高い。アルトリウスが、“ひょろり”に対して、男は背筋が伸びて、“スラリ”としていた。

 細く痩せた体格で、顔立ちは整っている。肌は、青白いほどに白かった。

 年は、30手前位だろうか。

 切れ長の深い青の目は、冷ややかにフェンを見下ろしている。

 全体的には、研究熱心な学者のような、冷たく、知的で神経質そうな印象だ。

 男は、軍の制服に似た詰め襟の白い上下を着て、深い青色の外套(マント)を羽織っていた。

 どこかで見覚えのある服装だ。


 『怯えなくていい。残念ながら、形どれる姿がコレ(・・)しかなくてね。

 見た目は悪くないんだが、子供には好かれない男だから、君が怖がるのも無理はない』


 まるで、他人事のように、やれやれと男は、首を振り、肩を竦める。

 フェンは、そんな男に警戒する。

 男は、そんなフェンを見ても、特に気にせずに微笑んだ。


 『私は、この空間に宿る意志のようなもの。“契約”の適合者への説明役(ガイド)といったところか。

 この姿は、仮のものだ。

 人は、同じ“人”の姿の方が安心するからね。でも、まぁ、今回は、いささか適任な姿じゃないのは、謝罪しよう』

 「………は、はぁ……」


 うーん、私も好みではないんだよねと、自分の姿を見下ろす男。

 どうやら見た目よりも、話しやすそうだ。

 敵か、味方か。

 いまいち掴めない相手に、フェンは困惑した。

 

 男は、立ち尽くすフェンを見た。

 そして、祭壇の上にたったまま、男は、胸に手を当て、フェンに向かって優雅に頭を下げる。

 フェンは、唖然とそれを見つめた。


 男の、低い淡々とした声が、広間に響く。


 『とりあえずは、〈契約の祭壇〉へようこそ。

 忘れ去られた古の神々に、その身を捧げる哀れな“生贄”(きゃくじん)よ………!!』


難しいよ!描写するの……(´・ω・`)


主人公1人だと、話が進まない事実(゜◇゜)ガーン

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