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神玉戦記  作者: ななや
1.始まりの契約編
6/21

第6話:コカトリス襲来

一方その頃……的に?(´・ω・`)


 「あ~、随分派手にやってるな~」


 “古代遺跡”の地下3階層に広がる廃墟の街。

 その中心にある広場の北側にある高い塔と小さな神殿。塔の天辺の屋根に腰を下ろした、長身の〈魔法師〉は、街の南西方向に上がった火柱と粉塵の煙に、退屈そうに呟いた。


 「アルトリウス、勝敗が決したようだ。行ってきてくれ」

 「え~、なんでぇ~?」


 フワフワと彼のそばに浮かぶ水晶から、ウェルテイトの声が響く。その言葉に、アルトリウスは、声を上げた。


 「〈結界型〉と〈防御型〉の“二つ持ち”で、底辺とはいえ〈下級魔術師〉を下した〈候補生〉なんて逸材をいつまでも〈候補生〉のままにしとくわけにはいかないだろう?

 それに、“勝者”には、きちんとご褒美が必要だ」

 「“ご褒美”ねぇ~……?」


 アルトリウスは、立ち上がるとそのまま、塔から飛んだ。


 「で、あと何人残ってるわけ?」


 屋根伝いに歩くアルトリウス。後から一緒についてくる水晶に、声をかける。


 「残り3名だな。1名は、お前が今から治療して、確定だ。脱落した(死んだ)奴らの中で、〈型〉が判明したのは、5名。こいつらは、“砦”での勝ち抜き模擬戦(ほしゅう)で、2名が〈下級魔術師〉に上がれる予定だ」

 「ああ、一ヶ月前(この間)基地襲撃戦(たたかい)で、あそこで研修中だった〈下級魔術師(しんじん)〉と〈中級魔術師(したっぱ)〉がだいぶ減ったもんな~。

 前の選抜試験も質が悪かったし、補充が足りんってわけか~」

 「〈型〉が分からない〈候補生〉は、全体的にポテンシャルが高いからな。〈型〉さえわかれば、〈候補生〉に留めておくのは惜しい」

 「次の選抜試験まで待てないって~?」


 ぴょんぴょんと身軽に屋根を跳んで移動し、未だに粉塵が舞う、破壊された街の一角に辿り着く。軒並み建物が破壊され、残骸以外は更地と化した場所に、アルトリウスは降り立つ。

 そして、まっすぐに目標に歩み寄る。


 地面に大の字に倒れたままの満身創痍な少年は、目を閉じていた。出血が止まっていない箇所が、地面に血溜まりを作っている。

 

 「やほ~、生きてるか~?」


 覗き込むアルトリウス。

 だが、少年は反応しない。彼は、少年の傍にしゃがみ込んだ。


 「こんな所で寝たら、モンスターに襲われるぞ~?風邪引くぞ~?おーい…………」


 つんつんと、少年の頬をつつく。


 「………………煩せぇ!なんのようだ?」

 「あ、意識あったんだ?」


 煩そうに不機嫌な掠れ声が上がる。

 薄く目を開き、顔をしかめる少年に、アルトリウスは、笑みを浮かべた。


 「君、合格だって!オレは、治療と回収に来たのさ~!良かったねぇ、〈下級魔術師〉になれるよ?」

 「………………なんだよ、それ」


 なんとも言えない表情で、脱力げに呟く少年。

 アルトリウスは、構わずに少年に、治癒魔法をかける。傷は癒すが、失った血と疲労は回復しない術だ。終えると、ぐったりしたままの少年を、肩に担ぎ上げた。


 「さて、帰りますか!でも、ウェルが煩いから、遠回りでゆっくり帰ろ~~」

 「おい、聞こえてるぞ?」


 アルトリウスは、来たときと同じ様に、近場の建物の屋根に飛び上がった。そして、肩の上で揺れに苦痛の唸り声を上げる少年を無視して、屋根の上を鼻歌交じりにぴょんぴょんと跳ぶように移動し始めた。


* * * * *


 変わり映えのしない廃墟の街の通りを歩く、フェンとイルセは、自分たちが逃げてきた方向で巨大な火柱が上がるのを見た。


 「あんな火力、中級魔術じゃないか!」

 「シーダの術だね」


 おもわず声をあげる、茶髪緑目の眼鏡少年ーーイルセ。フェンは、冷静に呟いた。

 

 「ゼヤンは、〈防御型〉だから、大丈夫。それより、問題は僕たちだよ」

 「へ?俺たち?」


 イルセが、きょとんと、フェンを見る。


 「イルセ、現在地(ここ)、どこだが分かる?」

 「……………っ!ま、まさか………」


 真剣な眼差しでイルセに尋ねるフェン。イルセは、ハッとある事実に気づいた。

 どこを歩いても変わらない廃墟の建物。目立つような特徴あるものも、ほとんどない。


 「つまり…………」と、イルセは、ゴクンとのどを鳴らし、見つめ合ったフェンと互いに頷き合う。


 「「迷子か(じゃん)……っ?!」」


 異口同音に叫び、頭を抱えた。

 そう、フェンもイルセも、今、自分がどこにいるか、わからなくなっていたのだ。

 

 「マジかよ?!そーいや、逃げるのに必死で、周り見てなかった!」

 「そういえば、なんでこんな必死に逃げてたんだろ?……あ、イルセ、さっき、何か言いかけてたよね?ヤバいとかなんとか?」

 「あぁっっ?!そうだっっ!!!」


 首を傾げたフェンが訊くと、イルセは、ばっと顔を上げで、周囲をキョロキョロし始める。


 「どうしたの?」


 イルセの怪しい動きに、フェンが怪訝げな声を掛ける。だが、イルセは、気にせずに周囲を確認して回ると、なんの気配も姿も無いことに安堵の息を吐く。


 「良かった!無事に巻けたのかも…………」


 冷や汗を拭うイルセは、不思議そうな顔のフェンを見て、苦笑を浮かべる。


 「コカトリスが出たんだよ。さっき言いかけてたのはさ、シーダが攻撃魔術で、ヨウを殺したときに、ヨウの血が傍の石像にかかってさ。

 そしたら、その像がみるみる石化が解けたようになって、出てきたのが、コカトリスだったんだ!」

 「石像が………。そういえば、トリウさんが、封印されてるモンスターがいるっていってたね」

 「そうだっけ?

 シーダは、立ち去った後で気づかなかったみたいだけど、俺は見つかっちゃって、慌てて逃げたんだ。まだ、石化が完全に解けてなかったんで、なんとか逃げ切れたけど、あれは、普通のコカトリスじゃない。かなり、ヤバいやつだ!」


 力説するイルセ。

 だが、フェンは、首を傾げる。


 「コカトリスって、なに?」


 フェンの一言に、イルセが、ガクッと転ける。脱力したように、「はぁ~?!」と顔を上げて、フェンを見たイルセに、フェンは困った表情をした。

 その様子に、イルセは、思いつく。


 「ひょっとして、フェンは、プラウティス出身か?この辺りは、戦場荒野だから、魔獣系のモンスターは出ないだったな。悪い」

 「イルセも、“外”出身なんだね」

 「俺は、東のレウティ伯爵領だよ。あそこは、迷宮(ダンジョン)がたくさんあるから、冒険者も活発で、いろいろ栄えてる場所なんだ。親父が、〈発掘屋〉でね。遺跡求めて、こんな戦場(とこ)まで辿り着いたってわけさ。でも、後悔はしてない。外じゃ、魔術師になるのに、大金がいるし十年以上掛かる。けど、ここなら才能があれば、どんどん上に上がれるし、魔術を役立てれる。それで死んでも後悔はないさ!」

 「………そっか」


 フェンは、凄いなと、イルセが眩しく感じられた。ただ、プラウティスに生まれて、魔術の才能かまあって、流されるだけの自分と違い、イルセは自分で考えて、自分の意志でここにいるのだ。


 (ゼヤンだって、シーダだって、そうだ。それに、イオだって、自分で決めて歩いている)


 じゃあ、特に目的も意志もない自分はどうなんだろう?


 フェンは、自分の足元がぐらつきそうになる感覚に、グッと手を握りしめた。

 ふと、幼い日の“彼ら”の言葉が蘇る。


 『もっと必死になれよ?!足掻けよ?!そうやって、自分は関係ありませんって顔で、全部流してたら、お前、大切なもんを失うぞ?』

 『貪欲になれ。ここはまだ“底辺”だぞ?俺たちなら、もっと高見を目指せる。力を得れる。力の無い奴がなにいっても負け犬の遠吠えだ。護りたいなら、見てほしいなら、もっと貪欲に力を求めて上に駆け上がれ!!』


 そう言って、実際に駆け上がっていった“彼ら”。

 残された“彼女”と自分(フェン)

 

 『フェン。悲しいね?………いつか、こんな戦争、終わるといいのに………』

 『…………は、戦場を終わらせる為に、力が欲しいの?』

 『そうよ。手遅れになる前(・・・・・・・)に止めたいの。たとえ、私の全てを投げ打っても、私は“力”が欲しいわ』


 哀しさと揺るぎない決意を秘めた笑みを浮かべた彼女は、さきに〈候補生〉に上がり、いつの間にか、姿を消していた。

 残されたのは、空虚なままのフェンのみ。


 (僕は…………………)


 思い知らされる。


 (僕は、ただ、“日常”を壊したくないんだ)


 イオがいて、セルダがいて、家族が知り合いがいる、なんの変哲もない日常。

 それでも、少しずつ、失われてしまうものがある。それが、悲しい。それが怖い。


 「フェン?大丈夫か?」


 目の前にあるイルセの顔に、フェンははっと我に返った。

 時々、自分の思いに捕らわれ、深く考え込んでしまうのは、フェンの悪い癖だ。

 

 「本当に大丈夫か?かなり疲れてるだろ?もう、夜もかなり遅いし、フェンの年だと眠いんじゃないか?」

 「う、ううん。大丈夫だよ。ちょっとぼーとしてただけ………」

 「って、それ、疲れてるんじゃん!どこかで、休もう!」


 そう言って、手を引こうとするイルセを、フェンは、押し留めた。

 こちらを狙う鋭い威圧感が降り注ぐ。

 イルセは気づいていないが、殺意ではない。純粋に獲物を狙う捕食者の気配だ。


 「イルセ。コカトリスって、どういうモンスター?」


 フェンは、イルセに尋ねた。


 「え?えーとな、鶏だよ。デカい鶏!ただ、蛇の尾を持つ。尾っていっても、蛇な。つまり、頭が鶏と蛇、2つあるモンスターなんだよ。鶏の癖に飛ぶし、動きが早い。鳥爪は鋭くて、毒がある。蛇も毒がある。モンスターの中じゃ、それほどじゃないって言われてるけど、厄介なモンスターだよ」

 「それって、アレ?」


 フェンが、近場の建物を指差す。

 二階建てだったのだろう建物の屋根に、体長2mはあろう巨大な鶏が立っていた。

 赤い鶏冠、顔は白いが体は黒い。鶏に似合わない鋭い眼孔。太い鳥足に立派な鳥爪が鋭くついている。その尾側に伸びる太く長い青い蛇が、ゆらゆらと揺れている。


 「あー、うん。あんな感じ…………」


 仰ぎ見たイルセが、ピシリと固まる。

 ギギギ…………と、顔をフェンに向けるイルセ。フェンは、小さな声で詠唱し、自分とイルセに、身体に張り付くような防御壁を張り巡らせる。

 

 「イルセ、俊足(スピード強化)の補助術を、僕と自分にかけれる?」

 「お、おう?」


 イルセが、慌てて術を掛ける。フェンは、その間、コカトリスに動きがないか、じっと見ていた。

 

 「ど、どうする?」

 「別々に逃げよう。僕が囮になるよ」

 「は?…………いやでも!」

 「イルセは〈補助型〉だから、戦うのは無理だよ。僕の方が、攻撃も防御も上だよ」


 フェンの言葉に、イルセは唸る。

 だが、確かにイルセではコカトリスに対抗できないのは、明白だ。

 

 「じゃ、じゃあ、コカトリスが来たら、フェンは鶏、俺は、へ、蛇の意識を注目させる。そして、それぞれ反対に逃げよう。2つ頭があるんだから、両方が別々の獲物を見たら、混乱するはずだ!」

 「そしたら、イルセの方に行く可能性もあるよ!危ないよ!」

 「だ、大丈夫!こ、コレくらいはしないと!」


 ハハハッと笑うイルセは、明らかに強がっていた。

 フェンは、イルセに気づかれないように、“事前詠唱”をする。事前に幾つかの術を発動させる為に、先に唱えて、最後の“言葉”を言わず、留めておくのだ。普通は、〈下級魔術師〉で学ぶ技だが、フェンは、〈候補生〉に入る前の“教育”で、こうした高度の技や術を学んでいた。


 「コーーッケッコーーーーッッッ!!!!」


 コカトリスの雄叫びが、響き渡る。

 大きく羽を広げて、眼下の獲物を威嚇する。


 「鳴き声は、鶏のままかよっっ?!!!」


 おもわず、イルセがツッコむ。

 フェンは、「鶏だから、当たり前じゃないの?」と、不思議そうに首を傾げた。


 バサバサッッ!!!


 屋根から飛び降りた巨鳥モンスターは、激しく羽根を動かしながら、2人に向かって落ちてくる。フェンとイルセは、それぞれ反対側に避ける。


 ドシン!!と、地面が揺れる。


 フェンの前には鶏の尾羽根。そこから、伸びる大蛇の身体が、フェンに向かって、鎌首をもたげ、「シャーーッッ!!」と、喉を震わせる。


 「ぎ、逆ぅ~~っ!?」と、イルセの叫ぶ声。


 「イルセ、逃げろっ!!!」


 フェンは叫んだ。

 同時に、2つの“言葉”を放ち、魔術を完成させて放つ。“氷の槍”と“氷の雨”を同時展開。1つはコカトリスの足元、1つは目の前の大蛇を狙ったものだ。


 「ギャッッ!!?」

 「ジャッッ!!」


 ビシビシと、コカトリスの鳥足が氷に覆われていく。大蛇に降り注ぐ氷の雨が、大蛇の頭や体に当たり、氷が広がっていく。

 その隙をついて、イルセとフェンはそれぞれ反対に走り出した。

 突然の攻撃に怒るコカトリス。鶏がイルセを追おうとし、氷に苦しむ大蛇がフェン目掛けて、身体を伸ばす。

 互いに、ビン!と引っ張り合う鶏と蛇。

 一瞬固まった両者は、「コケーーッッッ!!!」「ジャーーッッッ!!!」と、互いに睨み合い、喧嘩を始める。


 「………………あー、鳥と蛇だもんな~」


 後ろを振り返りながらも、逃げるイルセは、喧嘩を始めたコカトリスに、ちょっと呆れた声で呟いた。


 「まぁ、このまま、逃げさせて貰おう」


 イルセは、建物の角を曲がると、なるべく遠ざかろうと全力で走り出した。


コカトリスって、こんなんで良かったのかな?(´・ω・`)?

(実は、某漫画のイメージしか、作者は知らない)


鶏肉唐揚げ食べたくなるよね(´・ω・`)

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