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神玉戦記  作者: ななや
1.始まりの契約編
4/21

第4話:古代遺跡での“殺し合い”

ちょっとシリアスモード(´・ω・`)キリッ


 「なんで、なんでこんな………っ?!」


 地下に広がる古代の遺跡の廃墟の街中を、フェンは、1人走っていた。

 灯りも届かない通路の闇から駆けてくるのは、魔物だ。

 古代遺跡の石像だったものが、血を浴びて、生き返った。鶏の身体に蛇の尾を持つという〈コカトリス〉。普通の鶏とは違い、2m近い大きなモンスターは、鋭い鳥爪と尾である蛇の毒、見かけよりも素早い動きで、逃げるフェンを追ってくる。


 (逃げなきゃ……!僕が囮にならないと!)


 迫り来るモンスターの脅威に足が震える。

 フェンは、行き先もわからない道をキッと見据えて、走り出した。

 

* * * * * 


 ………“修羅場”は、それ以前から始まっていた。



 遺跡について、遺跡の施設に泊まり、一夜を明かした。

 〈魔法師〉2人の引率で、“古代遺跡”と呼ばれる地下へと足を踏み入れた。そこは、古代の街のようで、何かの施設だったのかもしれない。複数の階層に分かれれているのだと、説明された。

 初めての“遺跡”にフェンは興奮していた。

 3階層目の、住居区らしい街のような廃墟の建物が無数に配置された場所の、広場に来たとき、〈魔法師〉の長身男―――アルトリウスが、にこやかに言ったのだ。


 「さて、今から“殺し合い”をしてもらいま~~す!!」


 まるで、お昼休憩をとるかのような気楽さで、そう言った彼らに、〈候補生〉たちフェンは、唖然とした。何を言われているのか、分からなかった。


 「制限時間は、今から深夜の0時までだ。夜更かしだが、まぁ、明日は帰るだけだからな。

 自分から殺しに行くも良し、身を護る為の防御に走ってもよし。仲間(だれか)と協力してもいい。0時までに生き延びた全員が、〈下級魔術師〉に合格となる」

 「あ、シーダ下級魔術師は、死んでも死ななくても、〈型〉が判れば、そのままでぇ~、もし、生き残れば、特別報酬出るよ~ん!頑張ってね~!!」

 「それと、念のため言うが、この“遺跡”の出入り口は、我々〈魔法師〉と一緒に通らないと作動しない。この3階層は、比較的安全だが、他の階層の安全は命の保障できないので、逃げようと他の階に行かないように」

 「あとあと、“殺し合い”しないと、オレたちが狩っちゃうぞ☆あ、でも、オレたちに攻撃とかは駄目だからね!まぁ、その心意気は買うけど、瞬殺で、失格だよ~ん!!」


 淡々と説明するウェルテイトとふざけた言動で、それに追加するアルトリウス。

 じわじわと、現実が染み込んでいく。

 ごくりと、誰かが唾を呑みこんだ。

 互いが互いを見回す。その顔には、疑心暗鬼と警戒が見え隠れした。


 「あ、忘れてたわ~。あんまり派手に殺しすぎると、飛び跳ねた血で覚醒するモンスターとかも、まだ存在するから、気をつけてねぇ~。

 この階層、一応、高ランクの出没モンスターは、排除しているけどぉ~、中には封印されている奴とかいるんだよね~!」

 「……まぁ、良い経験だと思って、おもいっきりいくことだ」


 物騒な注意を促すアルトリウス。その横で、うんうんと頷くウェルテイト。

 その様子に、ドン引く〈候補生〉たち。

 

 「いや、良い経験って……」

 「死んだら、終わりだろ?なんであんなに呑気なんだ?」

 「……待てよ?確か、“噂”で……」


 何かを思い出したように、1人が呟く。

 だが、次の瞬間、〈候補生〉全員の足元が淡く輝きだした。

 はっと、床を見ると、描かれた魔法陣の中に、〈魔法師〉の2人を覗く全員がいることに気付く。


 「これから、全員をランダムにこの3階層のどこかに飛ばす。いつまでも固まってたら、“殺し合い”ができないからな。散らばったら、次に出会った相手は“敵”だと思え。

 どうするかは、己の判断次第。諸君の健闘を祈る」

 「これって、〈転移魔法〉…?!」


 ウェルテイトの言葉と誰かの呟きを最後に、視界が暗転する。

 気がつけば、どこかの通りに座り込んでいた。広場ではない、廃墟の建物が立ち並ぶ通りだ。

 フェンは、呆然としていたが、すぐに、考える。


 「……確か、さっき“噂”って誰かが言ってたよね?」

 「あれだろ?“古代遺跡”の中に、擬似死っていうか、その領域内で死んでも生き返る“場”っていうのがあって、時々、特殊な実習に使われているらしいっていう話だ」


 呟きに、背後から答える声に、フェンは驚いて振り返った。そこには、見慣れた黒髪の少年がいた。


 「ゼヤン!?」

 「咄嗟に、お前の腕を掴んで正解だったぜ。ちびっ子を1人で、こんな廃墟に放置って、どんなトラウマだよ?しかも、問答無用の“殺し合い(バトルロワイヤル)”って、最悪じゃねぇか!」


 溜息1つ、ゼヤンは、フェンの頭を荒っぽく撫で回した。どうやら、心配してくれたらしい。

 

 「シーダは?」

 「悪りぃ。間に合わなかった。

 あいつ、1人にすると、時々、“暴走”するからなぁ」

 「暴走?」

 「ああ、シーダのやつ、〈下級魔術師〉になるときに〈治癒型〉を選択したけどな、あいつ、多分、〈攻撃型〉だ。見た目がああだから、周りも本人も騙されがちだけどな。コレでも、長い付き合いだから、分かる」

 「やっぱり仲が良いんだ。でも、なんで、本人に助言しなかったの?」

 「……あいつ自身が自分で気づかなけりゃ意味ねーだろ、そんなの。

 あと、あの馬鹿がオレより先に上に上がるなんざぁ、オレのプライドが許さねえ。嫌がらせだ」

 「………嫌がらせって……」


 まさかの予想外の回答に、フェンは呆れた。

 フンと、そっぽを向くゼヤンは、どことなく照れた様子なので、恐らくシーダを嫌っているわけではない。

 

 (ああ、イオとセルダみたいな感じかな?)


 フェンの姉のような存在の、年上の幼なじみの少女を、フェンは思い出す。

 普段はしっかりしてて大人っぽいのに、イオと対すると素直じゃないわ、子供っぽい嫌がらせをするわで、いつも2人で口喧嘩をしてるのだ。

 それでいて、仲が悪いわけではない。

 それに、ゼヤンとシーダの関係は重なった。


 (なんだ。そうなんだ)


 ちょっと羨ましい気持ちを抱きながら、フェンは、納得する。

 ちなみに、フェンの場合、どちらとも年が離れてるせいか、完全に“弟”ポジションなので、そういった複雑な“幼なじみ心”はない。


 「だが、“噂“通り、実際には死なないって分かってても、殺すのも殺されるのも変わりはないだろ。嫌な“実習”だな」

 「他の人たちも気付くかな?」

 「まぁ、気付くだろうさ。でも、実習内容が“殺し合い(これ)”だろ?……まぁ、本来の“意図”に気付けば、無理に殺し合わなくてもいいんだろうが……」

 「本来…?ああ、〈型〉決めだね」


 ゼヤンの指摘に、フェンは納得げに頷いた。

 とりあえず、通りにつっ立っているのは目立つので、歩きながら移動する。

 どこかの建物に隠れることもできるが、全員で11名しかいないのだ。この広い“遺跡”内で遭遇するには時間が掛かる。


 「っていうか、あいつら(クラスメイト)にオレが負けると思うか?」

 「…………」


 大真面目に圧倒的な自信をもってそう言うゼヤンに、フェンはなんとも言えなかった。

 〈上級生〉の中では、ゼヤンもフェンも成績は上位に入る。とはいえ、この“実習”に参加している全員が、多少の差はあれ、似たような成績だ。

 あとは、まぁ、精神的なものになるが、そちらで見れば、ゼヤンの言葉(自信)はあながち嘘ではない。

 そして、魔術でなく、肉体言語(殴り合い)なら、この11名(なか)の中では、確実にゼヤンがトップだ。

 

 「おそらく、この“実習”の目的は、極限状態で己の〈魔術(タイプ)〉を見出すことだな」

 「……それで、殺し合い?」

 「まぁ、“軍”らしい考えだよ。1回、“殺人”と“死”を体験させようっていう魂胆もあるな。精神的に弱い者を振いにかけてる。精神が強くなきゃ、魔術師なんて無理だしな」

 「まぁ、確かに精神力は必要だけど……」

 「残念なことに、オレもフェン(おまえ)も、まだ、自分の〈型〉が分かっちゃいないから、この馬鹿げた“殺し合い(じっしゅう)”に参加しないといけないわけだ」


 そう言われて、フェンは戸惑う。

 戦場の最前線。

 “砦”と共にある町。

 そんな環境のプラウティスだ。町の中だろうと、外だろうと、常に人の生き死にが付きまとう。

 フェンとて、人の死は何度も見ている。ある意味劣悪な環境ともいえるプラウティスは、子供の出生率は低い。さらに、赤子や幼児の生存率も、だ。

 命が軽い。

 知り合いの傭兵が姿を消す。兵士として出掛けた知り合いが、無残な遺体で帰ってくるなど、日常茶飯事だ。

 フェンと同じ年の友人が剣をとり、日々、戦場に出ているのも、当たり前だし、奴隷として来た子供の中には、10才に満たない子供が戦場の前線に送られることも珍しくない。


 けれど、フェンは、そんな命のやり取りをしたことがない。そういう人間を、目の前にしたことは何度もあるが、戦場に出たことはない。自分が、剣を向けられ、殺意を放たれ、血を流し、抗ったことはないのだ。

 それを見れば、施設(がっこう)で行われる模擬戦(せんとう)など、甘いものだ。もちろん、武器を使ったものも、魔術戦もあるが、大怪我をしても死ぬことはまずない。

 外では、当たり前なのかもしれないが、プラウティスに生まれ育った子供としては、異常だ。

 普通なら男子なら、10才には、戦う為の剣なり武術なりを学んでいるはずなのに、フェンは5才の適性検査時にはすでに魔術師としての才能を見抜かれ、同じく集められた子供たちと、魔術の基礎や様々な知識を学んでいた。

 プラウティスの子供は少ない。

 5才の適性検査に結果を出す優秀な子供なんて、ほとんどいないのだ。

 フェンは、5才のときに適性を出した珍しい子供(ケース)だったが、先に英才教育を受けていた年上の3人の子供たちには、まったく及ばない

 あの英才教育(クラス)を受けていたにも関わらず、フェンは、まだ〈候補生〉止まりだ。

 早くに見出された子供は、皆優秀で、早くに〈魔術師〉になり、駆け上がっていく。

 その通りに、“2人”は、飛び級し、噂ではすでに〈上級魔術師〉まで上がっていると聞く。


 (イオだって、人を殺してる……)


 英雄の再来と、将来有望な“(イオ)”だって、生死渦巻く戦場で、己の剣のみで生き延びた猛者なのだ。

 だが、フェンは、戦場でのイオを知らない。


 (僕に、できるのかな?)


 今だって怖いのだ。

 いつか、戦場で、魔術を使って大量の命を奪うかもしれないのだと、フェンは初めて思い至った。

 

 「おい、フェン。大丈夫か?」


 俯き加減に歩くフェンを、ゼヤンが覗き込む。やや堅く緊張したように顔色の悪いフェンに、ゼヤンは、安心させるように、背中を軽く叩いた。

  

 「ふははははっ!見つけたぞ!ゼヤン!!」

 「チッ……………、馬鹿がきた」


 そんな2人の前に、〈候補生〉の1人が、高笑いと共に立ちふさがる。

 無表情のまま、固まるフェン。そんなフェンを、引き寄せて、背中に隠したゼヤンは、呆れたように舌打ちをする。


 「ゼヤン、日頃の恨み、今ここで晴らしてくれる!!」

 「……いや、ユド、お前に何かした覚えはねぇぞ?」

 「わ、忘れただとぉっ?!〈候補生〉のアイドル、上級生(アッパークラス)女子(マドンナ)、フレウアリアさんに告白されたのに、あっさり振っただろーーがっっ!!!」

 「………あぁ、アレか」


 下らねえと、溜め息を吐くゼヤン。


 「あんな女、どこがいいんだ?真っ黒だぞ?あいつ…………」

 「なっ!あんなに可憐な人なのにっ!」


 大仰に絶句する大柄な体格の少年(クラスメイト)、ユド。

 半眼で、心底呆れた様子のゼヤンは、目の前のクラスメイトを見つめた。


 「ゼヤン!!」


 ハッと気づいたフェンが叫ぶのと同時に、ユドが立つのと別の方向ーーおそらく、近場の建物の2階辺りーーから、風系の攻撃魔術が飛んでくる。

 「前っ!!」と、フェンは叫ぶ。見ればらユドが、火の攻撃魔術を展開しているのが、ゼヤンの視界に入る。

 2つの攻撃が、ゼヤンとフェンのいた場所に直撃し、大きな火柱を上げた。


 「……ッシャ!」「やったか?」


 建物から出てきたもう1人が、ガッツポーズをするユドを見て、問いかける。


 「ゼヤンとフェン。まずは、実力者(一番やっかいなの)を潰す!まぁ、死んでも生き返るから、悪く思うなよ?」

 「でもさ、フェンは除外してもよくね?なんか、罪悪感なんだけど………」

 「馬鹿!アイツ、〈天才児スペシャルチルドレン〉だぞ?本気だされたら、ここにいる全員、まったく勝てない実力があるって聞いたことがある」

 「は?マジ?全然、見えないんだけど?」

 「まぁ、フェンは性格がおっとりしてるからな。戦争向きじゃないんだろ……………て、ぶはぁぁーーーっっ?!!」


 ユドが血を流しながら、後方にぶっ飛ぶ。

 突然の出来事に状況の飲み込めないもう1人は、ユドを見て、ハッと、ゼヤンたちがいた方向を見た。が、時すでに遅く、彼に目掛けて、雷撃の矢が降り注ぐ。


 「ぐはっっ?!!」


 避けられずに倒れる少年。

 ユドは、左肩を負傷したものの、なんとか起き上がり、「な、なんで?」と、視線を粉塵が舞う場所に向けた。

 

 「な!結界防壁(ドームガード)だと?!」


 煙が晴れるのと同時に、無傷で立つゼヤンとフェンがいた。彼らの周りには、うっすらとドーム状の防壁が張り巡らされている。


 「“雷撃の雨(サンダーレイン)”」

 「フェン、加減しろよ?あいつらの留めは、オレが刺す」

 「「ギャアアアアアアッッッ!!!!」」


 フェンの魔術が、2人に降り注ぐ。

 致死量ではないが、普段の実習よりも威力が強いものだ。そのぶん、突然の攻撃に対するフェンの怒りが込められているのが分かる。


 「……結局、こいつらにかかれば、普段の実習と変わらんのかよ………」


 結界を消したゼヤンが、溜め息を吐く。

 黒こげにピクピクしていたが、すぐに意識を取り戻し、ズルズル~と這うように逃げるユドたちに、「相変わらず、しぶとい」と、フェンも呆れて、溜め息を吐いた。

 なんか、真剣に考えてた自分が馬鹿らしくなる。


 「さて、じゃあ、こっからは普段じゃ味わえない体験をさせてやるよ」


 どこからか、サバイバルナイフを取り出したゼヤンが、意地の悪い笑みを浮かべ、ユドたちの逃げ道を塞ぐ。

 

 「ま、マジか………」

 「や、落ち着け、ゼヤン!」


 顔を青ざめさせる2人。

 ナイフを見せつけて、2人に近寄るゼヤン。

 

 「馬鹿は一度死ななきゃ直らんだろ?良かったな。いい体験が出来たと思って、出直せ」

 「「い、ギャアアアアアアッッッ!!!!」


 廃墟に、2つの絶叫が木霊した。


でも、やっぱりシリアス崩壊……。


ユド「()られたけど、〈型〉はバッチリ掴んだぜ!はーっはっはっはっは………!!!」 

友人「いや、殺されたら意味無いじゃん?!」


お馬鹿コンビ襲撃→殺害(敗北)→復活後。


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