第1話 (7)
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「ーーふう、これで終わりだ」
ヴィンセントは額に浮かんだ汗を拭い、抜いた剣を鞘に戻す。
青年はどこから摘んできたのか、白い花を一輪、熊兵器に供える。
ヴィンセントは青年の"最後の頼み"である熊兵器に無理やり植え付けられた軍事兵器を斬り外した。そして先程まで抑えていた怒りをその軍事兵器へと叩き込んだ。その兵器は言うまでもなく、塵となった。
「すまない、頼みを聞いてもらって」
「別にいいよ、俺だって言われなくてもきっとそうしていただろうよ」
ヴィンセントは身体を伸ばすと空を仰いだ。近年の瘴気の影響で星空はおろか青空でさえ見る機会が減りつつある。しかし今日の空は珍しく澄み渡り、ポッカリと浮かぶ月は真上にまで昇っていた。
「というかさ、そういう時は謝るんじゃなくて"ありがとう"って言えばいいんだよ」
「ありがとう…?」
疑問符を浮かべる青年の瞳を見る。すでに辺りは真っ暗のはずなのに、その蒼い瞳だけは異様な存在感を放っていた。
「謝られると、なんかこう…スッキリしないんだよ」
「……なんで?」
「な、なんとなくだ、なんとなく!いいから、そういう時は感謝の言葉の方が互いにスッキリするんだよ!」
ヴィンセントの言葉をまるで信じていないような顔をする青年に、ヴィンセントは理由になっていない理由を口にした。
理由という名の何かを聞いて、青年は思わず笑ってしまった。
「おい、絶対お前馬鹿にしてるだろ」
「いやいや、してないしてない」
ジロリと睨めば余計に逆効果だったようで、終いに腹を抱えながら笑いだした。
「あ"ーもういい、笑ってろ」
「…うん、"ありがとう"」
それはヴィンセントのことを見ずに、どこか遠くを見るようにして告げられた感謝の言葉。ヴィンセントもまた、月へと視線を移した。
これが後に世界に名を轟かせることとなる2人の、運命的なーー否、必然的な"再会"である。
初めましての方ははじめまして。
初のファンタジー物で緊張はしておりますが、異世界バトル系は大好きなので自分なりに頑張りたいと思います。
今後の為にも感想や評価、よろしくお願いします
滝川なち