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第1話 (4)

***


抜いた剣は鮮やかな光を放ち、鋭さを感じ取れる。

鳥籠の中から青年はその光景を眼に焼き付けた。


(これが本当の"輝き"か…)


自分の世界が、初めて光に満ちた気がした。思わずその光景に見惚れてしまい、ヴィンセントと名乗った青年が言った言葉を詳しくは聞き取れてはいなかった。

すると、視線に気がついたのか、ヴィンセントと目が合う。


「お前、すぐそこから出してやるから少し後ろ下がれ」


そう言われ、青年は従うまま反対側の鉄格子に背を預けた。

すると、一見頑丈そうな鉄格子が剣の軽い一振りで穴が開いてしまったのだ。繋がれていた手と足の枷も簡単に切ってしまう。白髪の青年を含め、見世物小屋の主人(オーナー)でさえも言葉が出なかった。


「バレッツ、この2人を倉庫に連れて行け。あと逃げ遅れた従業員と客人もだ」

「了解です」

「あ、それとそのゲス豚野郎が逃げないように鍵でもかけとけ」


バレッツと呼ばれた大男に指示を出したヴィンセントは、再び体を合成獣(キメラ)へと向ける。合成獣(キメラ)はヴィンセントの殺気を感じ取ったのか、耳が壊れそうなほどの雄叫びをあげる。それは空気を伝い、風圧と共にテントを超えて森中を駆け巡っただろう。


クルジイ

イダイ

タズゲテ

ダレカ ダズゲテ


青年はその"言葉"を聞いた

まるで自分に訴えているかのような悲痛な声

息が、詰まる思いだった


すると、こちらへ向かってくるだろうと思っていたが合成獣(キメラ)は反対の方へと踵を返した。


「は、ハハ、ははは、あいつめ!逃げやがったな!ははは!所詮ただの兵ーー」

「それ以上言うとお前を斬る」

「ヒッ、ぎゃああ!」


腰を抜かした主人(オーナー)にヴィンセントは剣を向ける。鉄格子や枷を切ってもその剣は衰えることはせず、鋭い光を放っていた。

向けられた切り先に主人(オーナー)は今にも気絶しそうなほど目の焦点が合っていなかった。


「隊長」

「ああ、これはまずいことになった」


剣を鞘に戻し、ヴィンセントは黒いフードを脱ぎ捨てる。


「瘴気を纏った状態で森で暴れられれば他の動植物に伝染する可能性がある。あいつの(とど)めは俺が刺してくるからここはお前に任せた」


そう告げて合成獣(キメラ)のあとを追いかけようとするヴィンセントの腕を、青年は捕まえた。


「おい、悪いが俺は急いでーー」

「…俺も、行く」


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