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第2話 (5)

***


城へと帰れば、中からお見送りをしてくれた少女リンが出てきた。相変わらず元気そうに、二つにまとめた黒髪を揺らして駆け寄ってきた。


「隊長ー!バレッツさんー!おかえりなさーい!」


髪の色と同じ黒い二つの瞳を輝かせ、腕を振るリンが無邪気で愛らしく思える。見た目は12、13に見えるその華奢な身体を派手ではないが洗濯された真っ白なワンピースが包んでいた。


「あれ、隊長?予定より早いおかえりで」


リンの後に続いて今度は腰に帯刀している青年が出てきた。リンと同じで、ここら辺の大陸では庶民の特徴である黒髪に黒い瞳。身長は170前半でスラリとした印象だ。


馬車を止め、荷車からバレッツが出てくる。その後にスイレンも続けて出る。まだ覚束(おぼつか)ない足取りだった為、ヴィンセントは肩を貸してやる。

スイレンの姿を見て、リンと青年は唖然とした。

光を受けて反射する白髪に、見たこともない宝石のような瞳に言葉を失う。


「新入りだ、先輩として世話してやってくれ」


二人の反応を予想していたのか、ヴィンセントは全く驚いた様子を見せなかった。しかし二人と言えば、口をポカンと開けて未だ固まっている。ヴィンセントはやれやれと呆れた。


「スイレン、です。よろしくお願いします」


そんな二人に恐る恐るスイレンは挨拶する。その声にハッと我に返り、二人も続けて挨拶する。


「俺はロニー。まあ、よろしく」

「り、リンと申します!」


ロニーもリンも未だにスイレンから目が離せていない。ヴィンセントはコホン、とわざとらしい咳をして二人の注意を自分に向けさせる。


「はいはい、挨拶おわり!俺たちはすぐに王国へ報告に行くから留守番頼んだぞ」


「「了解」」


先ほどまでグダグダだった二人だが、ヴィンセントの言葉に反応して敬礼する。

するとそれぞれ違う方向に歩を向ける。自分の役割に戻ったようだ。


「バレッツ、出発の前にコイツ用のフード持ってきてくれ」

「了解」


ヴィンセントの指示を受けたバレッツは間もなくして黒いフードを持ってきた。ヴィンセントとバレッツが着ていたものと同じだった。ヴィンセントは合成獣(キメラ)と戦う前に脱ぎ捨てていたが、このフードは常に着ているものなのか?とスイレンは疑問に思う。


「急だが王国にお前も連れて行く。その時に騒ぎになるのも嫌だからな、そのフード被ってろ」


黒い布を身に纏い、すっぽり頭にフードを被せられる。

確かに今自分が公の場に行けば先ほどのロニーとリンのようなことが起こるだろう。初めて王国へ行くのだから始めは穏便に済ませたいというヴィンセントの願望だった。


「よし、じゃあ王国へ行くぞ」


ヴィンセントの言葉にスイレンは頷く。その反応を見て、ヴィンセントは笑みを浮かべ再び馬に跨る。


「バレッツ、お前も来い。もちろん荷車に乗っていけ」

「…了解」


少し不服そうな顔をしたバレッツだが、逆らうことなく荷車へと乗り込んだ。

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