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防衛戦1

「き、君達!大丈夫か…いやそうじゃなく、なんて力だ…。いや、なんというか…」


俺たちだけで会話していたが、傷の浅い警備隊員が近づいてきて俺たちにそう言った。何と言っていいのか分からないようだったが、無理もないだろう。学生がとんでもない力でミノタウロスを倒したのだ。俺だってこの世界に来たばっかだったらそうなるね。


「と、ともかくありがとう。私達でさえ苦戦していた魔物を簡単に倒すなんて、君達は只者じゃないな 。…普段であればゆっくりと表彰でもしていたところだが、あいにくとこんな状況だからな…」


「何が起きたんですか?街の中にまで魔物が入ってくるなんて聞いたことがないのに」


「そうだな、私も断片的にしか情報を得ていないんだが。本来なら一般人には話すべきではないが、君達ならいいだろう。…ある程度予想はついてるだろうが、街を取り囲むように大小様々な迷宮が発生しているんだ。それもあちこちから魔物が外に出てきていて、ギルドの連中と協力して交戦している」


「街の中には入らせないよう戦っていたようだが、そのうちの一体がくぐり抜けてきてな。外門を通してしまったというわけだ。本当に君達には感謝する。もし君達がいなければ、被害がどれだけ広がっていたか…」


ううむ、街の外はよりやばそうな雰囲気だな。よく見れば警備隊員の身体中に、ミノタウロス以外の魔物につけられたのであろう傷が広がっていた。


「ともかく、協力感謝する。ここもいつ別の魔物が襲ってくるか分からないから早く逃げてくれ。見たところクーロイツ学園の子だな。できることなら市民を先導して…」


「いえ、皆さんが先導してあげて下さい。アタシ達が代わりに戦いますから」


「……はあっ!?いや、だめだだめだ!実力があるとはいえ、子供にそんなことをさせる訳にはいかない!早く逃げるんだ!」


「皆さんの方が傷が深いです。他の警備隊員の方々もいらっしゃいますし、単純に男手の方が必要です。アタシ達はまだ動けるし、見ての通り実力には自信がありますから」


「……い、いやしかし……!」


「たしかに君達が加勢してくれたら心強いが…」


ニーナのやたらと自信満々な説得に頭を抱える警備隊員。説得力がある分たちが悪いな。


警備隊員はしばらく逡巡していたが、


「……仕方ない、今回は君達を頼る。今は戦える人間が一人でも多く必要な状態だ。だが無理はするな!やばそうならすぐに逃げるんだぞ!」


「はい、そちらもお願いします」




警備隊が瓦礫で身動きが取れない人達の救助に向かったのを見て、俺たちも外壁へと走り出す。


その道中、ニーナに話しかけられる。


「ほら見なさい。アタシ達なら大丈夫だったでしょ」


「……なんの話だよ」


「何でそんな捻くれたのかは知らないけど。案外やってみれば何とかなるもんよ。そもそも何もしなかったら何もできないままでしょ?」


「んなこと言われても俺はまったく考え変えてないからな。……まあそれでも、あえて言うなら…… 」


「?」


「人助けってのも、案外悪くないもんだなってことくらいだよっ!」


「ふん、それで十分よ!」



ぶっ壊された外門を通り抜け街の外に出た俺たちは、そこで予想以上の惨劇を目にした。


つい数日前にはただの平原だったはずの大地に乱立する迷宮。地を空を埋める魔物。あちこちで戦いが繰り広げられ、魔法の炸裂音と魔物の叫び声が鳴り止むことなく響き渡っていた。


「おいおい…どっから手つけりゃいいか分からないな…」


「いえ、あちらをご覧ください」


「んー?うわ、魔物めっちゃ攻めてきてんなー」


アニスが指さしたところを見ると、小型のすばしっこい魔物が俺たち…というか外門目掛けて突っ走ってきていた。小さいから防ぎきれなかったんだろう。


「とりあえず侵入できなくさせるわよ!キリ、門を岩で塞いで!」


「あいよー」


魔法具の力を借り、いとも簡単に門があった場所に巨大な岩壁を形成したキリ。これならよほど強いやつじゃない限り壊せないだろう。


「よし、じゃあ手始めにアイツらを倒すわよ!…ライト・バレット!」


ニーナがそう唱えると複数の雷の弾丸を形成し、前方に放たれた。魔物はその速度に反応しきれず、次々と体を貫かれていく。


「つーかあえて炎使わないんだな」


「当たり前でしょ。アタシは魔法具がなくても最強の魔法使いになりたいの。……って、今度は上ね!」


いつの間にやら迫っていた大きな蝙蝠のような魔物に向けて弾丸を飛ばすニーナ。しかし不規則な起動で飛んでいて捉え辛いのか、どれもすり抜けていった。


「もう、めんどくさいわね!」


「あのくらいなら俺がやってやるよ」


今まで見てるだけだったので、ここらで活躍してやるかと今度は俺が魔法を発動する。細かい出力調整は出来ないが、広範囲にまとめてぶっ放すくらいなら今でもやれる。


まずは脚力増強で一気に蝙蝠の群れの中に入る。……って思った以上に恐怖心をくすぐられるっ!!


「うわああ怖いっ!!?」


「アンタかっこつけといて何バカなことしてんのよ!」


「いや周り真っ暗で羽ばたく音しか聞こえな…うらぁぁぁ!!」


何が何だか分からないままがむしゃらに足をぶん回すと、うまいこと発動して俺を中心に竜巻が発生した。それに巻き込まれた蝙蝠達は、ギィギィと不快な音をあげて上空へと回転しながら登っていった。


「はぁ、はぁ…あ!ニーナ上!」


「分かってるわよバカ!フレアボム!」


竜巻で正常に飛ぶことができなくなった蝙蝠に向けニーナがそう叫ぶと、大きな爆発が起きて群れを一掃した。この魔法は迷宮で見たやつだな。


「け、計画通り」


「どこがよ。……にしてもホントに魔法具様々ね。同じ魔力量でこうも威力が違うなんて」


「まじで迷宮攻略したもんがちだよなー。わたしらも死にかけたけど、終わってみればリターンでかすぎだぜ」


たしかにな。ディアナがいなかったらニーナ以外死んでた気もするが、それでも本来の迷宮の難易度としちゃ上出来な気がする。結局俺らは全員生きてるし、大人すら手こずる魔物相手に圧勝しちまえる力を手に入れたんだ。


ギルドの人らもまともに訓練するのがアホらしくなってくるんじゃないのか?この街が迷宮探索許可出すのが遅いっていうのに不満がでるのも訳ないな。


「正直、迷宮についてはまだ分かってないからね。また後で教えたげるわ。それより…」


「悠長にしてる暇はなさそうです。次が来ましたね」


今度は子供くらいの魔物の群れが襲ってきた。全身が黄緑色。顔が横に長く耳が尖っており、腹が異様に出ていた。手には剣やら棍棒やら雑多で、寄せ集めの兵って感じだ。


「ゴブリンね。小物ばっかで助かるわ。行くわよ!」


ゴブリンか。言われてみればそんな感じだな。


俺たちもそれぞれ戦いに踏み出した。……と同時、ゴブリン達が真横に吹っ飛んだ。


「!?」


紙のように宙に舞うゴブリン。隣の者をどんどん巻き込み、ものの一瞬で半数以上を吹き飛ばされてしまった。


「おいおい、なんでガキがこんなとこに来てんだ?」


それが引き起こされた地点を見てみると、1つの人影があった。今の声もそいつが発したらしい。俺たちも大概だが、こんな状況に似合わない落ち着いた男の声だった。


残ったゴブリンがギィギィと奇声を発しながらそいつに向かっていくが、先程と同様に一瞬で吹き飛ばされていく。魔法を発動したようには見えないが…小さな子供サイズとはいえ何十キロかはあるだろうゴブリンが次々と空に飛ばされている様は笑いさえ込み上げてくる。


その攻撃の起点は手に持っている大剣だった。幅広で身の丈ほどもあり、両手で持つのすらキツそうなのに男は軽々と片手で振り回している。


あらかた敵を吹っ飛ばし終えると、男がこっちに近づいてきた。大剣を肩に担ぎ、軽く小走りで向かってくる。


大体40代前後の見た目。茶髪で、もみあげから顎までヒゲが繋がっている。ザ・戦士みたいな服装をしていて、中々のマッチョだった。


「やっぱ学生……つか女の子じゃないか。だめだろうこんなとこ来ちゃ。一体どうしたんだ?」


「加勢しに来たんです」


「あん?俺たちゃあガキに助けられるほど弱っちゃあいねえよ。敵が寄ってこねぇうちに早く帰れ。俺も暇じゃねえんでな」


「アタシ達も戦えます!足手まといには…」


「んなこた知らねぇよ。ギルドでも警備隊でもねえ奴が来られても迷惑なんだ」


男改めおっさんは不機嫌そうにそう言った。取り付く島もないといった感じだが無理もないだほう。明らかに戦うような格好じゃない俺たちがこんなとこにいるんだ、命知らずな物見遊山なのかとでも思ってるんだろう。


しかし言ってるうちに何か感づいたようで、ピクリと眉を動かした。


「……ん、待てよ?お前らそこの外門から入って来たのか?」


「え、そうですけど」


「俺ぁさっきそっちに逃げてったミノタウロスをぶっ倒しに来たんだが、そいつはどうしたんだ?」


「アタシ達で倒しました」


「あぁん?んなバカな…」


「いやー、そんな強くなかったから無傷でやったぜー?」


ちらりとニーナの加勢に入るキリ。おっさんはますます訝しげな表情を深めたが、


「……そういやぁついこないだ、どっかのバカ学生が勝手に迷宮攻略しちまったって聞いたが…まさかとは思うが、お前らか?」


「ば、バカ学生って…」


「…たぶんそうです」


バカという言葉にショックを受けるニーナに代わって一応俺が返事をする。というかこいつはなんでこんなちょっとしたことにも反応するレベルでプライド高いんだ?


「そんで懲りずに加勢しに来たって訳か……はぁ、ますますバカだな」


「そ、そんなことないじゃないですか!アタシ達はできることを……」


「できるできないってボランティアでもやってる気分なのかお前は?所詮自分の責任も持てねぇガキに戦わせる訳には……って、クソ!次が来やがった!」


敵の襲来にいち早く察知したおっさん。俺たちもそっちの方向を見てみると、一番近い迷宮の入り口から大型の魔物が複数体現れた。


「まーたミノタウロスに、今度はジャイアントスパイダーか。チッ、お前ら早く逃げ……」


と、チラリと目を合わせる俺たち。アイコンタクトで今だ、と合図を交わし、


「フレア・バースト!」


「ロック・プレス!」


ここぞとばかりに強めの魔法を放つニーナとキリ。ついでに俺もちょっと風で攻撃しようかと蹴りを放ってみたが、うまくいかず途中で霧散してしまったから黙っておいた。アニスからの生暖かい視線は感じたが…。


とりあえず完全にアピール目的で放った2つの魔法は魔物へ襲いかかる。ニーナの炎魔法はミノタウロスに向かっていき、直前で避けられたが横腹を掠め、キリの魔法は大きな岩をジャイアントスパイダーとやら(でかい蜘蛛。タランチュラみたいな毛深い奴をそのままでかくしたような見た目だった)の右足を二本踏み潰した。


「チッ、流石に簡単にはやらせてくれないわね…」


「感覚狂ってるけどB級の魔物だからなー。やっぱ一人じゃ無理だぜー?」


「……お前らなぁ……」


俺たちの気楽な会話におっさんが呆れた声をあげた。


このままここで停滞しては騒動が長引くだけだ。俺はそう思っておっさんに説得を試みる。


「…外門の魔物は倒しましたし、その辺りの住民は警備隊の方に逃がしてもらいました。安全を確認してから来ましたし、俺達は力がないわけじゃありません。ですので一緒に戦わせてくれませんか?」


「……そこまで言うんなら見せてみろや。それで判断してやる。あいつらぶっ倒せるんなら認めてやるよ!行くぞ!」


「……!はい!」


相手は二体。クソ強そうなおっさんもいるし勝てない相手じゃないはずだ。


直接攻撃が主体の俺とアニス、おっさんがまず飛び出す。


「俺ぁミノタウロスをやる。お前らは蜘蛛の方をやれ!そっちのがまだ楽だろ!」


「蜘蛛の方が初めてですが」


「はっ!つくづく変な奴らだな!まあめんどくせぇ、言った通りやるぞ!」


ばかでかい大剣を抱えてるのにも関わらずものすごいスピードで突っ走るおっさんは、そのままの勢いで剣をぶん回した。


軽く振っただけでゴブリンが吹っ飛んでったのだから、全力でやれば計り知れない程のパワーになるんだろう。事実、ミノタウロスは両腕でガードしたのにも関わらず乱回転しながら吹っ飛んだ。


「うへぇ、半端ない威力だな…あれもやっぱ魔法具なのか?」


「あ?んなもん使ってる軟弱野郎と一緒にすんじゃねぇ!これは一重に俺の力よ!」


俺の呟きが聞こえてたみたいで、なぜか愉快そうにそう答えるおっさん。


というか軟弱野郎て…ギルドの人的にはそういう扱いなのか?いや、こんな便利な代物をそう言い切れるのはこのおっさんくらいに違いない。


「つーか魔法具を何のデメリットもねぇモンだとでも思ってんのか?後でみっちり教えてやるよ!」


「えっ…!?」


「リサ様、今は目の前に集中してください」


「え、あ、おう!」


魔法具のデメリットなんていうのは聞いておきたかったが、この状況では仕方ない。諦めて敵に向き直る。


いつの間にやら潰した足が再生しているジャイアントスパイダーをキリが牽制していた。地面からどんどんと岩の壁を生み出し、こっちに来れないようにしている。


そのキリの後ろでニーナが呪文を唱えていた。氷の塊がその頭上にいくつも出現し、それらが一斉に蜘蛛に向かって飛んでいく。


「アイスバレット!」


全ての弾丸が蜘蛛の背中に命中したが、至って平気なようだった。


「もう、ミスったわ」


「ミスったって?」


「ジャイアントスパイダーの弱点は背中にある核なのよ。……でも場所は個体によって違うし、何よりアイツ自体がデカすぎて背中が見えないの。…だからとりあえず適当に撃ったけど…」


「外れたのか」


「そういうこと」


「もーめんどくせーなー。2人で一気に乱れ打ちしようぜ」


足止め担当のキリが魔法を絶やさずにそう言ってきた。相変わらず余裕そうな口ぶりだが、うすく汗をかいてるところを見ると実際は大変なんだろう。


「でも、それで外した時が…」


「俺が飛んで位置確認するよ。上から教える」


「!あら、それはいい案ね。何で思いつかなかったのかしら…アンタってすぐ解説に走るからかな…」


メタっぽい発言はやめてくれ。


「まあいいわ!それでいきましょう!」


「オッケー!よい……しょっ!」


真上に飛ぶくらいなら流石に慣れてきたから、ちょっと高めに飛んだくらいで何とか予定通り発動することができた。


風がジェット噴流のように放射され、空気を切り裂いて一瞬で上空へ。すぐにジャイアントスパイダーの背中を確認して核の位置を…て。


「リサ!どこなの?早めにお願い!」


「…ない」


「え?何てー!?」


「核なんて見つからねえぞー!」


蜘蛛の背中にそれらしきものなんてどこにもない。あるのは毒々しい模様くらいだ。核がどんなものなのかよく知らないが、それでも普通であれば分かるようなものだろう。


「……は!?」



戦いはどんどん長引いていく。

週一とか嘘こきましたすみません。

数ヶ月放置した気がします。

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