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女になってる

「う〜ん……はっ!?」


悪夢を見ていたかのように飛び起きる。いや実際悪夢のようなもんだったけど。



さっき俺は牛頭の怪物に追いかけられ、命からがら逃げて壁にぶつかってーーそれで意識を失ったはずだ。



辺りを見回してみる。ーーそこには、またもや絶句する景色が広がっていた。


一言で言い表すなら中世ヨーロッパの貴族の屋敷。大理石の床に金刺繍がされた赤い絨毯が敷かれ、高そうな椅子や机。壺とかの調度品?からもこの家のランクの高さが伺える。


よくよく見ると俺は天蓋付きのベッドに寝かされていた。どうりでさっきと違い寝心地がいいわけだ。こんなモフモフの布団めったにお目にかかれない。


怪物に追いかけられて汚くなっていた俺の服もいつの間にやら取り替えられ、綺麗な寝間着に……って、これ!!



どう見ても女物なんですけど!!


清潔感のある真っ白な生地。丁寧な縫製でしっかりしていて……てのはいいとして、膝丈までしかない!どう見てもこれワンピースじゃねえか!


なんでこんなもの俺に…。女顔でも痩せ型でもないのにこんなの着せたって、ただの笑いものにしか…って、あれ。


俺ってこんなに体小さかったか?


いや、よく見るとどう見ても小さい。手を見てみると明らかに小さく、丸く、細くなっている。


ワンピースからでる足も白く滑らかですね毛一つ生えてない。


と、下を向いたことで髪がふぁさりと垂れてきた。いやおかしい、俺の髪はこんなに長くないぞ。


どう見ても俺の胸の辺りまで髪が伸びている。しかもこれは…白髪。いや、銀髪…なのか?



これって、つまり。



ゆっくりと股間に手を伸ばす。見比べたことはないがまあまあ大きいほうだろうと愛でていた俺の自慢の息子が、





ない。





「…………えええええええええっっっ!!??」



俺、女になってるんですけど!?



「うるさいなぁ…起きたのはいいけどもうちょっと静かにしてくれないかしら」



と、ガチャリと扉を開けて入ってきたのは、不満げな顔をした少女だった。


その子の見た目もまた現実離れしていた。歳は15、6歳くらいだろうか。ツインテールにされているオレンジ色の髪で、瞳は綺麗な黄色をしていた。


服装はゆったりとした部屋着的なもの。これもまた綺麗な刺繍が施されている。


が、そんなことは今や俺にとっては些細な問題である。


「お、お前か!俺をこんな姿にしたのは!ていうかこんなわけ分からん世界に拉致ってきたのもまさかお前か!?何が目的だ!金か!金なんて俺の家にはまったく…」



「うるさいわね。『ウォータ』」


「あ?って、がっ、ごぽっ!!」


少女がそう呟いた途端、俺の頭をすっぽりと水の玉が覆った。い、息ができない!死ぬ!!


「静かにするって約束できるかしら?」


「ぐっ、グプッ!ゴポポッ」


喋れないので必死にうなづいて意思表示する。それを見てその女は指をパチン、と弾き、同時に水の玉が消滅した。


く、苦しかった。というか注意するよりまず行動に出るとはなんて奴だ。親の顔が見てみたい。


「ごほっ、ごほ……。そ、それで、さっきの件についてなんだが…」


「正直何言ってるか分かんないんだけど。私はすっ飛んできたアンタを親切にも受け止めてあげて、おまけに家にまで運んできてやったのよ?まず何か言うことはないの?」



可愛らしい顔と声に反して口の利き方がピリピリしている。怖い奴だ。


というか今の話本当なのか。とするとこいつは命の恩人ということになるのか。あと怪物はどうしたんだろうか。


あからさまに不機嫌な顔になっていく少女を見て、慌てて俺は頭を下げた。


「あ、ありがとうございます…。いやちょっとわけの分からない状況に混乱してて」


「どういう状況なわけ?こっちだってせっかく隙を見つけて忍び込んだってのに、計画が潰れてすんごいイライラしてんだけど?」


隙?計画?なんかよく分からんが彼女にも何かしらあるらしい。が、しかし俺の事情をまず聞いてくれよ。俺ですら何が何だか分からないんだから。


そうだ。一番最初に聞かなきゃいけないことがある。


「あのさ…まず聞きたいんだけど、ここって…なんていう場所?…日本ってのは、間違いない…よな?」


「は?何言ってんの?」



何を当たり前なことを、とでも言うように少女は鼻で笑った。そ、そうだよな。異世界とかそんな、馬鹿げた話があるもんかーーーー



「アンタが言いたいのがよく分かんないんだけど。地名のことなんだったら、ここはファルメリーダよ」





ーーーーんん?

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