.5 どこかで
ちょっと短めです
一面に広がる荒野。夕陽に染まる干からびた大地。生き物が住みつかないような過酷な世界の真ん中に、円を囲むように石の椅子が並べられている。
そこに老若男女構わず何人かが座っているが、今日は空席が目立っていた。半分以上の椅子が空いている。
全員、会話もなく何かを待っていた。一人はイライラした様子で、一人はそれが起きることを期待しているように。
それぞれ思惑は違うようだったが、みな待っているものは一つだった。
と、突然小さな黒い渦が発生して空席の一つを飲み込んだ。しかしすぐさま消し去られ、中から30代くらいの男が現れた。
男は眠そうな顔をして、椅子に勢いよく座り込む。
「どうだ?」
先に座っていたうちの一人である、まだ若い青年がその男に問いかける。男はその言葉ににやりと笑い、
「すこぶる順調だよ。あとはぶっ放すだけだ」
「でもぉ、なんであんなとこで始めるのぉ?どうせならもっと大っきなところでやればいーじゃん」
小さな女の子がなどと駄々を捏ねるように言う。男はそれで気を損ねたように舌打ちを鳴らしたが、青年は極めて大人びた態度で返す。
「あそこは辺境の地だが、王都の戦力として優秀だ。そこを潰すのは合理的な判断といえる」
「ふーん」
が、少女はまったく興味がなさそうだった。結局、彼女にとってどこを攻めるかなど小さな問題だった。
「しっかし、オレらが直接行けねェってのはめんどくせえ話だなァ。今行けるんなら一発なのによ」
「仕方のないことだ。今はまだあちらに対応する準備ができていない。皆殺しすることはできても、帰る前に死んでしまっては元も子もないのだから」
「分かってるよ。ったく、冗談の通じねェ奴だな」
「それで、いつになったら始めるのだ?儂はもう退屈でならん」
と、今度は初老の男が不機嫌さを隠そうともせずにそうきつい口調で言った。
「チッ、テメェらがやんねェからオレらに回されたのにやかましいジジィだな。もう合図くれたら始められるぜ」
「早く早くぅ。もうわたし待ちくたびれちゃったんだもん」
「そうだな。そろそろ頃合いだろう」
青年はそう言いながらゆっくりと立ち上がった。その言葉に、他の男達も待ってましたと言わんばかりに邪悪な笑みを浮かべた。
青年は続ける。
「数千年の戦いを経て、気づけば恐れを知らない愚かな人間が蔓延る醜い世界になってしまった。今こそ憎き宿敵との対決に終止符を打つときだ。今日この時をもって、記念すべき最後の大戦を始めるとしよう。………では」
青年は座している者達の顔を一人ずつ眺め、続く言葉を口にした。
それは、この世界の長きに渡る平穏を根本から破壊することを意味する一言だった。
「開戦だ」




