良美 34歳
良美 34歳
彼女と初めて出会ったのは、麻布十番のネイルサロンで働いているときだった。
新規オープンのキャンペーンをしていたネイルサロンに、お客様としてやってきた。
すらりと痩せた長身、ボブの髪型、ほぼ、すっぴんのメイク。
ほんの少し、低めの声。
彼女の手をとり、施術しはじめた時、彼女は言った。
「私、ニューハーフよ」
その頃はニューハーフと言う言葉ができ、ニューハーフが流行りもてはやされ始めていた。
おしゃべりが上手で明るく、周りの人みんなを笑わせる彼女はみんなの人気者。
そんな彼女とたまたま食事に行くようになった。
少し酔った彼女は寂しそうにつぶやいた。
「好きな人がいて、食事のデートはしたけどまだ打ち明けてない」
彼女はまだ手術をしておらず性器はそのままであること、女性ホルモンの注射を受けていること、注射で髭が生えてこないことを話してくれた。
彼女の好きになった人には女性として会っていると。
さらに高級オカマクラブで水商売として働いてはいるものの、給料は13万くらいしかなく、『パパ』がいることも。
『パパ』は銀座の画廊を経営するお金持ちで、何人か女性とも付き合っているようだが、女性は飽きた、と彼女のことを面白がって援助してくれているようだ。
次にあった時、彼女は彼に打ち明けたと話してくれた。
始めはとまどった彼も受け入れてくれた、と。
打ち明けた場所は彼女が一人暮らしをするマンション。
キスした後、その先に進む前のこと。
話した後、びっくりしていたようだけれど、彼女のリードのもと、結ばれたようだ。
彼は既婚者。
子供もいる。
彼女にどんどんはまって行ったようだった。
彼の援助のもと、彼女は女性になる手術をした。
手術後、女性になれたことを喜びながらも
「子供は産めないし、結婚もできない」
と、寂しそうにつぶやいていた。
その後、銀座のクラブで女性としてホステスをし、今は子供服の販売している。