表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
7/8

Ragdoll『結成』

ついにチームRagdollの結成です。

龍崎猛の長年の夢、女性だけのサバゲチーム。

本省では結成から装備調達までの物語となります。

第7章【Ragdoll】『結成』

<集結、喫茶店Ayuzoroy>

雨上がりの夜。郊外の住宅地に佇む喫茶店「Ayuzoroy」の灯りが、濡れた路面にぼんやりと映り込む。

喫茶店マスターの龍崎猛は、大好きなコーヒー、キリマンジャロを淹れていた。

最初に入ってきたのは石見凛。スマホをいじりながら、期待と不安が入り混じった表情で店内を見回す。

《明日、Ayuzoroyに来て!》

龍崎から届いた短いLINEが頭に残っていた。

「ここ、やっぱり雰囲気最高だな…」

「マスター、来たよ!」

「おう!他のみんなが集まるまで待ってて。」

凛は小さく頷いて、いつもの窓際席に腰を下ろした。


次に現れたのは一番合戦葵。黒いパーカーにスリムパンツ、控えめだが、しっかりした足取り。ボウリング練習を済ませてきた。

《明日、Ayuzoroyに来て!》

普段、静かに一人で過ごす場所だったこの店に呼ばれ、少し戸惑いながらも席に着く。

「ジュースにするか?」

「お願いします」

三番目は進藤麻耶。タイトなジャケットをまとい、ゆっくりと深呼吸してからドアを開けた。

「……こんにちは・・・」

「相変わらず時間に正確だな。コーヒーでいいか?」

視線は他の2人を確認し、自然と雰囲気を分析していた。賃貸業のクセだ。


そして最後に渡辺未来が入ってくる。迷彩帽にジャケット、バッグにはパッチがぎっしり。

「マスター!来たわよ。」

店内には、見知らぬ顔の3人――凛、葵、麻耶が座っていた。

未来は一瞬驚いたが、すぐに笑みを浮かべる。

「何か面白いことになりそうだな」

未来はそう思った。

「よし、みんな来たな」

マスター・龍崎猛がカウンターから顔を出した。

白髪混じりの短髪、鋭い目つきの奥に、どこか優しさが漂う。

「そっちのテーブルに座れ」

初めて顔を合わせる4人が互いに視線を交わし、無言のまま円卓に集まった。

緊張と期待が重なる静かな空気。

「まずは自己紹介だ」

凛が勢いよく前に出る。

「僕、石見凛、27歳!廃墟LIVE配信やってます!ここは隠れ家みたいに通ってました!」

一番合戦葵イチマカセアオイ、36歳。プロボウラーです…。ここには、気持ちを落ち着けたいときに来てました」


小声だが芯のある瞳。

「進藤麻耶、43歳。不動産勤務です。息抜きにコーヒーを飲みに来てます。」

短く言い、微かに目を伏せる。

「渡辺未来、52歳!シングルマザー!マスターのミリタリー話をよく聞きにくるの!」

未来は陽気に笑った。

________________________________________

「さて、本題だ」

掲示板に貼られた一枚のポスターを指さしながら、龍崎猛は言った。

無骨なフォントでこう書かれている。

全国エアガンサバゲー大会・参加チーム募集

「この四人でサバゲチームを作り、この大会に出場しないか?」

一瞬の沈黙。

次の瞬間、その空気を破ったのは凛だった。

「あー! やってみたーい!」

椅子を揺らしながら身を乗り出す凛に、未来は腕を組んだまま微笑む。

「私、こないだ仕事絡みでやったわ」

「え、未来さんサバゲ経験者!?」

「ちょっとね。営業でね」

「ズルい!」

「サバゲかー……なんか面白そうね」

葵は顎に指を当て、冷静にポスターを眺めている。

「当たったら……痛くないんですか?」

最後にそう切り出したのは麻耶だった。声は小さく、だが真剣だ。

「多少は痛くないと、当たったかわからない程度だから大丈夫よ」

未来の即答に、龍崎も頷く。

「今は初速制限が厳しい。昔みたいな無茶はできないから安心だ」

「でも、お金掛かるんじゃない?」

葵の現実的な指摘に、龍崎は苦笑した。

「初期投資は俺が責任持つ。あんまり豪勢にはできないが、言い出しっぺだからな」

「だとしても……出場して勝てるかわからないですよね。初心者ですし……」

麻耶の言葉はもっともだった。

大会、全国、競技――その単語の重さが、彼女の思考を縛る。

「大会まで時間はある。俺がインストラクターするから大丈夫だ」

「えー! マスター大丈夫なの?」

凛の疑い半分の声に、龍崎は胸を張る。

「任せろ。今は喫茶店のマスターだが、かつてはガチゲーマーだったからな」

少しだけ、昔を懐かしむような目をして。

「みんな、どうだ?」

未来が最初に口を開いた。

「やるわ。新たな希望だわ」

「ボウリングにもいい影響出そうね。挑戦よ」

「新しい情熱だな!」凛が叫ぶ。

三人の視線が、自然と麻耶に集まる。

彼女は黙り込んだ。将棋で言うなら、まさに長考の局面。

その沈黙を、未来がそっと崩す。

「心配ないわよ。あなたの背中は、私が守るわ」

麻耶は一度目を伏せ、それから小さく息を吸った。

「……新たな知恵を養うには、良い機会かもしれませんね」

龍崎は満足そうに頷いた。

「よし! 決まりだ!」

そして、少し間を置いて宣言する。

「チーム名は――Ragdollだ!」

俊敏で華麗な猫の如く、投げ出されてもまた立ち上がる。

そんな意味を込めた名前だった。

こうして、即席で、未熟で、だが確かな意志を持ったチーム

**「Ragdoll」**の物語は、静かに、しかし確実に動き始めた。

________________________________________

<装備を揃える夜>

 夜の幹線道路沿いに、その店はあった。

 倉庫を改装したような無骨な外観に、巨大な看板。

 MILITARY & TACTICAL SHOPの文字が白く光っている。

「……ここ、ほんとに入っていいの?」

 凛が少し緊張した声で言う。

 だがその目は、すでに好奇心で輝いていた。

「当たり前だろ。今日はここで全部揃える」

 龍崎がそう言うと、後部座席から一斉に声が上がった。

「やったー!」

「サバゲショップ初めて!」

「写真撮っていい?」

 凛、葵、麻耶、未来。

 4人を連れて大型ミリタリーショップに来たのは、今日が初めてだ。

 自動ドアが開いた瞬間、空気が変わった。

 油と金属とナイロンの匂い。

 壁一面に並ぶ銃、ラックに掛けられた迷彩服、天井から吊られたタクティカルベスト。

「わあああ、すごい!ここ全部、戦う装備!?」

凛は興奮し、店内を駆け回る。

「……なにここ、すご……」

 未来が小さく息を呑む。

「映画のセットみたい」

「いや、映画より本気じゃない?」

 葵と麻耶はすでに店内をきょろきょろと見回し、落ち着きがない。

「はしゃぐのはいいけど、まず説明するぞ」

 龍崎が声を張ると、4人は素直に集まってきた。

「銃とタクティカル上下は統一する。予算と、俺の拘りだ」

「えー、自由じゃないの?」

 葵が少し不満そうに言う。

「統一したほうがゲームでは圧倒的に有利だ。

 マガジンを共有できる。弾切れの時に助け合える」

「なるほど……チーム戦って感じだね」

 麻耶が納得したように頷く。

「迷彩服はシンプルな物で既に候補を頼んである。インドア、アウトドア共用使いだ」

「了解でーす、教官」

 凛がふざけて敬礼する。

 そう言いながらも、凛はすでに迷彩服のラックへ走っていた。

「ねえ見て!この柄かっこよくない?」

「こっちは森っぽい!」

「こっち砂漠!」

 次から次へと服を当てて、鏡の前でくるくる回る。

「凛、それ全部同系色だから」

「え、じゃあ全部ありじゃん!」

 テンションが高すぎる。

 一方、銃器コーナーでは別の光景が広がっていた。

「……これ、軽い」

「こっちも」

 葵と麻耶が、ショーケースから取り出されたサブマシンガンを手にしている。

 MP5。

 シンプルで扱いやすく、初心者にも向いている定番モデルだ。

「覗くとこんな感じなんだ」

「おお……それっぽい」

 二人とも真剣な表情で、銃を構えては眺め回している。

「私はこの伸縮ストックタイプがいいわ」葵がストックを伸ばして構えてみた。

「うん、これ好き」

「固定ストックも安定感あっていいわね」麻耶が言う。

 未来は少し離れた場所で、ボルトアクションライフルを見つめていた。

「未来はアウトドア用も必要だ」

 龍崎は店員から受け取った一丁を手渡す。

「VSR-10 リコイルショックver.」

「……軽い」

「でも安定する。

 後方から援護してくれ。みんなを頼む」

 未来は一瞬驚いた顔をして、それから小さく笑った。

「……スナイパーか・・・・、頑張ります」

「こういう狙う時使うドットサイトとかは?」凛が龍崎に強請るような目をした。

「今の初期段階では必要ない。」

「アタッチメントもいろいろあるが、最低装備と技術を覚えてから探して遅くないよ。」

 タクティカルベストのコーナーに移動する。

「ベストは好みでいい。

 ただしマガジンが最低三本入るやつ」

「これどう?」

「こっち軽いよ」

「ポーチいっぱい付けられる!」

葵はタクティカルベストを着たままポーズを取り、麻耶は実用性重視で、ポーチ配置を真剣に悩んでいた。

未来はプレキャリを着たままポーズを取り、凛は鏡の前で角度を研究している。

麻耶は実用性重視で、ポーチ配置を真剣に悩んでいた。

「未来、それ背中の動き制限されない?」

「大丈夫……たぶん」

ハンドガンコーナーに来ると、再び空気が変わった。

「うわああああ!」

「こんなにあるの!?」

 葵が目を輝かせてガラスケースに張り付く。

「これもいいし、これもかっこいい!」

「……葵、目が危ない」

 麻耶が苦笑する。

「ハンドガンホルスター決めるぞ」

 龍崎が言うと、全員が集まる。

凛と葵はヒップホルスターを選んだ。

「どう?僕、かっこいい?」

麻耶と未来はレッグホルスターがしっくりきたようだ。

「動きやすそう」

「走れるかな……」

 葵がホルスターに銃を差し込んで、目を丸くした。

「見て見て!入れるとロックされるんだー!」

「落ちないのが大事だ」

「昔は落としても失くさないようにランヤードを付けたもんだ」

「へ-そうなんだ、すごーい……」

「あと重要なこと」

 龍崎は全員のホルスターを指差す。

「ライトモジュールが収まるやつにするんだぞ」

「ライト?」

「インドアや夜戦用だ。」

 時間はあっという間に過ぎていった。

 サイズ合わせ、調整、色の確認。

 あれがいい、これがいい、やっぱこっち。

「もう三時間経ってますよ」

 店員が苦笑いで教えてくれる。

「え、そんなに!?」

「全然足りない!」

 レジ前には大量の装備が積み上がっていた。

 銃、迷彩服、ベスト、ホルスター、マガジン、ゴーグル、グローブ。

 バッテリー、充電器、BBローダー、ガス等備品も、かなりの量だ。

 龍崎はそれを見て、夢が始まる思いに胸が熱くなる。

全員の装備が決まり、記念に凛がスマホを構える。

「初陣前の一枚、撮るよ!みんな、笑って!」

カシャッ。

小さなシャッター音が、4人の新たな誓いを刻んだ。


「……これで、チームだな」

 4人が顔を見合わせて、笑った。

「うん」

「だね」

「早く使いたい」

「……楽しみ」

 夜の駐車場に出ると、空気が少し冷たかった。

 だが、5人の気持ちは妙に温かい。

 これが始まりだ。

 ただの遊びかもしれない。

 それでも――装備を揃えたこの夜は、確かに特別だった。


当初は本章で完結にタクトレまでを描く予定が、思いのほか文が伸びたので装備調達までを描くことにしました。

次章からは本格的なタクティカルトレーニング(タクトレ)が始まります。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ