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『大会へ』

いよいよ全国大会への予選と大会に進むRagdoll。彼女達のトレーニングの成果が発揮される。


第11章『大会へ』

________________________________________

全国エアガンサバイバルゲーム大会 開催概要

全国の精鋭が集うサバイバルゲームの祭典。広大なアウトドアフィールドから、緊張感漂うインドアフィールドへと舞台を移し、最強のチームを決定します。

1. エントリー・予選規定

•参加資格: エントリーフリー(どなたでも参加可能)

•チーム構成: 1チーム 5名(予備要員含む)

•予選選抜: * チームから選抜された代表者1名によるシューティングマッチ。

★「点数」と「タイム」の総合評価により、上位30チームが本戦へ進出。

________________________________________

2. 本戦(9月開催 / 3日間)

予選を勝ち抜いた30チームが、3日間にわたる激戦を繰り広げます。

日程フィールドタイプ試合形式

前半アウトドアフラッグ戦(拠点の奪い合い)

後半インドアフラッグ戦(近接戦闘の技術が鍵)

決勝インドア殲滅戦(全滅させるまで終わらない最終決戦)

________________________________________

3. 優勝特典

決勝戦を制し、頂点に立ったチームには以下の栄誉と報酬が授与されます。

•賞金:400万円

•次回大会のシード権(予選免除での本戦出場権)

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大会の見どころ

予選は個人の「精密射撃」、本戦はチームの「連携」、そして決勝は極限状態での「生存能力」が試されます。フィールドの特性に合わせた戦略の切り替えが勝利への鍵となります

<告示>

全国エアガンサバイバルゲーム大会の詳細告示が発表されたのは、梅雨明け間近の蒸し暑い午後だった。

開催は2026年9月の3連休。競技日程は3日間にわたり、初日と2日目がアウトドアフィールド、最終日がインドアフィールドという構成だ。

地下訓練施設のブリーフィングルームで、龍崎はタブレットを操作しながら、凛、葵、麻耶、未来の4人に説明していた。

「予備要員を含む5名で出場は4名だ。」

「まずは予選。今年から新しくシューティングマッチが導入される」

画面に表示されたのは、タクティカルシューティングコースの概要図だ。

遮蔽物、移動射撃、姿勢変換。単なる命中精度だけでなく、判断力とスピードが問われる。

「点数とタイムの合算で、上位30位までが本戦進出。予選は――代表1名で出る」

一瞬の沈黙のあと、麻耶が思わず声を上げた。

「えっ、ちょっと待ってください。予備要員って……うちら4人しかいないですよ!?」

「まー、何とかなるよ」

龍崎は肩をすくめ、いつもの調子で笑った。

焦りも不安も、そこにはない。

「4人の中で、1番優秀なやつを出せばいい」

簡単に言ってくれる、と麻耶は口を尖らせたが、反論はしなかった。

結局、それしか方法はないのだ。

その日のうちに、龍崎は予選と同じ仕様のタクティカルシューティングコースを、地下訓練施設に再現した。

距離、遮蔽物の配置、射線角度――可能な限り本番に近づけてある。

「今日から練習だ」

そうして始まった代表選抜トレーニングは、想像以上に過酷だった。

彼女たちが本格的にトレーニングを始めて、まだ数ヶ月。

要求される精度とスピードは、明らかにレベルが高い。

それでも――。

「……また更新してる」

タイム表示を見て、葵が低く呟いた。

凛だった。

彼女は常に最速でコースを走り抜け、しかも命中率が落ちない。

銃を構える姿勢に無駄がなく、ターゲットを捉える視線が速い。

特に、ダットサイト越しにターゲットを認識する能力が、精密射撃に向いていた。

「配信者の強み、か」

麻耶が感心したように言う。

普段から画面越しに世界を切り取る凛にとって、フレーム内の情報処理は半ば本能だった。

数日後、結論は自然に出た。

「凛でしょ」

「異論なし」

「うん」

全員一致だった。

課題はひとつ。

射撃スピードを上げた際、2発目以降の着弾がわずかに散ること。

「急ぐと、力が入るのよ」

未来の指摘に、凛は素直に頷いた。

それから凛は、黙々と練習を重ねた。

フォームを見直し、呼吸を整え、引き金を引く指の圧を微調整する。

一方、葵、麻耶、未来の3人は、3マンセルでの戦闘訓練に移行した。

代表ではないからといって、気持ちが緩むことはない。

本戦では、彼女たちの連携が鍵になるのだから。

予選前日。

最後の仕上げとして、4人は本番さながらの模擬競技を行った。

結果は、明白だった。

安定したフォーム、正確な射撃、ブレない集中力。

凛は他を圧倒していた。

「ここまでできれば、大丈夫よ」

麻耶が、どこか誇らしげに言う。

「ダットサイトなしでも、ちゃんと中央に当てられてる」

未来も頷いた。

「凛が一番。私は二番。三時のおやつは文明堂!」葵が言う。

「……」

一瞬の間。

「それ、昭和生まれのネタでしょ」

未来のツッコミに、全員が吹き出した。

笑い声が収まっても、凛だけは相変わらずケロリとしている。

「師匠」

ふと、凛が龍崎を見上げた。

「ご褒美のロールアイスは?」

「はいはい。今、作ってくるよ」

龍崎は苦笑しながら立ち上がる。

地下施設に、ほんの少しだけ、甘い予感が漂った。

大会は、もうすぐだ。

________________________________________

<予選当日>

凛は不思議なほど落ち着いていた。

心拍は速すぎず、遅すぎず。

指先の感覚も冴えている。

過剰な高揚も、足がすくむような恐怖もない――程よい緊張感だけが、背筋をまっすぐに保っていた。

「次、エントリーナンバー216」

アナウンスが響く。

凛は静かに立ち上がり、競技エリアへ向かった。

アウトドア用の明るいフィールドとは対照的に、シューティングマッチ会場は無機質で、音が吸われるように静かだ。

スタート位置に立つ。

視界の先には、何度も地下訓練施設で見てきた構成と、寸分違わぬコース。

――いつも通り。

そう、自分に言い聞かせる。

Are you ready? Stand by・・・。

ブザーが鳴った。

一歩目が速い。

身体が自然に動く。

遮蔽物に滑り込み、姿勢を落とし、ターゲットを捉える。

引き金は軽く、確実に。

1発目。

2発目。

散らない。

練習で叩き込んだ感覚が、そのまま現実になっていく。

視界の端で、次のターゲット配置を把握し、無駄な動きを切り捨てる。

走る。

止まる。

撃つ。

時間は短く、しかし密度は濃かった。

最後のターゲットが倒れ、フィニッシュラインを越えた瞬間、凛は小さく息を吐いた。

「Show Clear!ハンマーダウン!」

「終了」

アナウンスと同時に、会場の緊張がふっと緩む。

戻ってきた凛を、龍崎たちが迎えた。

「どうだった?」

「……普通だよ」

凛はそう答えただけだった。

結果はすぐに電光掲示板に反映された。

全国各地で行われている予選の途中経過が、リアルタイムで更新されていく。

凛の名前は――

暫定21位。

「入ってる……」

麻耶が息を呑む。

だが、安心するには早すぎた。

全国の競技者の結果が次々と更新され、順位は少しずつ、確実に押し下げられていく。

23位。

25位。

掲示板を見つめる空気が、重くなる。

「……まだ」

葵が短く言った。

最後の競技者の結果が、反映された。

表示が切り替わる。

凛――27位。

一瞬の沈黙。

次の瞬間、麻耶が声を上げた。

「入った……!」

「やったね」

未来が、静かに笑う。

凛は画面を見上げたまま、少しだけ目を細めた。

30位以内。

ぎりぎりだが、確かに届いた。

「これで――」

龍崎が、ゆっくりと言った。

「Ragdollは、本戦出場だ」

「僕、やったー!」凛は大喜びした。

4人は抱き合いはしゃいだ。

まだ、始まったばかりだ。

本戦は、ここからだ。

________________________________________



<本戦アウトドア初日>

朝露の残るフィールドには、すでに多くのチームが集まっていた。

第7ゲーム。

対戦カードが電光掲示に映し出される。

――爆裂愚連隊 対 Ragdoll

「相手、事前データは予選の射撃で15位の人がいるってことか・・・」

葵が短く言った。

未知の相手ほど厄介なものはない。

「とりあえず、ダイヤモンド隊形で行くわよ。様子を見ながら動く」

リンクス――凛が前に出る。

オセロット――麻耶とバーマン――葵が左右。

セラ――未来は後方。

「未来、後方狙撃で支援して」

「了!」

返事は短いが、全員の声には緊張が混じっていた。

ホイッスルが鳴り、ゲーム開始。

爆裂愚連隊は、想像と違った。

緻密な連携はない。

その代わり、圧倒的なパワーとスピードで押し込んでくる。

「速い……!」

単独で突進してくる敵影が、次々と視界に入る。

だが、それは同時に――

“孤立している”ということでもあった。

「セラ、右!」

凛の声とほぼ同時に、乾いた発砲音が2つ。

未来の狙撃が、突っ込んできた敵を正確に捉える。

1人、また1人。

「2人、ヒット!」

しかし――。

「2人、残ってる……!」

一人の男だけは違った。

動きが無駄なく、射線の切り方が巧みだ。

――予選シューティング、15位。

その情報が、凛の脳裏をよぎる。

次の瞬間。

「っ!」

バーマン――葵が、バリケードからほんのわずか頭を出した瞬間だった。

鋭い一発。

「ヒット!」

葵の腕が上がる。

「バーマン、アウト!」

状況は一気に崩れた。

「くっ……!」

リンクス――凛は歯を食いしばり、強引に飛び出した。

距離を詰めれば、勝てる――そう判断した。

だが、相手も同じだった。

2人の射撃が、ほぼ同時に響く。

「……相討ち!」

凛もヒットを申告し、フィールドを離脱する。

残るは――

オセロットとセラ。

2対1。

「セラ、援護を!」

麻耶が叫ぶ。

「了解!」

未来は深く息を吸い、ボルトアクションを構えた。

龍崎から叩き込まれた、“あの撃ち方”。

――連射。

本来は一発ごとの精度を重視する銃で、間を詰めて撃つ。

乾いた音が連続し、敵の動きを封じる。

「今だ!」

麻耶は大きく迂回した。

敵の視界の外を、地面すれすれに走る。

フラッグが見えた。

「……っ!」

旗を掴んだ瞬間――

ホイッスル。

「Ragdollの勝ちでーす!」

スタッフのアナウンスが、フィールドに響いた。

第1回戦目。

どうにか、凌いだ。

セーフティエリアに戻ると、龍崎が腕を組んで待っていた。

「リンクス」

凛が振り向く。

「あの飛び出しは、ちょっと危険だったな」

「……あっちの射撃が上手くて。つい……」

凛は素直に認めた。

「前半はアウトドアだ。フラッグ戦では、敵を倒すことより“奪うこと”を考えろ」

龍崎の声は落ち着いている。

「コンタクトドリルを使え。

援護、移動、フラッグへ」

指で空中に線を描く。

「点が、フラッグへ向かう線になるイメージだ。

その線が道になる。

そう動けば、自然と形はできる」

4人は、無言で頷いた。

「さぁ、これからだ」

龍崎は言った。

「先はまだ長い。

今日を、勝ち進むぞ」

出場チームは30。

アウトドアフィールドで初日に1回戦。2日目に3回戦まで。

インドアフィールドで3日目に準々決勝から決勝まで行う。

決勝は――3日目、難関インドアフィールド。

凛は、フィールドの先を見つめた。

________________________________________

2日目は、決して楽ではなかった。

それでもRagdollは3回戦をすべて勝ち切り、確実に駒を進めた。

誰も大きくはしゃがなかった。

アウトドアでの勝利は、まだ“通過点”に過ぎないと、全員が分かっていたからだ。

そして3日目。

舞台はインドアフィールドへと移る。

天井の低い構造物。

曲がりくねった通路。

至近距離での判断と反射がすべてを決める――CQB(近接戦闘)フィールド。

「……やっと、来たわね」

麻耶が小さく呟く。

Ragdollにとって、ここは得意領域だった。

アウトドアでは抑えていた動きが、自然と解放されていく。

バディシステム。

2人1組で角を切り、視界を分担し、互いの死角を消す。

水を得た魚のように、動きが噛み合っていった。

「左クリア」

「右クリア」

短いコールが、無駄なく飛ぶ。

リンクス――凛が先行し、バーマン――葵がぴたりと背後につく。

オセロット――麻耶とセラ――未来は、ワンテンポ遅れて制圧と援護。

だが、3日目に残っているチームは、どこも生半可ではない。

予選で上位を獲ったシューターもいる。かなり手強い。

判断が速く、フェイントも巧みだ。

「来る!」

通路の向こうから、一斉射撃。

反射的に遮蔽物へ滑り込む。

「簡単には、行かせてくれないわね……!」

麻耶が歯を食いしばる。

それでも――

4人で動く意味は、ここでこそ発揮された。

1人が止め、

1人が詰め、

1人が角を切り、

1人が次を警戒する。

誰かがヒットしても、即座に役割が再編される。

迷いはない。

「今、前!」

「抑えてる!」

連携が、火力そのものになる。

ツワモノ揃いの敵を相手にしながらも、Ragdollは一戦一戦、確実に制圧していった。

個の力では拮抗していても、4人で作る圧力が違う。

4マンセル――

その威力が、はっきりと形になって現れていた。

3日目の終盤。

フィールドに残るチームは、さらに絞られていく。

凛は、キャップ越しに仲間たちを見た。

全員が、ここにいる。

決勝は、もう目の前だった。

________________________________________

<準決勝戦>

インドアフィールド全体が、張り詰めた空気に包まれていた。

ここまで残ったチームは、全員が“勝ち方”を知っている。

一瞬の判断ミスが、即脱落に繋がる領域だ。

「……来るわよ」

凛の声が、低くインカムに流れる。

Ragdollはゆっくりと前進していた。

足音を殺し、視線を揃え、呼吸のタイミングすら合わせる。

「手榴弾、投げる」

音響手榴弾――Ragdollの切り札だ。

凛が角越しにピンを抜き、正確に放り込む。

――バンッ!!

凄まじい破裂音が、閉鎖空間に反響する。

壁が震え、空気が跳ねる。

敵の動きが、一瞬――止まった。

「クリア!」

その刹那を逃さない。

バディで一気に突入。

視界、射線、角。

一つ一つを切り取りながら、確実に制圧していく。

「ヒット!」

「次、奥!」

Ragdollは、ツワモノたちを“狩って”いた。

力任せではない。

恐怖と混乱を作り、その隙を突く。

まるで――

本物の特殊部隊のルームクリアリング。

だが、敵も黙ってはいない。

「グレネード!!」

誰かが叫んだ次の瞬間、

床に転がり込んできたのは、BB弾が飛び散るタイプのグレネードだった。

「伏せろ!」

判断は一瞬。

全員が即座に物陰へ飛び込む。

地面に落ちた衝撃と同時に、BB弾が壁や床に雨のように弾ける。

「……全員、生きてる?」

「問題なし」

「無傷!」

Ragdollは慌てなかった。

投げられることを、想定していたからだ。

「次、こっちから行く」

凛の声に迷いはない。

再び、音響手榴弾。

――バンッ!!

破裂音。

敵の身体が、反射的に硬直する。

「今!」

一気に距離を詰める。

角を切り、射線を潰し、次々とヒットコールが上がる。

BB弾の音、足音、短い号令。

視界が狭い分、すべてが速い。

「クリア!」

最後の敵が手を上げた瞬間、バーマンがフラッグを取った。

ホイッスルが鳴り響いた。

――試合終了。

数秒、誰も動かなかった。

耳鳴りと、荒い呼吸だけが残る。

やがて、スタッフの声。

「勝者――Ragdoll!」

その言葉を聞いた瞬間、張り詰めていた糸が、ふっと緩んだ。

「……やった」

誰かが呟く。

凛は、深く息を吐いた。

緊張、恐怖、集中――すべてを飲み込んで、ここまで来た。

Ragdollは、立っていた。

本戦準決勝を制し、

全国の頂点に、手が届いたのだ。

だが――

まだ、終わりではない。

本当の勝負は、

この先にある。


原案から駆け足の本章、もう少し詳しく試合の状況を描きたかったのですが、次章のクライマックスに描くことにしました。

もともとは第一章(人質事件)、第ニ章(岩見凛)、第三章(一番合戦葵)、第四章(進藤麻耶)、第五章(渡辺未来)、第六章(龍崎猛)、第七章(招集)、第八章(大会出場)という原案で映像化が元の発想でした。

タクティカルトレーニングで大分、章を割いて書いたので長くなりました。

次章はクライマックスの最終章になります。

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