ヤグアル隊隊長フォルス
プロイデンベルクの魔動歩兵が魔砲を放ちつつ全速力で駆け出すと、歩兵も車を飛び降りその後に続く。
魔動車によってけん引されてきた魔砲を素早く切り離し、尾栓を開いて魔弾を込めた。
「歩兵を支援せよ。ファイエル!」
一斉にとはいいがたい射撃が断続的に続く。
その刹那
シュルルルル
ドーン
第28師団より魔弾の雨が降ってきた。
「く、読まれていたか!」
全速で駆けていたヴィルトカッツェが1騎、動きを止めると、炎上しその場に倒れ込んだ。
「怯むな、進めぇぇぇぇぇ」
錆びた声に後押しされて駆けて駆けて駆け続け、敵の拠点に足を踏み入れる事に成功した。
ピューン
ズドーン
「テムカセどもめ、これでも喰らえ」
ピューン
ドカーン
「やったぜ」
ヤグアル隊の隊長フォルスの操る魔砲がテムカセに命中すると、そのままの姿勢で前のめりに倒れこんだ。
「それぇ、続けぇ」
ヤグアル隊が突進すると、翔陽の兵は逃げ腰になり中央から真っ二つに割れ道が開けた。
「突入ぅぅぅぅぅ」
プロイデンベルクの歩兵隊が、翔陽の左右に散ったと兵を刈り取るつつ駆けてゆく。
「うぉぉぉぉぉ」
ヤグアル隊が迅速に敵陣の奥深くに侵入したせいで、魔砲の支援が届かなくなり進行速度が多少滞るも、砲兵達が必死に魔砲を移動させ再度射撃を開始したことで支援は再開された。
「ヤグアル隊を支援しろぉ」
「28師団を突破したぞ!」
「おう、次は26師団だ!」
「いくぞ」
先頭が翔陽の第26師団に突入したころには、プロイデンベルク軍は翔陽の両翼に捕捉され、中段以降の軍は両翼からの猛攻撃を受け少しずつ摺りつぶされていった。
「かかれぇ」
「俺たちが持ちこたえている間に、早く早く前線を突破してくれ」
「うわぁぁぁぁぁぁぁ」
すぐ近くに翔陽の魔砲撃が着弾しプロイデンベルクの兵が天高く飛ばされて、砂を血で濡らした。
「こっちはそんなに持ちそうにない」
ズ―ン
冷たい曳光がフォルス右横を掠める。
「うっ」
「おい、アルベルト、どうした?」
「フォルス隊長、私は、ここまで……の様で……す、ご武……運……を」
「……アルベルト」
すでに魔砲の支援は無く、着いてきている魔動歩兵の数も少なく、このまま突入を続けても近衛師団を突破する事は難しいとフォルスは十分に理解していた。
(我が隊を支援するために盾になった仲間がいる。一緒に突入して死んでいった仲間がいる。あいつらのためにもここで引けるか!)
ピューン
ドーン
半ば逃げようとしていた1式魔歩を炎上させると、勢いそのままにフォルスは突き進んだ。
「よし、28師団を突破したぞ!」
「者ども、次は敵の皇帝がいる親衛隊だ。突っ込むぞぉ」
カチ・カチ・カチ
魔砲の魔力が切れて弾が出ない。
「チィ」
フォルスはその魔砲を翔陽の師団に投げ込むと、背中に背負ったサーベルを引き抜く。
「突っ込むぞォォォォォ」
近衛師団の精鋭たちからの熾烈を極めた十字砲火により、前を、後を、横を駆けている機械の鎧を身にまとった騎士たちが歯が抜けていくように1騎また1騎と倒れていった。
「あと少しだ、あと少しで、敵拠点にとつ……にゅ……う」
「のう、真好。かの魔動歩兵隊の者たちにとって、プロイデンベルク軍はみなで頑張って守る安らげる居場所だったのだろうか?」
「陛下……」
「朕も翔陽をそのように導かなくてはならぬな」
「はっ」
フォルスのヤグアルは片膝をつき、サーベルで騎体を支えた状態で静かに燃え上がり、ゆっくりと上ってきた太陽から発せられた朝日が騎体を優しく照らしていた。




