援軍来たる
伏せ撃ちを行っている1式魔歩に敵の砲撃が直撃し、チロチロと火が出始めると、1式は体を捻る。
ガタン
ハッチを開けるとコクピットから火を纏った乗組員が飛び出てくると奇声を上げながら砂地をグルグルと転がり火を消そうとしていた。
その横では僚騎が敵騎を射撃しており、至近距離から当てた一撃によりヴィルトカッツェが沈んでゆく。
「ようし、やったぞ」
喜びもつかの間、先ほど僚騎を潰した魔砲が再び火を噴くと、その1式に直撃して数秒後炎上し始め、通信機より断末魔が響く。
「ちくしょうがぁーーー」
歩兵の1個小隊が敵の魔砲兵に向けて携帯魔榴弾を一斉に打ち込むと敵陣地は沈黙した。
一方、台地の戦闘は、プロイデンベルク軍が一部の洞窟の制圧に成功し、そこから内部に侵入を試みる。
「よし、入るぞ」
魔動歩兵がすれ違う事さえできないような狭い洞窟である。
「急いで制圧するぞ」
「敵だ! ファイエル」
ピューン
ヴィルトカッツェの射撃により洞窟内の翔陽兵が吹っ飛ぶ。
「みな、続け!」
そのヴィルトカッツェ部隊を冷静に見る1部隊がいる。
「よし、来たぞ。撃て!」
洞窟の横穴より砲撃を受け先頭のヴィルトカッツェの動きが止まる。
「よし、奴らは立ち往生だ、手榴弾をぶち当ててやれ」
「おお!」
洞窟内を爆発音が響き渡る。
「第21師団、第10軍団はそのまま台地を包囲、第90軽機械化師団、第504重魔動歩兵隊は機動力を生かして右より回り込み背後を突け」
エルウィン遅きに失したと言える作戦変更が出されると反時計回りに進軍を開始する。
流石に訓練が行き届いた部隊だけあり命令通り疾風のごとき進軍スピードを見せ、本陣に迫る。
「司令、プロイデンベルク軍が左翼の部隊を引き抜き、台地を回り側面を突こうとしております」
それを聞いた椿は即断し「16師団、6師団の一部を割き迎撃させなさい」と鋭く言った。
長い夜の帳も東側より徐々に上がってゆく最中、遥か上空に爆音が響き渡る。
「おお、味方の航空騎だ!」
「もうひと踏ん張りだ」
翔陽軍の士気が盛り返しているころ。
「遅い、やっと来ましたか!」
椿が苛立ちと安堵の感情を交互に出しながら吐き捨てる。
発砲しているプロイデンベルクの兵が思わず声をあげた。
「うわ、まぶしぃ」
プロイデンベルク陣内に突如落とされた照明弾により周囲の目が一瞬塞がれるも、徐々に回復してきた視線の先には、山のように連なった爆撃騎隊が迫って来ていた。
「逃げろーーー」
先頭を飛行する爆撃騎の指揮官が持つ光る小さな旗が上がると、黒い塊が敵陣に落ちてゆき、一瞬にして砂嵐のような爆風が立ち上がるとしばらく視界が閉ざされる。
「おお、やったか?」
視界が開けてくると、爆撃により全ての敵をなぎ倒していた。夜にあれだけ苦労していた一帯のヤグアル、ヴィルトカッツェ、各魔砲――ほとんどが消え失せていた。
「おお、行くぞ」
ぽっかり空いた戦場の空白地帯に翔陽軍が入り込むと、左右よりここぞとばかり機関魔銃を放ち掃討しはじめる。
「おお、3式襲撃騎だ」
急降下爆撃により、敵機関魔銃陣を爆撃して黙らせた。
日が完全に顔を出した頃、プロイデンベルク軍の航空隊が顔を見せ始め、上空ではそこかしこで格闘戦が始まった。
プロイデンベルク軍の第20軍団、21軍団は完全に浮足立ち、頼みの90軽機械化師団、504重魔動歩兵隊も余力の出た16師団と6師団に阻まれ前進が滞っていた。
そんな時である。翔陽軍後方から未確認の部隊が急速に接近してきたとの報が入った。
「どこの軍ですか?」
翔陽軍でこの戦場に来る部隊の報告は来ていない。
椿は斥候を呼び「確認してきてください」と命令を出し、敵だった時の想定をして第18師団を二つに分け半分をそのまま直面の敵を引き続き攻撃とし、残りを反転させて新しい部隊に対峙させるように命を下した。
しばらくしたら斥候より興奮気味の通信が入る。
「司令、味方です。近衛師団です!」
近衛師団は皇帝直属の親衛隊であり、翔陽中のあらゆる部隊から精鋭を集めて編成されたエリート中のエリート部隊である。
「なぜ、近衛師団が? まさか陛下が?」
椿は混乱しつつも18師団に先の命令を取り消し、今まで通り前の軍に当たるよう命令を出した。
「あ、あのぉー、指令……近衛師団より通信です」
「はい、秋川少将です」
「おお、椿か?」
「おじい様!?」
「おお、そうだ。陛下もご一緒におられるぞ」
「やはり……私が不甲斐ないので陛下が来られたのですね」
そうため息をつくと、真好は笑い「気にするな、あの後方を突こうとしている敵を蹴散らせばいいのか?」と聞いて来た。
「はい、お願いします」
「了解!」
そう言って通信は切れた。
師団は恐らくメリアンの物資により完全に機械化されているのであろう、90軽機械化師団の背後に素早く回り込むと、精鋭らしく伸縮を繰り返し敵を部分的に孤立させつつ前方の部隊と連携して各個撃破をしてゆく。
「今です、総攻撃に移ります」
突撃ラッパ吹かれる頃、大勢を決した戦場からはプロイデンベルク軍が消え失せて、各師団思い思いに追撃を開始した。
「そのまま行くと地雷原に入ってしまう。停止の命令を出してください」
こちらの損害が大きい事と陛下が来られたことの考慮して追撃中止を命じた。




