失われた都 エナ・ホト
地図にも載ってない秘境。
それだけでもワクワクする。
「幽霊かぁ」
「なんや、怖いんか?」
少年兵の素直な感想に三木が笑いかける。
「それは、チョット……」
「はは、1人じゃない。みんないるから大丈夫だよ」
長髪の兵が少年兵の頭を撫でる。
10日ほど彷徨うと、砂漠の中にポツンと城壁が現れた。
「あれっぽいな」
徐々に近づくと全容が露となった。
「隊長」
「一応な、魔歩賊が拠点として使っとる可能性があるんやから警戒して行こうや」
「はっ」
門は小さく魔動歩兵はそのままでは入れそうになく、降りて町に入ることにした。
「ほわぁ」
三木が大げさに感心するほど町は想像より広かったが、数百年放置されていたせいか道などは砂に埋まり、かつて人が住んでいた家々がおおよその場所を教えてくれていた。
きょろきょろと見回す少年兵を見て、周りの者は昼間から幽霊は出んよと笑う。
「ちょっと掘ってみようか」
三木の合図でスコップを入れると、掘るまでもなくカツンと硬いものにぶつかった。
「どれくらいや?」
「そうですねぇ、20センチといった所でしょうか」
「そこまで深くないんやな」
三木は写真器を取り出すと、カシャカシャと写真に写していく。
「あの家の並び」
「城の上から」
「城壁も忘れたらあかん」
城の中、街並み、城壁およびその高さなどを中心に写真に収める。
敵の攻撃隊が侵入してきたらどの道を走るか、どこに防衛拠点を置くか考えながら。
「モキタルの族長が言っていた湖が見当たらないですね」
ガタイのいい兵士が城壁の上で双眼鏡を覗きながら疑問を口にした。
「確かに、その通りや」
「干上がったのでしょうか?」
「まあ、何百年も放っておいたみたいやから、分からんかったとちゃうんか」
「確かにそうですね」
「井戸もあるかどうかわからんしな」
「砂を被ってますからね」
城壁を降りると太陽は傾き段々と寒さが増してきていた。
「よし、町を出て少し行った所で今日は過ごすねん」
「あれ、隊長も幽霊が……」
「ちゃうわ、今は人の気配は無かったんやけど夜に帰ってくることあらへんかなって」
「可能性はありますね」
「噂話流して近寄らせないなんてあるあるやん」
「ああ、そうですね」
「うん、危険や」
安堵する少年兵たちと共に町を後にした。
少し離れた砂漠にテントを張り、いつものように夕飯を平らげる。
「よし、今日はつらいけど賊の襲撃と街をねぐらにしているのかを確認をするために監視するで」
みな仕方ないという顔をしながら順番を決めた。
最終的に決まった順番を三木が読み上げる。
「まず、いっちゃん若い君が最初や。みな起きてるから怖ないで」
「はい」
「次は長髪のあんちゃん」
こくりと頷く。
「その次はガタイのいいあんちゃん」
「了解いたしました」
「最後が僕や」
少年兵は双眼鏡片手にテントから出る。
「うゎ、さみぃ」
「何かあったら起こせよ」
ガタイのいい兵士が声をかける。
「時間になったら起こしてくれ」
続いて長髪の兵士が話しかける。
「はいィ」
次々と順番は回って行き、三木の番になった。
「隊長、隊長」
ガタイのいい兵に起こされる。
「ああ、時間か。ありがとう」
「何かあったか?」
「何もありませんでした」
お互い安堵の表情を浮かべる。
水筒の水を1口含むと、双眼鏡を受け取り表に出た。
コートを着込んでいても肌を刺す寒さを感じる。
「寒いんじゃ」
双眼鏡を持つ皮手袋の隙間から冷たい空気が侵入して手がかじかむ。
「ううぅ寒い」
時々両手をこすり合わせては熱を作りつつ双眼鏡を覗くも変化はまるでない。
「はぁ~」
東の空の色が徐々に暖色に変わっていくと心の中で安堵感が沸き起こってきた。
「後少しやな」
日が昇り、皆が起きて来ると何事も無かったと伝える。
「とりあえず、反対側から侵入していない限りはいないだろう」
三木は熱いお茶を飲みながら余裕をみせる。
「隊長、ただ気になるのが」
「なんだ?」
「獲物を狩りに出かけている可能性は」
ガタイのいい兵士にそう言われ、困った顔をしながら三木は答える。
「うーん、それはあるが……数日監視するんか?」
「あ、いや」
兵士が慌てて否定すると、それをあらかじめ予測していた三木は笑った。
「じゃ、帰ろう」
「はっ」
「湖、近場にあるか確認しながら帰るで」
三木たち一行は駐屯地目指して移動を開始した。




