オドルスより
「各部隊の工兵を出してください」
椿の掛け声のもと工兵は集結してきた。
「疲れているところ申し訳ないですが、駐屯地内の地雷および盗聴器の探索を行ってもらいます」
兵たちは魔動探索機器を片手に基地へ乗り込んでゆく。
駐屯地周囲には各師団が陣取り敵の侵入および隠れた工作兵の脱出に目を光らせている。
無機質な機械音が夜中鳴り響いていたかと思うと、朝方にはそれも収まり、結果の書類と共に椿の元へ届けられた。
「こちらが、結果報告書」
「……」
椿が報告書に目を往復させた所、盗聴器が見つかったと記してある。
「この盗聴器と言うのは……」
「あ、はい、こちらです」
そう言って小型の機器を差し出す。
椿は興味深げにそれを見て、仕掛けられていた場所が気になり質問した。
「これのあった場所は、会議室です」
「執務室にはありませんでしたか」
「そちらも探したところございませんでした」
「ご苦労様」
「はっ」
なぜ執務室には仕掛けなかったのだろう。
エルウィンは違う場所で執務を行っていたという事なのか。
答えの出ない思考を止めて全軍に駐屯地に注意して入るように伝達をした。
「はあ、やっと睡眠できる」
「もう、朝やで。時間かかりすぎや」
「そう言うなや、工兵はん徹夜で頑張ってはったんやから」
「んーまあそうやけど」
三木は悪態をつきつつ、すこしばかりの焦燥感に駆られていた。
(操縦がまだまだ下手やなぁ、どうにかしないと)
今度の戦いでも敵を撃破し生き残れたが、このままではいずれやられてしまうだろうと感じていた。
「生き残って利津子との約束を守らなんと!」
その日は睡眠もそこそこにある士官の元を尋ねようと心に決めていた。
三木の足取りは重くなってゆく。
「逃げんのはラクやが行かなあかん」
「失礼します」
宿舎の入り口をくぐると、書き物をしている男が筆を置き、ゆっくりと顔を上げた。
「どうした、久しぶりだな」
慌てて敬礼をとる。
「先生お久しぶりであります。三木中尉、先生にお願いがございまして参りました」
「ん、何だそのお願いってやつは」
三木のノドがしきりに渇きを感じさせて声がなかなか出ない。
「ははっ、相変わらずだな」
「もうしわけありません」
先生と呼ばれた男は三木がゆっくりと話し出すのを待っている。
「島中先生、私に魔動歩兵のテクニックを教えて頂けないでしょうか」
それを聞いて島中は笑いだし「お前も変わったな」と嬉しそうに話した。
「ところで、急にどうした?」
「生き残らなければならない理由が出来たのであります」
島中は難しい顔を出す。
「教えることはできるが生き残れるとは限らんぞ」
「それでも、出来ることはしたいのであります」
今までに見た事のない訴えるような三木の態度に島中は感心した。
(これは、色々理由があるのだろうな)
「よし、理由は聞かん。時間のある時に来い」
三木は深々と頭を下げ礼を言った。
「今日は無理だ、明日来い」
そう言い放ち三木を返した。
(ふう、どうにか教えてもらえそうだ)
三木は視線を天に向けると、利津子が微笑んでる姿が見えたような気がした。
「やるしかないでぇ」
昨日の戦いで負傷した者は多く野戦病院のテントが連なり、その中には布やゴザを引き横たわっている人が何十人と治療を受けていた。
「すごい惨状だな」
「これは勝ったと言っていいのかな?」
「めったなことは言うもんじゃないぞ」
砂漠の砂が雪の結晶のように冷たく、行軍も困難を極め、そのせいで輸送も滞り、物資不足のためお互い決め手を欠き、戦闘は航空騎隊の散発的な戦闘のみとなっている。
そんな中、士気が天より高く、凍土砂漠をものともせず、完全に機械化された部隊が到着した。
第038師団
国会前で抗議活動をしていた女性たちを主体とした部隊。
通称銀葉師団である。




