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荒野の椿  作者: クワ


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14/42

反攻 オドルス攻防戦

「はあー」

 吐く息は白く氷点下に晒された砂粒がまるで氷のように切り裂くような痛みを体に与えて来る。

「今朝も寒いなあ」

「砂漠が寒いものだって初めて知ったよ」

「まあ、冬だしなぁ」

「砂漠に冬って存在したんだな」

 翔陽の輸送はメリアンの貨物魔動車が導入されてから劇的によくなった。

 前線には新型の兵器や少ないながらも新兵の補充があり少しずつ勢いを取り戻していた。

 第6、15,16師団到着後、会議が開かれてオドルス奪回に流れが傾いた。

 まず椿が一同を眺め作戦の主旨を話す。

「味方の数が上回っおりますので、定石通り包囲作戦を採ります」

「では、包囲と言ってもどうするか」

 乃本の疑問に第6師団の師団長が手を上げる。

「包囲作戦でしたら、我が師団は兵の消耗が無く、かつ精鋭である。よって我が隊を中心にするのはどうか?」

「それには異存ありません、左翼は第5師団、右翼は第18師団をもって両翼とするのはどうでしょうか」

 椿の意見にそれでよいと一同納得する。

「では、第5師団と6師団の間に15師団を差し込み、6師団と18師団の間に16師団を差し込む。これで両翼」

「それでは、第1師団と26師団は?」

 参謀の1人から質問が出ると椿はスッと顔を向け説明を始める。

「第1師団を左より第26師団を右より回り込ませ敵を挟撃します」

「おお」

「ただ、エルウィンも同作戦を多用するため鉢合わせになる可能性がある」

 石川が懸念を話すと、師団長たちはニヤリと笑う。

「出会ったら粉砕するのみですな」

 そう言って笑いあった。

 ただ椿は一抹の不安を覚えた。

(確かに敵に増援が来たという話は今の所ないけれども、このような空気で大丈夫でしょうか)

 作戦の決行は2週間後と定められ、各部隊準備の開始をし始めた。

 それから11日後、オドルスまで後3日といった道のりの最中である。

「敵襲!」

 エルウィン軍が先頭の第6師団に殺到したのは未明の事であった。

 3師団で包囲するかたちで、その両翼に1つづつ師団をおき遠距離で攻撃しつつ前の敵に対応する。

 こちらが取ろうとしていた作戦そのもので攻撃され、寝起きの兵たちはおっとり刀で反撃するも多数に無勢で押され始めた。

「師団長、敵の夜襲です!」

「むう、各部隊は反撃を開始! 斥候兵たちは後続部隊へ夜襲があったことと急ぎ駆けつけてもらいたい事を伝えてくれ」

「はっ」

 斥候部隊の隊員たちは、全速力で後方へ駆け出す。

「油断したか。だが我が隊をなめるなよ」

 そこは流石に肥中マッコイや薩隅鷹人と言われる精鋭たちである、多数の死傷者を出しながらも早々に引くことなく粘り強く戦い、後方の味方が駆けつけるまで時間を稼ぐ。

「なに、すぐに出立する。おい皆を起こせ」

「了解した。至急対応する」

 15、16師団が駆けつけ左右より助け始めるとエルウィン軍の左右の両翼がその2つの師団を包囲しはじめる。

 椿の所に斥候が走り込んで来たのはそのころだった。

「司令官、報告であります」

「前で魔砲の音が聞こえますが敵襲ですか?」

「はい、プロイデンベルク軍が夜襲してきました」

「わかりました、こちらも整い次第向かいます」

「はっお願いいたします」

 椿は通信兵を呼ぶと、この騒動で出番待ちをしていたであろう隊員がすぐに駆けつける。

「オモテンキャブに夜襲を受けたことを伝えてください」

「はっ」

「あと、この戦闘は長引きますから日が明けたら航空隊を至急派遣しなさい」

「それと航空師団長が寝ていたら叩き起こしなさい。これは司令官秋川の命令ですと追加して打ちなさい」

「了解いたしました」

 そう言って通信兵は急いで出て行く。

 椿が軍をまとめ前線へ兵を進めたころには日は明けて、プロイデンベルク航空隊がまず攻撃してきた。

「敵騎来襲」

 ウィ―――ン

 サイレンがけたたましく鳴り響く。

 しばらくすると入れ替わりに翔陽航空隊が空を覆い、敵を攻撃し始める。

 その後に続いている5、18師団が報告を受け駆けつけるまでしばらく時間がかかった。

 駆けつけた第5、18両師団は、第6、15、16師団が前で戦っていたために、前線に出るのに大回りに回って敵に相対したのは日が真上まで登ったころであった。

 その後1、26師団が駆けつけ両翼を外から叩き始めると、さすがのエルウィン軍も押され始め、ジリジリと撤退を始める。

「追いかけろ!」

 各師団追撃を開始するも、車両などで完全に機械化されているエルウィン軍に歩兵主体の翔陽軍はグングンと離され姿を見失う。

「あっあそこにいたぞ」

 兵が指さす先にはエルウィン軍の一部隊がとどまっていた。

 そこで何かしら気付けばよかったのだが、夜からの戦闘で気が立ちそれどころではなく興奮のままに敵に向かっていった。

 ドォン

 魔動歩兵の一騎が地雷を踏み抜くと姿勢を保てずにそのまま倒れ込む。

「マズい、地雷原だ」

 兵たちは地雷を踏まぬように歩みを止めた、その時である。

「敵だぁ」

 留まっていた部隊だけではなく、砂中に隠れていたエルウィン軍が姿を現し一斉に射撃を始めて、周囲は大混乱となった。

 航空騎が地上攻撃を始め、エルウィン軍が退却をしだした。

「よし、あと少しでオドルスだ」

 多数の死傷者を出しながらオドルスに突入してみると、そこにはプロイデンベルク軍どころか、先の戦いで廃棄してきた物資すらなく、もぬけの殻だった。

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