第6話 ゾンビ化
全国各地の精神科に、大量の患者が押し掛けた。医師たちはこの緊急事態を重く受け止めていた。なぜなら、彼らは皆同じ症状を抱えていたからだ。何でも人肉が食べたくなるそうなのだ。そして、恐るべきことにその症状は皮膚感染する。まるでゾンビのようだ。当然、慶東病院にも数多くの患者が押し掛けた。ゆなが得意とする集団療法により、彼らの多くは正常な状態に戻った。しかし、慶東病院以外での病棟では彼らの対応に苦慮していた。
「人肉を食べたい願望が皮膚感染か。まるでゾンビだな」と優斗。
「まずいな。このまま彼らが増え続ければ人類滅亡の危機だ。」と健斗。
そう、放っておけば彼らは欲望を抑えきれなくなる可能性が高い。その結果は悲惨なものだろう。全国の病院に、特例処置が通達された。彼らの身柄を身体的に拘束して良いとのことだ。通常、何の理由もなしに身体の自由を奪うことは人権侵害に値する。しかし、今はそのようなことをとやかく言っている場合ではない。このままでは人類滅亡の危機なのだ。医療業界だけでなく、この事実に全世界が激震を覚えた。この病気への有効な治療法が見つからなければ、彼らは何の罪もなしに命を落としてしまうかもしれない。




