第11話 危険な場所
ある日、横山健斗のラインに一件の通知が入った。田村ゆなからだ。彼はメッセージを見て驚いた。
「明後日の夜、悪黒という場所で、人が次々と死ぬわ。あなたに、協力して欲しいの。」
明後日は日曜日で休業日である。何を根拠にそんなことを言っているのかは分からないが、彼女の勘の的中率は高い。実際、ダンシングマニアの集団死を未然に止めたのも彼女である。日曜の夜、健斗はゆなを車に乗せて例の場所に向かった。悪黒では、既に死亡者が1人出ていた。木にロープをかけて縊死している男性の姿。
「間に合わなかった…」、彼女は目に涙を浮かべて呟いた。
「田村先生、他にもいるんだろ、彼と同じ道を辿ろうとしてる人。なら、泣いてる場合じゃないだろ。これからここに来る人たちの命を救うんだ。」
健斗の言葉にゆなは黙って頷いた。人が一人、また一人と近づいてくる。行く手を阻もうとしたゆなの身体を突き飛ばして、彼らは木にロープをかけようとする。健斗は彼らの身体を次々と蹴り飛ばした。
「あなた、乱暴すぎるわ。」、地面から起き上がって服についた汚れを払いながらゆなが言った。
「仕方ねーだろ。緊急事態だからな。彼らは意識を失っているだけだ。」
「彼らは普通の人間を無意識に殺してしまうこともあるのよ。気を付けてよね。」
ゆなの言葉を聞いて健斗は背筋が凍り付いたが、あえて冷静を装った。
「大丈夫。僕は精神科医としてはぼんくらだが、格闘には自信があるんだ。これでも空手は黒帯だしね。」
「精神科医が格闘技強くて何の役に立つのよ。まあ、確かに今回は役に立ったけどさ。」
健斗は、その場ですぐに救急車を呼んだ。彼らは一先ずは病院に搬送された。