想像の暴力
予想しやすかったら恐縮です。
…最近、全国各地で不審死が相次いでいます…
テレビから聞こえてくるのは、毎日のように増える不審死を取り扱った特番だった。
聞いた瞬間、うんざりした気持ちでチャンネルを変える。
最近この手の話題ばかりだ。
現場の状況は少々特殊なことが多いが、共通しているのは
目鼻口から血を噴き出して事切れていること。
未知の病原体か政府の人体実験か、はたまた宇宙人の侵略という
トンデモ説まで飛び交っている。
幸い家族友人には被害が出ていないため、完全に他人事として捉えていた。
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いつものように朝食を作ろうとして、ふと思い出す。
今日は休日だった。
そう思い至ると同時に、面倒くささが一気に増す。
簡単なものでいいか…?
しかし時計を見ると、いつもの出勤時刻に合わせて早めに起きている。
せっかく時間があるなら美味しいもの食べたいよな…
でもやっぱり面倒くさいな…
食卓の前で悩んでいる中、ポツリと言葉が漏れた
「美味しいご飯がサッと作れたらいいのに…」
自身の言葉が聞こえると同時に、少し恥ずかしさが込み上げてきた。
いい歳して独りで何を言ってるんだ…?
誰に誤魔化すでもなく、ブンブンと頭を振って恥ずかしさを散らしていると
フッと疲労感が襲ってきた。
昨日の疲れが残っているのかな?
少しふらついたため、椅子に手をかけて目を擦る。
…そして目を開けると、そこにはホカホカのホットケーキが置かれていた。
ご丁寧にサラダと目玉焼きつき、乗っているバターも今まさに溶けようとして香ばしい。
…あれ?いま作ったっけ?疲れて記憶が飛んだのか?
少々焦りながら時計を見ると、先ほどの時刻から全く進んでおらず、かつテレビの番組も
同じ話題で途切れた様子もない。
どういうことだ??
頭の上はハテナマークで溢れかえっていた。
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目の前には空の皿がひとつ。
とりあえず食べちゃったが…どういうことだろう?
味はいつも自分が作る味付けと変わりなく、美味しくいただけてしまった。
周りを見渡しても八畳ひと間に人が潜む場所もなく、ドッキリの線も無い。
というか、怖すぎるから無いであってくれ。
となると…あとは何が考えられる?
不思議すぎて頭が追い付かず、ウンウンと唸る時間ばかりが過ぎていく。
とにかく、一度冷静になるために、
「皿でも洗うか」
そう呟いてイスから立とうとした瞬間、またもや疲労感が襲い、目の前が霞む。
先ほどの疲労感よりも軽めだが、それでもふらつきを抑えるために
再び座りながら頭を押さえる。
すると、、、
本当にどういうことだ!?
今まさに洗おうとした食器が卓上から無くなっている。
まさかと思い台所へ向かうと、先ほどまで使っていた食器類が
キレイに洗われている。
一体何なんだ!!?
何が起こっている!?
先ほどより混乱している自覚はあるが、うっすらとある可能性が
頭をよぎった。
…もしかして、考えていたことが実現している?
いやいやまさかそんな、ありえないありえないと
笑いそうになるが、実際に何かしら不思議なことは起こっている。
一度冷静になろうと、再び机に戻ってイスに座り、深呼吸をする。
とにかく落ち着いて、起こったことを整理しようとするが
先ほどの考えが頭から離れない。
最初は記憶障害かと思ったが、朝食を作ったり洗い物をしたりにしては
時間が経っていない。
とにかく、もう一度試してみよう。
今度は冷静に、スマホを机にコトリと置き、ストップウォッチを起動してから、
「食後のお茶を入れよう」
そう呟いた瞬間、またもや疲労感とめまいが起こった。
そして目の前には湯気が立ったお茶。
急いでスマホを確認すると、数秒も経っていなかった。
…これは、もしかしたらもしかしちゃう?
ジワジワと気持ちが高ぶり、興奮のあまりイスを半ばはじき飛ばしながら立ち上がって、
「俺、超能力者になっちゃった!!」
と叫んでしまった。
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流石に独りで騒ぎすぎて恥ずかしくなったため、少し冷静になれた。
ーー中途半端に冷静になれたからこそ、欲望のままに考えを巡らせてしまったーー
「この能力を使えば、金を稼ぎ放題で有名にもなれる、これまでの生活からオサラバだ!」
そう想像して呟いた瞬間、頭に割れんばかりの激痛が襲い、目の前が真っ赤に染まった。
同時に、赤く染まった視界に見えたのは、積み上げられたお札、お札、お札…
身体に力が入らず、その場に崩れるようにして倒れる。
視界に血だまりができているのが見える。
…いったい…なにが…?
少しずつ薄れていく意識の中で思い出したのは、
能力を使用した際の疲労感だった。
…そんな…少し想像しただけなのに…
それきり、男の意識が戻ることは二度となかった。
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…最近、全国各地で不審死が相次いでいます…
テレビから聞こえてくるのは、毎日のように増える不審死を取り扱った特番だった。
聞いた瞬間、またこの話題か、とボーっとしながら眺める。
現場の状況は少々特殊なことが多いが、共通しているのは
目鼻口から血を噴き出して事切れていること。
今回特番で取り扱われている男性の状況としては、
何故か”全財産”を机の上に乗せて亡くなっていたという。
…私としては、魔法に目覚めた人たちが暗躍してる展開がいいんだけどなー
ラノベの異世界ものや魔法ものが好きな身としては、そのほうが嬉しい。
あ、変なこと考えてるとお化粧の時間が無くなっちゃう!
毎朝の化粧の時間が面倒くさくてもう!
「あー、一瞬で化粧終わらないかなー…」
そう呟いた瞬間、目の前が………
…
おわり
お読みいただき、ありがとうございました。
ガバガバ設定ですが、今回考えたのは「行動時間をゼロにする能力」です。
ただし、想像だけで発動する、行動に必要なエネルギーが一気に消費される、
かつ脳にすべて消費の負荷がかかる。
なので、能力というより呪いをイメージしました。
なぜ急に能力に目覚めたのかの設定は、想像にお任せということで…