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星使いの勇者  作者: 星宮 燦
第二章 幻帝戴天
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2ー82 堕神の黒渦

「落ちろっ!」


 号令と共に大量の隕石が飛来する。

 余裕で視認できるので本気ではないのだろう。

 そう考えてからふと、ある考えが浮かんだ。



「いや、できないのか」


「何がですか?」


「あの隕石、やろうと思えば光速の落下でもできるはずだ。でもやらないってことは……」


「遥香ちゃんが死んでしまうからとか?」


「それもだろうけど……強くなりすぎて自分も死ぬんじゃない?死にはしなくても怪我すんじゃない?」


「ふ〜ん」


 僕のスキルは基本的に自分を傷つけない。

 コズミック・レイの放射線だけは害になるが、回復を並行して行っているのでダメージにはならない。


 だが、もしかしたら【堕天】による飛来物は術者にもダメージを与えるのかもしれない。

 だから無闇に打てないのかも。


 今、遥香と蒼弥は強化拳と雷剣で接近戦を繰り広げている。

 当然、ステータスで優っている遥香が優勢だ。

 蒼弥は重力で遥香をその場に縫い付けようとしているようだがうまくいってない。




 雷の魔法特性は術式をかき乱すこと。




 条件はあるが、今はおそらく雷剣が触れている間、術式の構築が困難になっている。

 慣れればできるのかもしれないが今の蒼弥には出来ない。


 今無理矢理曖昧な術式を作って行使すれば操作を誤って魔力を暴走させたり自分ごと消し飛ばす可能性がある。

 だから距離を取る必要がある。


 だが、できない。


「クソッ!邪魔だっ!」


 悪態を吐きながら必死に策を立てる。




 ーーそして、たどり着いた先。



 動きを制限され、スキル行使もままならない。

 ステータスでは圧倒的不利に立たされて負けが確約されたような状況でたどり着いた新たな境地。


 何もない無の境地を抜けたさらにその先。

 そこで手にした堕天の奥義。


 この地に辿り着いたのは【進化】を持つ優人よりも、追い詰められた蒼弥が先だった。


 発動だけで精一杯。

 応用なんてもってのほかで、自爆に近いただの滅茶苦茶。


 それでもソレを手に入れたのは紛れもない真実で。




 放電を続ける真剣を受け止めて言葉を紡ぐ。

 願いを、祈りを届けるように。



「【()くて(ろう)は終わりを告げ (くろ)(かむり)(ふち)へと沈む 天上天下に相違なく 夢の(うつつ)現世(うつしよ)に】」


 それはスキルの完全詠唱。


 そのスキルを持つただ1人にのみ許された境地。





 片の黒翼が展開し、頭上に禍々しい黒輪が顕現する。





「堕ちろ」


 たった一言。


 それで全てが『堕ちた』。





 ***





「やばいな」



 ヒビ割れたスクリーンを見上げながら誰にいうでもなくポツリと呟く。


 試合結果だけ言えば蒼弥が勝った。

 これで純恋は満を辞して添い寝の権利を獲得したわけだ。


 まあ、しないが。

 前の席で純恋が満面の笑みを浮かべている。


 こっち見んな。




 全部を『堕とした』時は大変だった。

 それはもうほんとに。


 今はもう術式は解除されていて、元の秩序が取り戻されている状態だ。


 一時、危険な状態になったが、今はもう問題ない。



 戦いの時、遥香は重傷を負わなかった。


 只々戦闘継続不能になっただけ。

 戦闘不能になったことで負けが確定し、敗北宣言を行った。

 今にも泣きそうなくらい顔が崩れていたが、まあ問題ない。


 ウザいいつもの顔が崩れて年相応の顔が見れた。

 珍しい顔が拝めて大満足である。


 因みに、それを言ったら刺されそうになった。

 どうやらご立腹らしい。



「雷剣……能力ってなんだっけ?」


「え〜と………ああ、術式構築阻害と敵に剣がぶつかってる間ソイツの身体性能と術式とスキルの発動を阻害すること。それから時間経過で剣の出力が上がることって感じだね」


「負けたのは仕方ないって感じか?」


「そんな感じだと思うよ。俺だって……負けはしないと思うけど辛勝だと思うし」


「それなら僕だって危ういな」



 2人揃って苦笑を漏らした。


「出原くんの本には何か書いてないの?」


「残念ながら。全部が載ってるわけじゃないんだよね」


 自嘲気味に微苦笑を浮かべて、本人に聞いたらと言った。


 それもそうだな。

 僕だって何にも分からんし。



 そんなことを考えながら席を立った。




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